ネテロは、人類のために戦った英雄とされます。しかし、彼の戦いには個人的な戦闘欲求が色濃く反映されていたと感じる読者も多いハズ。

「この歳で挑戦者か 血沸く血沸く♪」この言葉は、ネテロの戦いに対する価値観を象徴しています。

 また、キメラ=アント討伐における十二支んの排除、パリストンを副会長に据えた人事など、彼の行動は一見不可解であり、ハンター協会に混乱をもたらしました。

 ネテロの行動の背景、彼の真の意図はどのようなものだったのでしょうか?

◆ネテロはなぜキメラ=アント討伐に十二支んを呼ばなかったのか?

 キメラ=アント討伐作戦で、ネテロはノヴとモラウを護衛に選びました。二人とも実力者ですが、純粋な戦闘力では十二支んには及ばない可能性があります。にもかかわらず、ネテロは十二支んを一人も動員せず、サポート能力に秀でたノヴとモラウを同行させました。

 ネテロは「半端な戦力は吸収される恐れがあるから少数精鋭で行く」と説明しましたが、戦闘を得意とする十二支んを一人くらい連れて行く選択肢もあったはずです。実際、十二支んの中には実戦経験豊富な者もおり、大きな戦力になったのは間違いありません。

「ノヴとモラウを護衛につけることさえ揉めた」という発言は、パリストン派の妨害を示唆しており、ハンター協会内の政治的な圧力が影響していた可能性はあります。

 しかし、人類の存亡がかかった戦いに、ネテロほどの立場にある人物が十二支んの一人の動員すら諦めるでしょうか?

 彼はあえて十二支んを外し、自分が主な戦力となりキメラ=アントと戦うことを選んだとは考えられないでしょうか。その理由が「自身の戦闘欲求を満たすため」ならば、彼の行動にも納得できます。

◆ネテロの戦いは「人類のため」ではなく「自分が楽しむため」だった?

 本当に人類の未来を考えていたならば、ネテロはもっと確実にメルエムを仕留める方法を模索していたはずです。

 たとえば、十二支んのようなより戦力になるハンターを動員して戦う道もありましたが、彼はそれを選ばず自らが最前線に立つことにこだわりました。

 結果的にメルエムを倒しましたが、彼の戦いは「人類のため」というよりも、「自らの戦士としての生き様を貫くため」だった可能性が大いにあります。それはある意味、究極の利己主義ともいえるでしょう。

 若いころから修行を重ね、千手観音の技を極め、戦いに没頭してきた戦闘狂としての側面を強く持つネテロにとって、キメラ=アントとの戦いは、自身の力を試す絶好の機会だったのではないでしょうか。人類への脅威を前に「血沸く血沸く♪」と楽しんでいたことは、彼の本質をよく表しています。

◆ネテロの価値観がハンター協会の腐敗を助長した?

 ネテロはパリストンを副会長に据え、「イエスマンじゃつまらん」と語っていました。この選択が、結果的にハンター協会を混乱させる要因となっています。

 彼の行動には、組織の安定よりも「面白さ」や「刺激」を優先していた描写が多く見られます。

 また、長年トップに君臨しながらも、明確な後継者を指名していませんでした。キメラ=アント討伐にあたって心臓に「貧者の薔薇」を仕込んでおり、死を覚悟して挑んだ戦いであったはずなのに……。

 ネテロほどのカリスマを持つ人物が不在になれば、組織が混乱するのは明らかです。事実、彼の死後、会長選挙をめぐって派閥争いが激化しました。

 「個の力」を重視するネテロの思想は、カリスマ的な指導者がいなくなると組織が脆くなるというリスクを生み出しました。彼は強大な力を持っていましたが、その思想はハンター協会の未来にとって必ずしもプラスとはいえなかったのではないかと考えさせられます。

◆ビヨンド=ネテロの登場とパリストン派の動き

 ネテロの死後、彼の息子を名乗るビヨンド=ネテロが現れ、ハンター協会を揺るがしました。彼は暗黒大陸渡航を企て、ネテロが遺言でそれを阻止しようとしたにもかかわらず、多くの者を引き寄せています。

 特にパリストンはビヨンド派に加担し、念能力者を大量に確保していました。これは、ネテロの采配が結果的にハンター協会の弱体化を招いたことを意味します。

 ネテロの“個人の自由”を重視する方針は、結果的に組織を弱体化させ、パリストンのような策士に付け入る隙を与えてしまいました。ハンター協会は統制を失い、暗黒大陸という未知の脅威に直面します。

 

 ──ネテロの戦いは、人類のためという大義名分の下、「己が楽しむため」だった可能性が大いにあると考えられます。

 彼の選択は、メルエム討伐という結果だけを見れば人類を救いましたが、ハンター協会の弱体化、パリストン派の暗躍、そして暗黒大陸への脅威という、新たな問題を生み出しました。

 ネテロの選択は、本当に人類にとって最善だったのか。それらが明らかになる日はくるのでしょうか。

〈文/鷹野あやね〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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