<この記事には漫画『HUNTER×HUNTER』最新話までのネタバレが含まれます。ご注意ください。>
『HUNTER×HUNTER』の新しいエピソードで、コミックス第38巻までに示されていた伏線が回収されたのではないかとSNSなどで話題となっています。棺の数が一つ多かったこと、「ネタバレ。あえてね」など、多くの人が考察していた謎の答えと思われるシーンを検証していきます。
◆棺の数が一つ多い謎
カキン帝国の王位争奪戦は14人の王子が最後の1人になるまで続けるというものですが、ブラックホエール号に用意されている棺は14個。ファンの間では棺が1つ多い謎が考察され続けていたわけですが、403話にはワブルと同じくらい幼い第15王子にあたる赤ん坊がいるのではないかと推察されるシーンがあります。
話題となったのは第1王妃ウンマの部屋が描かれていたシーンです。電話をしているウンマの奥の部屋にベビーベッドが描かれていました。
そして、天井からは赤ちゃんをあやすためのベビーメリーが吊るされています。王妃の部屋で侍女が世話をしていることから、ウンマの子供と考えて間違いないでしょう。
また、第2王妃ドゥアズルの息子とされていた第9王子ハルケンブルグが、実はウンマの息子である噂もあります。このことからウンマは王位継承戦に向けていくつかの策略を巡らせていると考えられるため、ほかの王妃や王子に知られていない15番目の王子を隠していても不思議はないでしょう。
存在を知られていなければ、ほかの王子から命をねらわれる心配もありません。現に戒厳令を発令して下位王子全員の身柄を押さえようとしている第1王子ベンジャミンも、15番目の王子の存在は想定していない模様です。
本来、ベンジャミンもウンマの息子なので彼が王位を継げば、彼女の本懐も遂げられるでしょう。しかし、ベンジャミンは細菌兵器TSK-17によって余命が10時間程度。
第4王子ツェリードニヒどころか第1王子ベンジャミンですら王位継承戦に敗れることを想定して、ウンマは奥の手を用意していたのだと考えられます。ハルケンブルグと15番目の王子は、彼女にとって隠し玉であり保険なのでしょう。
◆表紙カバー袖の口と目の謎
コミックス第35巻と第36巻の袖に描いてある目と口。さらに口と一緒に「ネタバレ。あえてね」とあったことから、ファンの間で何らかの伏線であると話題となり考察が盛んとなっていました。第401話でロンギが口を開けると舌の裏に目玉の模様があったことから、詛贄者(ソエモノ)の印を示唆していたのではないかと考えられています。
詛贄者(ソエモノ)はビヨンドが自分の子供たちに仕掛けたとされるターゲットの命を奪う呪いです。そして、そのターゲットはカキン帝国の王子たちと予想されています。
詛贄者(ソエモノ)の印は凝でないと見れないとのこと。そういう意味でも目のイラストは、口を開けてのぞかせる不気味な目の模様を示唆していた可能性は高いでしょう。
ロンギのほかに彼女の異母兄弟であるマカハなどの「強い者」以外にも、弱い詛贄者(ソエモノ)もいるとされています。彼ら彼女らが王子をねらうヒットマンとされているわけですが、ウンマの隠し子にまで詛贄者(ソエモノ)が差し迎えられているかは不明です。
もしかしたらウンマの部屋で隠されている15番目の王子こそ、ビヨンドの子供である可能性もあります。そうなるとウンマが裏でビヨンドと繋がっている疑惑も浮上して来るでしょう。
◆クラピカのイルカとロンギの能力名
コミックス第33巻の表紙にはクラピカとイルカ、月が描かれており、イルカは早い段階で彼の能力である人差し指の絶対時間(ステルスドルフィン)の伏線となっていたことが判明。そして、第400話でロンギの能力が透明言葉(ゲッコウジョウレイ)だったことから、月はクラピカが彼女の能力を使う伏線になっていると推察されます。
イルカは奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)で吸い取った能力を他人に移動させるときに使う、人差し指の絶対時間(ステルスドルフィン)を示唆していました。この能力はコミックス第35巻で初披露。
