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 『HUNTER×HUNTER』の中で最大の謎の一つといえるのがクルタ族が壊滅させられた事件でしょう。作中の描写から幻影旅団がクルタ族を襲撃し、戦闘になったことは確実です。しかし、本当にすべて旅団の仕業だったのでしょうか? 振り返るといくつもの謎が残っているのです。

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◆クルタ族の事件にまつわる謎

 2013年に公開された映画『劇場版 HUNTER×HUNTER 緋色の幻影(ファントムルージュ)』の入場者特典として配布された『HUNTER×HUNTER』0巻。ここでは、クルタ族の事件についての新事実が明かされています。

 特に注目したいのは大きく2点で、まずはクルタ族がクラピカを含めて129人しかいなかったことです。これは、よそからの嫁入りなどを含んだ人数なので、緋の眼を発動できる生粋のクルタ族はもっと少ないことが分かります。

 さらに命を奪われた凄惨な状況です。事件は、緋の眼を持たない者を傷つける様子を生粋のクルタ族に見せつけ、緋の眼を発動した者から命を奪い眼球を摘出するという残虐非道ぶりだったのです。仮に、これをすべて幻影旅団が行ったとしたら、以下の疑問点が浮かび上がります。

●1 クラピカを除く128人全員を生け捕りにしている点

 第83話でウボォーギンがクルタ族の存在を思い出した際、「あれは大仕事だった」「あいつら強かった」と語っています。強化系を極めたウボォーギンに強いと言わしめたことから、その実力はかなりのものだったハズ。そんな強者たちの命を奪うだけならいざ知らずどうやって生け捕りにしたのか、という疑問が生じるのです。

●2 逃亡者が誰もいなかった点

 また、128人全員が捕まっているのも不自然でしょう。クルタ族には自由に外出を禁ずる掟があったとはいえ、襲撃があったなら普通は非戦闘員を逃がすはずです。そして旅団メンバーがいかに強いとはいえ、強敵と闘いながら逃げ惑う人間全員を捕らえるのは、13人ではいささか人手不足ではないでしょうか?

●3 クルタ族に対する旅団メンバーの記憶

 旅団からしたら確かに緋の眼の者たちと戦ったことは覚えていましたが、あくまでも数多のターゲットの一部という認識でした。実際、ウボォーギンはクラピカと対峙して初めて思い出し、パクノダやフェイタンたちは緋の眼というキーワードでようやく思い出す程度でした。

 クルタ族が命を奪われた凄惨な状況は、流星街で起きたサラサの悲劇と通ずる点が多いです。仮にそこまでのことを旅団がしたのであれば、クロロたちの記憶に残っていないのはかなり矛盾が生じます。

●4 動機が不明な点

 当初、旅団は盗賊団として緋の眼をねらっていたと考えられていました。しかし、そもそもお宝や金に釣られるメンバーがいないこと、さらに第406話でお宝を盗むこと自体がクロロの「盗賊の極意(スキルハンター)」のレベルアップ条件だったことが分かっています。そうなるとなぜ旅団がクルタ族を壊滅させたのか、動機が不明なのです。

 以上のことから、クルタ族の一件は幻影旅団による単独の犯行とは考えづらいことになります。

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◆襲撃は旅団……本当の黒幕はアイツらだった!?

 それでは、旅団以外に事件に関わっている人物がいたとしたら誰なのでしょうか? ここで注目したいのは、やはり最後の緋の眼の所有者であるカキン帝国第4王子・ツェリードニヒ=ホイコーロ。

 実はツェリードニヒが関与している可能性はかなり高いと考えられます。まず、描写からも分かる通り彼は人体収集家です。緋の眼は、そんなコレクターたちの間でかなりの価値があるとされています。つまり、彼にはクルタ族を襲う動機が十分にあります。

 そんなツェリードニヒはカキンマフィア・エイ=イ一家のケツモチをしています。仮に武力によって緋の眼を入手しようとするなら、エイ=イ一家を頼るのは濃厚でしょう。しかし、クルタ族にはウボォーギンですら強いと言っていた戦闘員たちがいます。つまり、いくらエイ=イ一家でも荷が重いと考えられるのです。

 そこで、クルタ族の戦闘員たちの討伐依頼を旅団にしたとしたら筋は通ります。もちろん、第377話でソンビンが「あれは飼えない」と評していることから、普段の旅団ならそんな取引には応じないでしょう。しかし、第397話で明かされた通り、旅団にはサラサの仇討ちと悪名をとどろかせるという目的があります。

 そして先ほど触れた通り、クルタ族が壊滅させられた凄惨な状況と流星街で起きたサラサの悲劇は通ずる点が多いのです。つまり、クロロが網を張っていた人物たちがエイ=イ一家の中にいたなら、サラサを襲った人物に近づくため旅団が加担するのもうなずけます。

 しかもその可能性は結構高いと考えられるのです。なぜなら第397話でクロロは、サラサの一件は映像で記録されていたと語っており、第348話でツェリードニヒは、配下が人体に危害を加えているところを同じように撮影していたからです。

 そして、クルタ族の主力メンバーを旅団に任せるなら、人数で勝るマフィアの構成員で囲えば、クルタ族の生け捕りもできるし逃亡者も出さないで済みます。何よりツェリードニヒが関わっているなら、事件の残虐性にも納得がいくでしょう。つまり、最初にあげた4つの謎が解決するのです。

 このほかにも、第349話の描写がツェリードニヒの関与の疑惑を深めています。彼の部屋には5対の緋の眼とクラピカの親友だったパイロと思わしき人物の頭部が保管されていました。そして、第345話でツェリードニヒは「オレが求めているのは前途ある若者が極限状態下で産み出す総合芸術なわけよ」と語っており、まさに彼の言動にもつながってきます。

 人体収集家かつアーティストを気取るツェリードニヒが頭部を保管している時点で、何かしら強い思い入れがあったことは明白でしょう。そんな思い入れを持つツェリードニヒが現場にいなかったとは考えにくいのです。さらに守護霊獣の口の中にはパイロと似た人物が描かれている点も不穏なつながりが示唆していると捉えられます。

 

 ──冨樫義博先生は、前作『幽☆遊☆白書』でも妖怪=悪、人間=正義と読者に先入観を持たせたあと、終盤でその認識が逆転する出来事を描いています。単純な善悪では分類できないキャラ作りをしているため、悪役と思っていた旅団が実はクルタ族事件の真の黒幕ではなかったという可能性は十分に考えられるでしょう。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「HUNTER×HUNTER クラピカ追憶編」(出版社:集英社)』

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