『HUNTER×HUNTER』の原作では基本的にオーラが白く表現されていますが、ネフェルピトー戦で強制的に成長させたゴン(以下、ゴンさん)のそれには黒いオーラが混ざっているように描かれていた場面もありました。

 ほかにはキメラ=アントの女王直属の護衛軍やナニカが禍々しい黒いオーラが放っていることから、ゴンも暗黒大陸の出身なのではないかという考察がされています。はたして黒いオーラの正体はいったいどのようなものなのでしょうか。

◆実は黒いオーラを出しているキャラはたくさんいる

 黒いオーラを放っていたイメージが強いのがキメラ=アントやナニカだったため、暗黒大陸と関係があるというイメージを持っている読者も多いでしょう。しかし、ゴンさんのほかにも実はヒソカや第14王子のワブルなどもオーラが黒く表現されているシーンがあります。

 黒いオーラは宙に舞うモヤのように表現されていますが、キメラ=アント編以降この描写は多く使われてきました。これはオーラだけではなく背景として描かれているものもあるため、必ずしも宙に漂う黒いモヤ=黒いオーラというわけではありません。

 しかし、『HUNTER×HUNTER』ではオーラを出すときに「ズズズズ」という効果音が入っていることが多いです。実際に天空闘技場でクロロに負けたヒソカが息を吹き返し、オーラが復活した瞬間に「ズズズズ」という効果音が入っています。

 特に分かりやすいのはノヴが宮殿に忍び込んだ場面で、王を守るモントゥトゥユピーのオーラが階下に漏れ出ていました。「ズズズ」という効果音とともに黒いモヤのようなオーラが出ており、ノヴはこれを見て精神を折られています。

 そのため、この効果音があるときに黒いモヤがあれば、それはオーラだと判断してよいでしょう。この条件に当てはまるのは天空闘技場のタイマン決戦でクロロから能力の説明を受けているヒソカ、壺中卵の儀に使う壺、ワブル王子、ネフェルピトーがコムギの治療を終えるのを待っているゴンなどです。

また、効果音が入っていないものの、十二支んのメンバーがパリストンに敵意を向けた瞬間、メルエムがネテロとゼノの間を通り過ぎた瞬間も黒いオーラと思われるものが描かれています。

 そして、この黒いオーラの始まりと思われるのが天空闘技場のヒソカです。200階にチャレンジしようとするゴンとキルアを待っていたヒソカが、「ズズズズ」という効果音とともに白と黒が入り混じったオーラを放っています。

 これはまだ念能力を知らないゴンとキルアが、ヒソカにオーラを向けられただけで前にすら進めなくなるというシーンです。そのため、この時点で既にヒソカが黒いオーラを放っているのは間違いないと考えられます。

◆カラー版のオーラの色は念の系統と関係ある?

 『HUNTER×HUNTER』のカラー版では、オーラに赤色や紫色、金色など7色ほどの色が付けられています。同じキャラクターでもオーラの色が変わっている場面があり、厳密に念の系統で色分けされているわけでもありません。

 このことからカラー版のオーラの色は念の系統とは関係ないといえるでしょう。そもそも念の系統をオーラの色で判別できたら、できるだけ能力を敵に隠すというキャラクターの行動原理を根本から崩してしまいます。

 それでは読者だけに向けて、各キャラクターの念能力の系統が分かりやすいように色分けしているのでしょうか。しかし、その可能性も限りなく低いと考えられます

 そもそも冨樫先生もすべてのキャラクターの念系統をカラー版掲載の時点で厳密に決めているとは思えません。もしそうであるなら同じキャラクターで、違う色のオーラをまとっているということはないでしょう。

 つまり、カラー版のオーラの色もあくまで演出の部分の範囲内であって、念の系統やキャラクターの出身を表すような厳密な意味はないと考えられます。

◆放出系はオーラに色を付けるのが得意

 念の系統を判別する方法として水見式があり、放出系はオーラによって水の色が変わります。つまり、念能力者はオーラにも色を付けることができ、放出系は特にそれが得意だと推察されるでしょう。

 レイザーの14人の悪魔、シャッチモーノの縁の下の11人(イレブンブラックチルドレン)は具現化したものではなく放出したオーラを人型にしているものです。それぞれ黒い帽子や黒装束を着けていますが、それらはオーラに色が付けられています。

 このことからオーラの色はキャラクターや念の系統ごとに決まっているわけではなく、操る人が意図的に変えられると考えてよいでしょう。また、そのときの感情によってもオーラの色が変わる可能性もあります。

◆黒いオーラの正体は邪気や不安などの感情が出たもの

 母親の正体が分からないゴンはともかくヒソカやワブル、十二支んまで暗黒大陸出身という可能性は低いです。そのため、オーラは禍々しさや邪気などがこもると、誰でもドス黒く変化するのだと考えられます。

 ワブルに関してはまだ赤ちゃんのため、不安や警戒心など負の感情がそのままオーラの色に出て黒くなっていたのでしょう。またメルエムやヒソカをはじめ黒いオーラを放ったことがあるキャラクターでも、そのほとんどが通常はオーラが白く表現されています。

 このことから暗黒大陸といった出身に関係なく、感情や禍々しさによってオーラが黒く表現されていると考えたほうが自然でしょう。また、ゴンの強さや性格を考えると、ジンと血がつながっていないとは考えづらいです。

 そして、ジンは年齢的にも言動的にも、これまで暗黒大陸に渡ったことはないと思われます。ゴンの母親が暗黒大陸の関係者である可能性は残りますが、ゴンが暗黒大陸で生まれたという可能性は低いでしょう。

 

 ──漫画はカラー版でなければ白と黒だけで表現しなければなりません。そのため、バックが昼の空であったり黒いスーツを着たキャラクターがいたりすると、その中や周りに配置されるものは自ずと逆の色で表現されます。この点に改めて目をやると漫画が白黒の制約の世界で、いかに多彩な表現を駆使して描かれているのかに気づかされます。

〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488

《諫山就》

アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。

 

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