ハンター協会元会長で作中屈指の念能力者でもあるアイザック=ネテロ。そんなネテロの最強の能力「百式観音」の習得には、いくつかの不可解な点があります。実は、その謎を解き明かすヒントが「暗黒大陸」に隠されているのです。

◆念能力「百式観音」の謎

 ネテロは強化系の能力者です。しかし、メルエムとの戦闘シーンを見返すと、観音菩薩を具現化して戦っています。第297話でも観音が「現れる」と表現しているので具現化の可能性が高いでしょう。もしそうだとすると、「百式観音」には次のような能力を高い水準で組み合わせることが求められると考えられます。

・オーラを強化する強化系の能力

・観音を顕現させる具現化系の能力

・体から離れたオーラを留める放出系の能力

・そのオーラを操作する操作系の能力

  しかし、これこそ「百式観音」最大の謎ともいえるのです。なぜなら強化系の能力者は、具現化系と操作系の能力が苦手なはずだからです。作中でこれらの芸当をこなせるのは、本来特質系の能力者のみです。しかし特質系でない場合は、ヒソカのいう「容量(メモリ)の無駄遣い」が発生してしまうハズ。

 ネテロの場合、カストロに比べればシンプルな操作しかしていませんが、精巧な作りの千手観音を顕現している点から見ても、ある程度メモリを割いていると考えられるでしょう。しかし「百式観音」の威力を見る限り、メモリ不足に陥っている様子がありません。

◆なぜ強化系のネテロが「百式観音」を習得できたのか?

 強化系であるはずのネテロが「百式観音」を習得できた理由は二つ考えられます。

 まず一つが、観音が「祈り」とリンクしていることです。「百式観音」の攻撃はすべて「祈り」を起点に発動しています。本来、戦いの中で祈るという動作は無駄に見えます。

 しかし、こういったリスクを逆手に取れるのが「制約と誓約」──。つまり「制約と誓約」によって他系統の能力を底上げしていると考えられるのです。メルエムも狂気の産物だと評していましたが、ネテロの祈る所作だけはメルエムの可動速度をはるかに上回り、結果的にリスクを帳消しにするほど隙のない念能力として完成しています。

 二つ目は、ネテロが強化系の修練度「極」となっていることです。こちらは2022年に行われた「冨樫義博展 -PUZZLE-」での展示物で明かされた情報ですが、念には「優」<「秀」<「天賦」<「極」と各系統に段階的な修練度が存在します。本来、当人の努力で到達しうる限界は「天賦」ですが、ネテロはさらに限界を超えた「極」に辿り着いているのです。

 つまり、通常の強化系が従来発揮できる能力も、「極」になれば限界を超えて引き出せると捉えられます。分かりやすくイメージすると、今まで100%だった能力が、限界を超えて120%、あるいは200%にまで引き上げられているのかもしれません。そうなれば、必然的に苦手な系統で習得できる上限値も上昇していると考えられるのではないでしょうか。

◆ネテロの覚醒と暗黒大陸の関係

 ネテロが「極」に到達したきっかけを遡れば、過去に暗黒大陸へ行った経験が大きく関わっていると考えられます。

 まず注目したいのはネテロが暗黒大陸へ行った時期です。第341話でネテロは若いころ非公式で2回暗黒大陸を訪れたと語っています。その指標となる時期の一つが今から60年以上前、ネテロが46歳だったころ……ちょうど感謝の正拳突きを始めた年齢です。ネテロの感覚ではギリギリ若いころに当たるかもしれません。

 しかし、ネテロの境地に達するにはメルエムの推測では10年の歳月が必要で、第265話でも「齢50を越えて完全に羽化する」と語られているので、修行後は50代だったことが分かります。ちなみに、第202話でネテロは半世紀以上昔の自分を「全盛期」と表現しています。

 さらにネテロ曰く、暗黒大陸は自分が目指した「強さ」とは違った世界だった……。つまり、ネテロが求めた個の「強さ」を極めてから、再び暗黒大陸に行くのは動機としても少し矛盾が生じます。このことから、ネテロが暗黒大陸に向かった時期は、46歳以前である可能性が高いのです。

 次に注目したいのが、修練度「極」に到達する条件です。「冨樫義博展 -PUZZLE-」では、「本人の努力以外に他の要因が大きく絡んでくる」と解説されています。

 山ごもりをしていた当時のネテロは自分の限界を感じており、恐らく念の修練度でいうと努力で到達できる限界の「天賦」だったと考えられます。第265話で「羽化する」と表現していることから、修行期間中に「極」にたどり着いたと考えるのが妥当でしょう。

 しかし、山ではひたすら修行している描写しかなく、ほかの要因らしきエピソードが描かれていません。

 つまり山での「修業期間=努力」と捉えた場合、ほかの要因は46歳以前のできごとだと考えられるのではないでしょうか。そして、現在分かっている情報の中で推測できる唯一のできごとは、暗黒大陸へのお忍び渡航だけです。

◆「百式観音」の完成は暗黒大陸のリターン?

 このほかにもネテロの覚醒に暗黒大陸が関連しているという根拠があります。それは、ネテロとともに渡航したジグ=ゾルディックが暗黒大陸由来の厄災「ガス生命体アイ」を持ち帰っている可能性が高いことです。

 ゾルディック家の第4子アルカの中にはナニカという存在がいます。このナニカは、ジャンプコミックス33巻で暗黒大陸出身であることが明かされています。ナニカとガス生命体アイ、ここに大きな関連があることは間違いないでしょう。

 つまりネテロたちはお忍び渡航した際に、本意にせよ不本意にせよ、何かしらの厄災、または何らかのリターンを得ている可能性が十分に考えられるのです。

 そうなると、ネテロも暗黒大陸で何らかの影響を受けたことがきっかけで、念能力が限界を超えて覚醒し「百式観音」が完成したと考えることもできるのではないでしょうか。

 

 ──ネテロは命を落としてなお、ジンやパリストンなど中心的なハンターたちに大きな影響を与える存在です。今後物語の舞台が暗黒大陸に移った際には、過去に訪れたネテロたちの真実が明かされるのかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

 

※サムネイル:Amazonより 『HUNTER×HUNTER 第27巻(出版社:集英社)』

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