<この記事には漫画『HUNTER×HUNTER』の最新話までのネタバレが登場します。ご注意ください。>
現在、ブラックホエール1号に潜伏し鬼気迫る表情を見せていたクロロ=ルシルフル。そんなクロロは幻影旅団を続けるため、自分に万が一のことがあった場合の次善の策を用意していることが分かっています。そしてクロロの言動から、その策は自身の念能力と密接な関係があると考えられるのです。
◆大前提──クロロの「本当の目的」とは?
まず、現時点で判明しているクロロの目的は主に次の4つになります。
・カキン帝国の「三種の神器」を奪うこと。
・「盗賊の極意(スキルハンター)」を進化させること。
・「レアな能力」を手に入れること。
・「ヒソカ」を倒すこと。
これらの目的は一見すると対ヒソカ戦を想定しているだけのようにも見えますが、実はある目的にすべてつながっているのです。それこそがクロロの本当の目的、幻影旅団を「存続」させることです。
「旅団」自体の重要性はヨークシンシティ編からたびたび示唆されています。たとえばクロロがクラピカにさらわれた第118話では、フランクリンが想定した最悪のケースは団長の落命ではなく、旅団が致命的に崩壊することでした。
そもそも旅団は、クロロが世界中の人間から恐れられる「恐怖の象徴」としてデザインし作り上げた組織です。これは第395話から第397話で描かれた通り、かつて流星街で起こったサラサの悲劇を繰り返さないという想いに起因しています。流星街に手を出させないため、旅団は外の世界で大悪党を演じ続けているのです。
「生かすべきは個人ではなく旅団(クモ)」。大前提として、クロロは自分自身の命よりも幻影旅団の存続を重要視しています。
◆旅団の存在意義と「盗賊の極意」の関連性
そして旅団存続のための策があることが分かった第406話では、同時にクロロの「盗賊の極意(スキルハンター)」に進化の余地が残されていたことも判明しました。実はこれこそが旅団存続に大きく係わっていると考えられます。なぜなら、第397話でクロロは旅団というシステムだけなく「自分の力も」同時に準備すると言っていたからです。
そして注目したいのは、「盗賊の極意」の進化の条件が「国宝級のお宝」を盗むことだという点になります。これは宝を盗むことで、その難易度に応じて能力が進化するとも解釈できます。実際にクロロも「盗む獲物としては極上で進化の条件を文句なしでクリアできる」と言っており、可能性はかなり高いでしょう。
そうなると第79話でヒソカが「団長は獲物をひとしきり愛でると全て売りはらう」と語っていたことは、能力の進化のために必要な過程だったと捉えられます。つまり、「盗賊の極意」はこれまでも進化し続けてきたということになるのです。事実、天空競技場でヒソカと戦った際も、クロロはかつて使えなかった「盗賊の極意」に付属する新たな能力「栞のテーマ(ダブルフェイス)」を使えるようになっていました。
そしてこの宝を「盗む」行為は、能力の進化だけでなく盗賊団として世界を恐怖させるようデザインした旅団の存在意義にも通ずる点があるのです。まさに二つの目的がリンクする一石二鳥の設計となっています。
◆クロロが整えた「次善策」とは?
現在、クロロは王位継承戦が行われている第一層に向かっています。その階にはヒソカもいるので、能力が進化する前に遭遇したら命を落とすリスクがあります。しかし、第406話でクロロは「今のオレには大きな問題ではない」とも言っています。つまり次善策はクロロが命を落としたあとでも、問題なく発動する策だと考えられるのです。
そしてここまで考察した通り、クロロの能力と旅団の存在意義はかなりリンクしています。これはクロロが過去に旅団を立ち上げた際に、自分の能力もあえてそう設計したからだと考えられます。
根拠として、旅団の存続に関連するクロロのセリフは、なぜか「システムを整える」「デザインする」といった、まるで念能力にも使われそうな言葉で表現されているからです。つまり、旅団が「畏怖され続ける集団」であるために、念能力「盗賊の極意」を習得したとも考えられるのではないでしょうか。
そして、「クロロが命を落とす」「旅団存続の次善策」「盗賊の極意」……、これらの事柄を結びつけられるのが「死後強まる念」です。つまり、仮にクロロが命を落とした場合、即座に「死後強まる念」が発動し、誰かに団長の座と念能力「盗賊の極意」が引き継がれたら、旅団は存続することになります。
ヒソカの前例があるので、念能力者は生前に意図的に「死後強まる念」をプログラムできるはずです。また能力の継承も、第1王子ベンジャミンの能力「星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)」の前例があるので、十分可能性は考えられるのではないでしょうか。
「盗賊の極意」は進化できる能力ですし、クロロがこれまで盗んだ能力をそのまま誰かに引き継げば強力な武器になるでしょう。そう考えると、そのように旅団も自分の能力もデザインしていたという発言にもつながってくるように思えます。
何より、第397話でクロロは幻影旅団を作り上げる際に、とても重要なことは「自分の人生を捧げる覚悟」だと語っていました。幻影旅団がクロロにとって「覚悟の結晶」であるならば、覚悟が力になる「念能力」を旅団のために捧げていても不思議ではないのです。
──『HUNTER×HUNTER』の中で幻影旅団は非常識な悪役として描かれています。しかし決して「非情」な集団ではなく、その原点はあくまでも流星街に住む仲間たちを想って作られています。理解できない部分と共感できる部分、相反する二つが混在しているのが幻影旅団の魅力の一つなのかもしれません。今後、クロロ本人の行く末だけでなく、幻影旅団という組織がどのように生き続けるのか……、注目です。
〈文/fuku_yoshi〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「HUNTER×HUNTER」第8巻(出版社:集英社)』