名前の通りクラピカと能力を付与された者にしか見えないイルカが具現化され、説明や補助を行ってくれます。また、名称に絶対時間とあるように、緋の目が発現しているとき専用の能力です。
ロンギの透明言葉(ゲッコウジョウレイ)は、対象者の承認のもと協定契約を行うという操作系条件型の能力。協定を破れば対象者は1週間の強制的な絶状態となり、逆に結んだ条件を達成すれば賞与として透明言葉(ゲッコウジョウレイ)を1度だけ使えるようになります。
コミックス第33巻の表紙では鎖の中に月が描かれていることから、将来的に条件を達成してクラピカが透明言葉(ゲッコウジョウレイ)を使う展開になるのかもしれません。また、月とともに鎖と重なるように魚と蝶も描かれています。
これは今後クラピカが、魚や蝶にまつわる能力を盗むことを示唆していると考えられるでしょう。もしくはサイールドの念能力である裏窓(リトルアイ)を表している可能性もあります。
裏窓(リトルアイ)は虫や小動物を操るものですが、クラピカからこの能力を渡された王妃が既に黒い嫌われ者の昆虫を操作しました。蝶も昆虫であることから、裏窓(リトルアイ)の伏線だった可能性も考えられるでしょう。
ただ、奪った能力は1度使うと本人に戻る仕様ですから、裏窓(リトルアイ)は既にサイールドに戻っているはずです。そうなると、魚はまた別の念能力者のものと考えられます。
また、月と違って魚も蝶も鎖と重なって描かれていますから、どちらもまだ登場していない能力である可能性は高いです。魚にまつわる能力といえばクロロが使った密室遊魚(インドアフィッシュ)やオロソ兄妹の死亡遊戯(ダツDEダーツ)がありました。
まだ王子の中には、守護霊獣が明らかになっていない者もいます。そのため、魚にまつわる守護霊獣を持つ王子がおり、クラピカが盗もうとする展開もあり得るのかもしれません。
◆ツェリードニヒへの忠誠心が低いサルコフ
ツェリードニヒの私設兵の中で念能力が使えるのはテータとサルコフですが、第4王子への忠誠心があまりにも低いことに多少なりと違和感を覚えた人も多いでしょう。第402話でサルコフが「絶は生まれつき出来てた」と述べていたことから、彼はツェリードニヒの命を奪うためにビヨンドが仕込んだ詛贄者(ソエモノ)であると考えられます。
ツェリードニヒの念能力指南をしていたテータは、彼の念獣にマーキングされた影響で体調を崩して離脱。その結果、サルコフがツェリードニヒの念指導役を引き継ぐことになりました。
これはサルコフの詛贄者(ソエモノ)としての呪いが発動する伏線とも考えられます。詛贄者(ソエモノ)はビヨンドによって用意周到に準備されたヒットマンのため、その威力はかなり強力だと考えられるでしょう。
生半可な王子では、呪いによって死んでしまうことはマチガイナシ。しかし、特質系で類まれなるセンスを見せるツェリードニヒには刹那の10秒があります。
これは目を閉じて絶を行うと、一瞬の間に10秒先までの予知夢を見られる能力です。未来の見える能力ならテータの銃撃のときに見せたように、詛贄者(ソエモノ)の呪いすら回避してしまうでしょう。
サルコフがやたらツェリードニヒへの忠誠心が低かったのも、指導役をテータから交代したのもこの展開のための伏線であると推測できます。しかし、その場合はもっとも有力視されているツェリードニヒは、ビヨンドの息子ではなかったということになりそうです。
──新しいエピソードは10話分でしたが、そのストーリーは濃厚でシーンの細部や何気ないセリフにまで重要な意味がこめられていることが分かります。次の連載再開までにさらに何度も読み返せば、まだ気づいていない伏線回収シーンを見つけられるかもしれません。
〈文/諫山就 @z0hJH0VTJP82488〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。
※サムネイル画像:Amazonより 『HUNTER×HUNTER 第35巻(出版社:集英社)』