グリードアイランドはゴンがハンターになった8ヵ月後に、ヨークシンシティで開催されたオークションに大量出品されています。また、ゴンとキルアはグリードアイランド内でビスケが鍛えてくれなければ早々に死んでいました。この出展タイミングとビスケがグリードアイランドに参戦するきっかけとなった「ブループラネット」には不自然な点があり、親バカなジンがすべて計算ずくで仕組んでいた可能性があります。
◆ジンがグリードアイランドを作った目的
ゴンがグリードアイランドのプレイを始めたとき、ジンから仲間と作ったゲームを自慢したかったというメッセージを伝えられました。しかし、ビスケはゴンを強くするためにジンがグリードアイランドを作ったと推測しているように、予想のナナメ上をいく親バカぶりからプログラムされたゲームである可能性もあります。
ビスケはグリードアイランドのことを「順序よくゲームを進めていけば確実に強くなるようプログラムされている…」と評価していました。そして、それは息子であるゴンのために作られたと推察しています。
おそらくジンがグリードアイランドを作った理由には、ゲームだけでなく一緒に制作した仲間をゴンに自慢をしたかったという目的もあったでしょう。世界樹の頂上でゴンと話したときも、目的のために協力してくれた仲間が何より大切だと述べていました。
また、グリードアイランドの発売年とゴンの年齢を考えると、両者はほぼ同じ時期に世に出たと考えられます。構想段階を含めると開発期間には最低でも数年はかかっているでしょうから、ジンがグリードアイランドを作ろうと思ったきっかけはゴンとは関係ないはずです。
しかし、自分に子供が生まれることが分かると、将来ハンターになることを確信してゴンを強くするためにプログラムを改良した可能性はあるでしょう。その証拠にジェイトサリによるグリードアイランドのオークション出品、ビスケが目当てにしていたクリア報酬の「ブループラネット」など不自然な点は多いです。
◆偶然過ぎるジェイトサリの出品タイミング
『HUNTER×HUNTER』には西暦のようなものが存在しており、ゴンがハンター試験に合格したのは1999年の1月です。同じ年の9月に大量のグリードアイランドがヨークシンシティのオークションに出品されたのは、はたして偶然なのでしょうか。
ゴンがグリードアイランドに興味を持ったのは、ハンターになって故郷のくじら島に帰ったときでした。ハンターになったら渡すようにミトがジンから頼まれていた箱の中に、グリードアイランドのROMカードとデータセーブに使う指輪が入っていたからです。
グリードアイランドの出品経緯は、オークションの司会女性がくわしく説明しています。プロハンターのジェイトサリが所有していたものであり、2000年1月1日までにクリアする者が出なければ所有している7本のソフトを無償で提供するという契約に基づいたものでした。
また、ゲーム機のそばにはゲームオーバーとなったジェイトサリの仲間2名の遺体が、横たわっていたとも説明されています。内容が具体的であることから、司会女性の発言の真実味は高いです。
しかし、1本定価58億ジェニーもするグリードアイランドを7本も手に入れたプロハンターが、ゲーム外に出るための「通行チケット」のアイテムをゲットできないのは不自然です。
「通行チケット」はBランクのアイテムですが、所長を倒さなくてもお金を払えば手に入ります。グリードアイランドを買うために合計420億ジェニー近くを使ったと考えられるジェイトサリなら、ゲーム内でもお金は調達できそうです。
そのため彼の正体や本名は別にあり、ゲームマスターの一人でプレイヤーとしてデバッグを担当していたのかもしれません。もしくは本当にゲームから出られなくなって困っていたところ、ジンからグリードアイランドのオークション出品の契約を持ち掛けられた可能性もあるでしょう。
ハンター協会会長を決める選挙の投票に姿を現していることから、ジェイトサリは実在する人物であるのは確かです。もし彼がゲームマスターの一人なら、ゴンがグリードアイランドをクリアしたことで仕事から解放されて外の世界に戻って来たのだと考えられます。
ジェイトサリが普通のプレイヤーなら、ジンとの契約でグリードアイランドを出品する代わりに外に出してもらう約束をしていた可能性もあるでしょう。
そう考えればゲーム内でジェイトサリがまったく姿を現さなかったこと、「2000年1月1日までにクリアする者が出なければ」というオークション出品の条件が3ヵ月間早まっていることにも説明がつきます。
◆ビスケの参加も仕組まれていた?
