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 キルアは登場当初からゴンとともに冒険し、成長してきました。もちろん、「念」が開花したのもゴンと同じタイミング……。だからこそ「念」にまつわるキルアの言動で、「あれ?」と思う矛盾点が作中にはいくつかあります。

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なぜゾルディック家はキルアだけに「念」を教えなかったのか?

 キルアと「念」に関して避けて通れないのが、なぜゾルディック家がキルアに「念」の存在を教えなかったのか、という疑問でしょう。もともと念能力を知らなかったキルアですが、物語が進むにつれゾルディック家は暗殺一家だけでなく、念能力者としても優秀な一族であることが分かります。

 しかも、キルアが「念」を知らない一方で、カルトは幻影旅団に入団できるほどの「念」の使い手として登場します。さらに雇われている執事たちまでかなりの実力者揃い……。そんな環境で育ったにも関わらず、キルアだけには「念」の存在が秘匿されていたのです。

 この矛盾について、当然ネットなどでもさまざまな考察がされています。特に有力な説とされているのは、キルアに「念」を教えなかったのはシルバの考えで、基本的な暗殺術を教え込んだのちに「念」を教えようとしていたという説です。

 確かにキルアは登場時点から暗歩や肉体操作、さらにネテロも驚く「肢曲」といった高度な暗殺術を習得していましたので、概ねこの説なら矛盾が解消されます。しかし、さらに注目したいのはゾルディック家の歪な家庭環境です。

 「家族内指令(インナーミッション)」がある通り、ゾルディック家にはそれぞれの派閥、考え方が存在します。しかも、ヨークシンシティ編の描写を見る限りそれぞれが個人事業主のような形態で仕事をしているので、家族間でもお互いの意見を尊重していることが分かります。

 つまりキルアの教育方針についても、家長であるシルバの意見が最も重要視されながらもシルバの一存では決められなかったのではないか、とも捉えられるのです。イルミがキルアに自分の能力の針を仕込んでいたことが、まさにその証明になるでしょう。

 しかし、さまざまな考えが巡る中で家族全員の共通認識としてあったのが、キルアの暗殺者としての資質とキルアへの愛情です。キルアに針を仕込んだイルミですら、歪んではいますがキルアのことを心底大事に思っています。

 そして念能力はその性質から、一度間違えて覚えてしまうと取り返しがつかないことになります。つまり、教える側にとっても慎重になるはずです。それゆえに「念」の指導方針については家族間でも最後まで意見が分かれ、まずは「念」の存在を隠し、しばらくは保留という形をとったのかもしれません。

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キルアがゼノの念能力を知っていた理由

 キルア最大の矛盾点といえば、第266話でキメラ=アント討伐のため王宮に乗り込んだ際の描写でしょう。「念」を知らなかったはずのキルアが、なぜかゼノの必殺技「龍星群(ドラゴンダイブ)」を知っていたのです。この矛盾については2つの可能性が考えられます。

 まず1つ目が、実は最初からゼノの能力を知っていた可能性です。つまり、当初キルアは「念」を知っていたのですが、イルミの針によって「念」に関する記憶が消されていたことを意味します。しかし、これだとキルアが「念」を知っていたうえであえて能力を開花させなかったことが前提となるので、可能性は低いでしょう。

 そこで2つ目は、キルアがゼノから直接聞いていた可能性です。キルアは登場してからずっとゴンと一緒に行動していました。しかし、そんな物語の中で唯一読者が把握していない時間的空白期間があります。それがグリードアイランド編で、一時的にハンター試験を受けるためにキルアが離脱した期間です。つまり、この間に実家へ帰りゼノから直接能力を聞いたと考えられます。

 その根拠として第149話でキルアは、ハンター試験に行くときよりも「むしろ帰ってくるのに時間かかってしんどかった」と語っており、途中の寄り道も示唆していました。そして第150話では新たな武器としてヨーヨーを持ってきています。このヨーヨーは第178話で「アニキ特注の合金」で作られていると明かしていたため、これを取りに実家に立ち寄った可能性は十分考えられるでしょう。

 つまり、この帰省のタイミングでゼノがキルアに能力を明かしたとしか考えられないのです。念能力者にとって自分の能力を明かすことはかなりリスキーですが、ゼノはもともとキルアに甘いと言われています。仮に孫が「念」を覚えて帰ってきて、そのヒントを助言する際に自分の能力取得の実体験を教えたとしたら……筋は通るのではないでしょうか。

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キルアの能力「神速(カンムル)」に充電が必要な理由

 キルアの能力「神速(カンムル)」についても矛盾点があります。変化系念能力者であるキルアは、ヒソカのようにオーラを自在に任意の性質に変化させることが可能で、本来であればオーラが続く限り電気に変えられるハズ。しかしなぜかキルアの能力は、必ず「充電する」というステップを踏んでからオーラを変化させています。しかも充電が切れると能力が発動しなくなります。

 ここで振り返りたいのが第122話で念能力の要となる「発」の修行に取り組んでいた描写です。キルアは自分の能力を決める際、クラピカの能力を引き合いに出しながら、「もうちょっとゆるい条件で使える能力にしないとな。かといってリスクが軽すぎるとすげー能力は使えないから重すぎず軽すぎず」とゴンに語っています。

 キルアたちとほぼ同時期に念を習得したクラピカの場合、命がけのリスクを背負うことで幻影旅団などの強敵と対等に戦える能力を身につけています。一方で、キルアはそこまでのリスクを負うことは自分たちには向いていないと言っているのです。

 つまり、この話から察するにあえて充電することこそが「神速」の発動条件である「制約と誓約」になっていると考えられます。ツェズゲラやビスケも驚いていた通り、キルアは日常的に強力な電気を浴び続けていました。クラピカほどのリスクではないにしろ決して軽すぎない……、まさに絶妙な制約となっているのでしょう。

 

 ──一見すると矛盾にも感じるキルアの言動ですが、読み返すと筋道はきちんと通っているのが不思議です。あらかじめ張られた伏線なのか、それとも天性の勘でつながっているのか……答えは、冨樫義博先生のみ知ることです。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「HUNTER×HUNTER」第6巻(出版社:集英社)』

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