全方位煽りキャラとして、先輩やモブキャラ関係なく顔真っ赤にさせているクラピカ。しかし、煽られても動じずうまく切り返したデキるキャラもおり、彼らのふるまいから学べば職場でやたらマウントを取って来る相手にもうまく対処できるはずです。

◆至極自然な発想だと思うが?

 グリードアイランドでビスケから敵の念能力を外す方法があると知らされたキルアは、その事実をクラピカに知らせるために一度ゲーム外に出ます。その親切心に対してクラピカから返されたのは「至極自然な発想だと思うが?」という煽り文句でしたが、キルアは実に大人な対応を見せます。

 グリードアイランドのバインダーにクロロ=ルシルフルの名前があることに気付いたゴンとキルア。クラピカから念を封じられている彼がゲーム内にいることに違和感を覚え、ビスケから除念のことを教わります。

 「クラピカには連絡しておいた方がいいよな」とわざわざゲーム外に出て、その事実を伝えようとするのは用心深いキルアらしいといえるでしょう。ただ、それはクラピカからすれば既に想定済みで、自分のかけた念が外されたら分かるとのこと。

 そこで終わっていればよかったのですが、親切心から教えてくれたキルアに対してクラピカの煽り体質が発動。「人にかける念があるのだから逆にはずす念も存在すると考えるのは至極自然な発想だと思うが?」と衝撃の言葉を付け加えます。

 キルアは当然カチンと来ますが、「やなヤツ」と心の中で思っただけで「とにかく報告はしたぜ」と大人の対応。クラピカの煽り体質について知っていることもあって、ここで突っかかっても仕方がないと判断したのでしょう。

 実際にキルアが大人の対応をしたことで、それに対してクラピカは礼を述べています。相手の煽りにカチンと来ても言いたいことは言葉に出さずグッとこらえるのは、日本人にとって一般的でもっとも使いやすい対応です。

 きちんとお礼を言える相手であれば、煽って来る性質については悪気がないと割り切って受け流すのも有効な手でしょう。また、大人の対応を見せているのが11歳のキルアというのもポイントです。

 会社で上司に確認や報告をしたとき、そんなことわざわざ確認するまでもないことだと煽られた場合、グッとこらえて一歩引くことで精神的な成熟度の違いを見せつけられます。年下に大人の対応をさせてしまうような子供っぽい人間なんだなと考えれば、腹が立つどころか逆に優越感に浸れるでしょう。

◆わかってないようなので言い直そう

 ノストラードファミリーのボスの護衛につくことになったクラピカは、襲って来そうな勢力に心当たりがないか質問しますが、リーダーであるダルツォルネは「答える価値のない愚問だな」とまともにとりあいませんでした。これを受けてクラピカは初対面の上司に「わかってないようなので言い直そう」と煽りますが、ダルツォルネは経験と証拠をもとに説得力ある答えを返します。

 改めて質問の意図を説明したクラピカによると、実際に襲って来そうな勢力に目星がつけば動機や性格、環境が分かるため対策を立てやすく安全性が増すとのことです。これは確かに正しい判断で、アメリカでも危険な勢力については監視をしていますがその中でも実際にテロなどの行動を起こしそうなグループをピックアップして警戒します。

 ただ、これは人員が限られるうえ予算的に24時間365日、常に厳戒態勢でいることができないからです。そのため、ターゲットを絞って危険度に応じた対策を取るというやり方になります。

 しかし、ダルツォルネからするとボスを守ることが重要であり、そこに人員や予算が足りないだとか敵が誰であるかなどの要素は関係ありません。いつ何時であろうと、どういう状況でどのような敵が襲って来ようとボスを守るのが仕事というわけです。

 説明するときにいくら凄んでも言葉だけでは説得力がないため、経験にもとづいた具体的なエピソードや証拠を見せることがポイントとなります。ダルツォルネは敵を勝手に想像して偽情報に踊らされ、チームを危機に陥れた仕事仲間の凄惨な姿を証拠として見せることで自分の言葉に説得力を加えました。

 部下が仕事のやり方を非難して煽って来たときは、目に見える根拠とともに経験からくるエピソードを披露するのが効果的でしょう。また、もう一つのキーポイントは、煽って来たからといって今後の関係に引きずらないことです。

 ダルツォルネはウボォーギンの強さを目の当たりにしてすっかり心が折れていたにもかかわらず、クラピカの旅団を捕らえるという提案を受け入れました。報奨金が魅力だったというのもありますが、初対面でいきなり煽って来たクラピカの提言を聞き入れるというのは、ダルツォルネの器が大きい証拠でしょう。雇い主であるノストラードファミリーの利益のために、プロに徹しているともいえます。

 普通なら生意気な部下に対して根に持って、利のある提案だと分かっていても感情から聞く耳を持たないという反応をしてもおかしくありません。煽って来た部下にはどちらが上なのかきっちり分からせる必要はありますが、その後の関係には引きずらないというのがクール上司への第一歩といえるでしょう。

◆何がお前の最後の言葉になるかわからんぞ?