ゴンとキルアに念の修業を指南したビスケは、「ブループラネット」という宝石目当てでグリードアイランドに参加していました。特殊な効果が付与されている他の宝石と違って「ブループラネット」だけは普通の宝石であり、まるでビスケを誘い出すために用意されたアイテムとも考えられます。
指定ポケットの100アイテムはいくつかのシリーズに分かれており、宝石シリーズは「ブループラネット」を含めて9種です。自分に降りかかる災厄を他人に渡す「闇のヒスイ」、巨万の富を得るかわりに一生一人で過ごすことになる「孤独なサファイヤ」など、このうち8種には特殊な効果があります。
しかし、「ブループラネット」は「唯一無二の青で輝く宝石。成分構成上、どの鉱物にも属さないので、宇宙からの贈り物という意味を込めてこの名がついた」という説明があるだけです。
「ブループラネット」だけ特殊な効果がなく、ただの宝石となっているのは不自然でしょう。そこでジンがグリードアイランドをクリアするとブループラネットが手に入るという情報を流して、ビスケがプレイするように誘導した疑惑が浮上します。
ゴンがゲームに行き詰まったり、ほかのプレイヤーに命を奪われたりしないようにするためには適切な指導をしてくれる師が必要です。実際にゴンはグリードアイランドを始めてから、すぐに2度死んでいた可能性があります。
1回目はボマーによってランダムに選ばれた爆破の犠牲者、2回目は格上の念能力者であるビノールトとの遭遇です。ボマーの爆破は運よく逃れますが、ビノールトについてはビスケと出会っていなければ確実にゴンたちは犠牲になっていました。
ビスケが希少な宝石を求めていることを知っていたジンが、「ブループラネット」をエサにしてゴンのための念の指南役としておびき寄せた可能性は十分あります。また、ゲームをクリアしたゴンがカイトに巡り合うように仕組んでいたのもジンでした。
さすがにキメラ=アントの王メルエムや直属護衛軍の強さは、ジンも予想外だったと思います。しかし、ジンは常にゴンが適切な師に巡り合えるように仕組んでいた親バカなのかもしれません。
◆ゴン以外のハンターがクリアした場合グリードアイランドはどうなっていた?
ゴンがハンターになる前に誰かがグリードアイランドをクリアする可能性もあったわけですが、そうなったらジンはグリードアイランドのサービスを終了していたのでしょうか。ジンが極度の親バカでゴンのためにグリードアイランドを作ったとしたなら、シレッとグリードアイランド2として再スタートさせていそうです。
ゴンがグリードアイランドをクリアしてから、ゲームが継続されているのかどうかは不明です。しかし、ハンター協会会長選挙では前述のジェイトサリに加えてリストやドゥーンたちゲームマスターも投票に来ていました。
そのため、現在はグリードアイランドはプレイできない状態である可能性が高いです。ジン自身も暗黒大陸に興味が移っており、ゴンがゲームをクリアしたことでグリードアイランドには一区切りつけたのではないかと考えられます。
ただ、ゴン以前にグリードアイランドをクリアする者が現れていたら、ゲームを続けていた可能性もあったでしょう。ジンが親バカでゴンを強くするためにグリードアイランドをプログラムしたのなら、ゲーム内容や報酬をアップデートしてグリードアイランド2と銘打ったゲームを発売するくらいのプロジェクトを準備していてもおかしくありません。
──普段は放任主義で子育てに無関心なように見えても、いざとなったら子供への愛情全開の行動を見せる親は多いです。型破りな超一流ハンターかつツンデレ親父のジンもやはり自分の子供はかわいくて、その気持ちがグリードアイランドに影響したのかもしれません。
〈文/諫山就〉
《諫山就》
アニメ・漫画・医療・金融に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。かつてはゲームプランナーとして『影牢II -Dark illusion-』などの開発に携わり、エンパワーヘルスケア株式会社にて医療コラムの執筆・構成・ディレクション業務に従事。サッカー・映画・グルメ・お笑いなども得意ジャンルで、現在YouTubeでコントシナリオも執筆中。X(旧Twitter)⇒@z0hJH0VTJP82488
※サムネイル画像:Amazonより 『「HUNTER×HUNTER」第32巻(出版社:集英社)』