<この記事には原作漫画『HUNTER×HUNTER』の最新話までのネタバレが登場します。ご注意ください。>

 暗黒大陸編ではクラピカと同じ情報班に所属し、良き仲間として活躍するミザイストム。そんなミザイストムですが、ファンの間では十二支んの裏切り者ではないかとまことしやかに囁かれています。

◆ミザイストムが疑われているワケ

 発端は、第348話でクラピカが十二支んの一員のサイユウを、パリストンと同じくビヨンド側の内通者であると見破ったことでした。これによって、ジャンプコミックス30巻の表紙が冨樫義博先生の仕掛けた伏線だったことが判明します。表紙の中でサイユウとパリストンだけが「後ろで手を組んで」おり、作中で明かされた文字通りの関係だったことにつながるわけです。

 さらにこの表紙では、手をポケットに隠している人物が3人描かれています。そのうちの1人がミザイストム。つまり、パリストンたちのようにミザイストムの描写にも何か意味があると考えられているのです。それがまさに「手の内を隠している」こと……。言い換えれば、何かしら「思惑を秘めている」と捉えられます。実際、手を隠しているミザイストム、カンザイ、ジンのうち、ジンは十二支んを脱退し、事実上敵対組織であるビヨンド側に加担しています。

 また冨樫先生は、しばしばキャラクターの名前にダジャレやアナグラムを使うことがあります。たとえば、同じ十二支んのメンバーのパリストン=ヒルは、実在する人物パリス・ヒルトンさんのアナグラム。そして、ミザイストム=ナナもアナグラムだとすると「ムザイトミナスナ(無罪と見なすな)」となり、ミザイストムが完全なシロではないと考えられる根拠の一つとされているのです。

 これらのことから、ミザイストムは一部の読者から疑いの目を向けられています。

◆ミザイストムが十二支んを裏切る可能性

 実はミザイストムには、作中でも不自然な描写がいくつかあります。

 まず一つは第348話での発言です。ミザイストムは、ネテロ会長のミッションを聞く前にビヨンドと会っていた場合を仮定したうえで、「オレは多分喜んで彼の夢に協力していただろう」と語っているのです。

 また、そのあとで会長の指令を聞いても立場は変えないし、ビヨンドに協力するのは「順番だけの問題なんだ。裏切りだとかそんな話じゃない」とまで言っています。内通者を炙り出すためとはいえ、自らの覚悟を語るシーンでの発言であることから、ミザイストムの本心だった可能性が非常に高いのです。

 もう一つは、クラピカの「導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)」の能力の穴を聞いたときのミザイストムの描写です。臨時ハンター試験の際、クラピカの鎖の力でビヨンド側がハンター協会に送ったスパイを事前にふるい落とすことに成功します。

 しかしクラピカは、協会上層部に「記憶を消すことができる能力者」または「相手を意識レベルで操作できる能力者」がいて、当事者の嘘の認識を消した場合は鎖が反応しないことをミザイストムに忠告しています。つまり、100%スパイを排除できたとは安心できないという意味です。

 この話を聞いたミザイストムはなぜか冷や汗をかいている描写があるのです。もちろん、スパイを完全に排除し切れない危険性について思案しているようにも見えます。しかし、仮にミザイストムが十二支んを裏切っていた場合、この冷や汗は彼の動揺を示唆していると解釈され、意味合いがずいぶん変わってくる場面でもあるのです。

 ちなみに、30巻の表紙でミザイストムと同じく手を隠しているカンザイのアナグラムは「カイザン(改竄)」。仮にカンザイの「改竄の能力」を示唆しているのであれば、ミザイストムと協力関係にあるという最悪のシナリオにもつながります。このように、見方によってはミザイストムは裏切る動機と権力を持ち合わせているのです。

◆クロか、シロか? ミザイストムの経歴と性格がカギ

 結論からいうと、ミザイストムは裏切り者ではないと考えられます。その根拠として注目したいのがミザイストムの経歴と性格です。

 ミザイストムは「二ツ星(ダブル)」の称号を手にした犯罪(クライム)ハンターです。さらに弁護士と民間警備会社の経営者も務めています。この経歴だけをみても、ミザイストムの「犯罪を抑止したい」という強い想いを秘めていることが分かるでしょう。

 またミザイストムはその経歴からもうかがえるように、正義感の強い性格の持ち主でもあります。第381話では、ブラック・ホエール1号の第3層で第11王子フウゲツを発見した際、即座に状況を判断し、立場の弱いカチョウとフウゲツの逃走のサポートを部下に指示しているのです。当然、王位継承戦という不公平な争いの存在を知ったうえでの行動なので、彼の正義感の強さが分かる一幕でしょう。

 さらにミザイストムには思いやりもあります。第380話でイルミたちと接触した際、幻影旅団の乗船を知り、真っ先に仲間であるクラピカを案じていました。これらのことから、ミザイストムは正義感が強いだけでなく、穏やかで理知的、さらに人情を持った人物であることが推察できるのです。

 一方、内通先として疑われているビヨンド=ネテロは、かなり闇深い人物であることが分かっています。第401話ではカキンの王位継承戦を利用して、標的を呪うことによって命を奪う邪悪な「念」を実子たちに施していることが判明しています。人の命を捨て駒のように使っている時点で、ビヨンドの人間性は限りなく「悪」であると捉えられるでしょう。

 何よりミザイストムは、ビヨンドに賛同しているパリストンを「確実に闇側の人間」だと警戒していました。つまり、ビヨンドたちと手を組むこと自体、ミザイストムの経歴や性格からみると非常に考えにくいのです。

 30巻の表紙で同じく手を隠していたジンは、確かにビヨンド側に加担しています。しかし、その目的はあくまでもパリストンの陰謀を食い止めること。もしかするとミザイストムは、十二支んを裏切っていると見せかけてビヨンドやパリストンを抑止するために、二重スパイさながらジンとつながっている……なんてことがあるかもしれません。

 

 ──現時点では、着ている服と同じくシロなのかクロなのかはっきりしないミザイストム。今後、船内の治安はますます悪化し、さらに大きな事件が起こることは間違いないでしょう。そのときこそ「特別捜査権」を持つ犯罪ハンター、ミザイストムの出番がくるかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「HUNTER×HUNTER」第30巻(出版社:集英社)』

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.