 幻影旅団の団長クロロを鎖で捕らえたクラピカは、妙に落ち着きはらっている彼に「発言に気をつけろ 何がお前の最後の言葉になるかわからんぞ?」とアクセル全開で煽ります。しかし、クロロは冷静にクラピカの痛いところを突くという手法で煽り返して、反対に逆上させる高等テクニックを見せました。

 クロロの余裕ぶりは、クラピカが自分の目的のために仲間を見捨てられるような男ではないという彼の本質を見抜いたからでした。そして、煽って来たクラピカにネオンの占いには、自分が捕まることは書かれていなかったと告げます。

 続けて、「つまりこの状態は予言するほどのこともない とるに足らない出来事というわけだ」と切れ味抜群の煽りカウンターを炸裂。自分の本質を見抜かれたうえ痛いところを突かれたクラピカは激高。

 ナチュラル煽り体質のクラピカでさえも、言葉を失ってクロロに言い返すことはできず思わず手が出てしまいました。その後もクラピカは情報を聞き出そうと質問しますが、クロロは動じることなく挑発し続けます。

 どんどんクラピカのほうが追い詰められて行き、終始捕らえられているクロロのペースで進んでいきました。このクロロの対応は職場で学歴マウントで煽って来る同僚相手に使えます。

「そんないい大学を出たのに俺と同じ会社に入ったんだ」と痛いところを突いてやりましょう。これでたいていの学歴コレクターは黙らせられます。

 たまにあえてこの会社を選んだ的な言い訳をして来る相手がいますが、「だったら学歴じゃなくてこの会社で何をしたかを誇れよ」と言ってやればジ・エンド。会社で誇れる実績を残しているなら、いつまでも学歴マウントなんかにすがっていません。

 このときあくまで冷静さを保ちつつ言葉には最大限のトゲを持たせて、相手を追い詰めていくのがポイントです。

◆何故わからないんだ?

 ハンター協会の内部にビヨンドの仲間がいることを指摘したクラピカの意図がまったく理解できないカンザイ。クラピカは心底不思議そうに「何故わからないんだ?」と挑発めいたセリフを発しますが、カンザイは自分でも認識しているくらいに心底バカなので煽られていることにすらまったく気づきませんでした。

 カンザイは十二支んのメンバーでありながら頭が悪く、世界情勢や社会常識にも疎いです。しかし、ヒソカから85点と評価されており、十二支んに入るだけあって強さはかなりのものだと思われます。

 本人は頭が悪いことを認識していても、それを気にしている様子はありません。カンザイは強さに絶対的な自信があり自分が活躍する場所を心得ているから、会議などの話し合いでついて行けなくても気にならないのでしょう。

 この割り切りぶりは「オレは大陸で襲って来るヤツをぶっとばすだけだから上陸までの難しいことはそっちで片付けてくれ」というセリフからも分かります。確固たる武器、自信となるものがあれば自分の欠点をバカにされても気にならないということでしょう。

 そもそもカンザイレベルになると煽られていることにすら気づいていません。マウントを取ってくる相手への対処法としては、ある意味最強といえるでしょう。

 いくら煽っても相手がそれに気づくことさえないなら、煽り甲斐もないということです。さすがにカンザイくらいバカになるのは難しいかもしれませんが、一番大事なことは決して揺らぐことがない自信を手に入れることです。

 そうすれば中途半端に考えたり思い悩んだりせず、煽って来るような小さな存在は気にならなくなるでしょう。

 

 ──マンガには強烈なインパクトのある煽りキャラや優秀なキャラが登場するため、日常生活ではなかなか巡りあわない極端なシチュエーションにお目にかかります。それだけにそのキャラクターのふるまいから学べば、普段の生活で起こる人間関係のトラブルなんて小さいことに感じられて乗り切るのもわけないかもしれません。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。X(旧Twitter)⇒@z0hJH0VTJP82488

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「HUNTER×HUNTER」第33巻(出版社:集英社)』

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.