※この記事にはTVアニメ・原作漫画『HUNTER×HUNTER』のネタバレが登場します。ご注意ください。
※本記事は漫画『HUNTER×HUNTER』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。
『HUNTER×HUNTER』の作中では何かと組む機会が多かったヒソカとイルミ。あくまでもビジネスライクな関係だった両者でしたが、ついに暗黒大陸編で命をかけて戦うことが明かされています。しかし、幻影旅団に入ったはずのイルミには不穏な動きがあり、本当にヒソカと敵対しているのか不審な点が多いです。
◆イルミの不審な点とは?
イルミの不審な点に関しては、SNS上などでも数多く指摘されています。
たとえば、イルミの一人称は今まで「オレ」だったのですが、第377話で幻影旅団の全体会議に参加した際は「ボク」となっていました。作中で一人称を「ボク」と言う人物は、やはりヒソカを思い起こします。
また、同じく全体会議でイルミが自己紹介する際、手の形が「ヒ」となっており、こちらもヒソカとの関係を匂わせていると疑われています。これらの不審点から、一時期はヒソカがイルミに化けているのではないかという説も流れていました。
さらに、第377話が収録されているコミックス第36巻の表紙にも意味深な仕掛けがあります。まず、カバーイラストは幻影旅団が初登場したコミックス第12巻とまったく同じ構図です。そして、既に亡くなっているパクノダ、コルトピ、シャルナークの場所には花が添えられています。
加えて、ウボォーギンの位置には代わりに入ったイルミが花を持って描かれているのです。つまり、イルミが持つ花は団員に手向ける花とも解釈でき、旅団を裏切ってヒソカと通じている可能性も考えられています。
◆「婚前契約」と「鬼ごっこ」の矛盾
しかし、本当にイルミがヒソカと通じているのかというと可能性はかなり低いでしょう。なぜなら、お互いが組んで旅団を潰すメリットが少ないからです。何より、ヒソカは団員とのバトルを楽しみたいのにイルミの協力を得たら元も子もありません。
一方で、イルミに不審な点があることに変わりありません。最も疑惑となるのが、イルミがヒソカと交わした「婚前契約(エンゲージメントリング)」。この内容は、イルミが旅団に加入することと標的がヒソカ自身であること、そしてヒソカが亡くなった場合、自動的に報酬がイルミの元に支払われることが契約されています。
イルミ曰く、いずれヒソカとは命の奪い合いに発展することを予測していたようで、彼にとっても念願だと言っています。また、ヒソカからしても、イルミを独自の採点で95点と高評価を付けているのでお互いにとってウィンウィンの契約だと考えられるでしょう。
しかし、両者にとって念願の対決のはずなのに、蓋を開けてみるとイルミは本気でヒソカを探しているのか微妙なのです。そう捉えられる根拠は大きく2つあります。
まず1つは、第377話でイルミがヒソカとの対決を「鬼ごっこ」と称していた点です。クロロに入団の自己紹介がてらヒソカの動向予測を求められた際、イルミは「鬼ごっこの最中だから分からない」と答えています。鬼ごっことは、言わずと知れた鬼役と逃げ役に別れる遊びのこと。つまり、対決ではなく片方が逃げている最中だとも捉えられるのです。
ちなみに鬼ごっこの場合、果たして逃げ役はヒソカなのか、イルミなのか……。ここでは後者の可能性が高いと考えられます。そこでつながってくるのが、根拠の2つ目となるカルトの能力です。
第170話でカルトの能力の1つに対象の索敵らしき能力があることが判明しています。事実、カルトはこの能力を使ってグリードアイランドにいる除念師・アベンガネを見つけています。つまり、カルトの能力を使えばヒソカの現在地は分かっている可能性が高いのです。そうなれば、必然的にイルミにもバレてしまうでしょう。
しかし、イルミはすべての階層を行き来できるV2(Very VIP)チケットを持っているにも関わらず、ヒソカのいる第1層には行かず第3層に留まっています。このことから、イルミが逃げ役でヒソカとのバトルを避けているとも捉えられるでしょう。つまり、彼の言動自体が「婚前契約(エンゲージメントリング)」の内容と根本から矛盾しているのです。
◆標的ヒソカに対するイルミの本気度は?
そもそもイルミは本当にヒソカを倒そうとしているのでしょうか? 結論からいうと、イルミの本気度はかなり高いと考えられます。なぜなら、イルミにはヒソカを倒す動機があるからです。
イルミにとって一番重要なことは、過去の発言からみてもキルアの成長、そしてゾルディック家の繁栄だと考えられます。ヒソカは第326話でも発言した通り、キルアに危害を加えるかもしれない最有力候補です。このことから、ヒソカを倒しておきたいのはイルミの本心でしょう。
しかし、先述の通り現在のところイルミは率先してヒソカをねらっていません。この理由は、恐らくクロロと同じでヒソカの強さを知っているからだと考えられます。イルミにとってもヒソカは強者であり、勝敗が分からない相手のはずです。
つまり、確実に勝つための手札を手に入れてから戦いたいと考えるのは自然でしょう。クロロはその手札としてカキンのお宝をねらっていますが、果たしてイルミはどんな手札をねらっているのでしょうか? それこそが、イルミの真の目的である「ナニカ」の入手だと推察します。
第344話でイルミは、ナニカの能力をその目で見ており「ナニカは是非とも欲しい。ナニカはオレのものだ」と決意していました。しかし現在、ナニカは器であるアルカとともにキルアについて行っています。
本来のイルミであればこの時点でキルアを追跡しそうですが、イルミはなぜか暗黒大陸行きのブラックホエール1号に乗船しているのです。これがイルミの計算であるなら、イルミがねらっているのはナニカの正体と考えられる5大厄災の1つ「ガス生命体アイ」なのではないでしょうか。つまり、イルミは暗黒大陸に渡り、新たな「ナニカ」を持ち帰ろうとしているのです。
ナニカはコミックス第33巻で暗黒大陸出身であることが明かされています。さらに、過去にジグ=ゾルディックが暗黒大陸にお忍びで渡航していることは明かされているので、イルミが「アイ」をナニカの誕生した経緯と結びつけたとしても不思議ではないでしょう。
つまり、ヒソカとの「婚前契約(エンゲージメントリング)」は本物で、イルミは旅団を隠れ蓑に暗黒大陸まで行き「ナニカ」を手に入れてからヒソカと対決しようと目論んでいるのではないでしょうか。
──イルミの目的が「ナニカ」の入手だった場合、幻影旅団とヒソカの戦いは案外、暗黒大陸上陸までもつれ込むかもしれません。仮に、イルミが自分専用の「ナニカ」を手に入れてしまったら、それこそ本人も言っていた通り「敵なし」の存在となるでしょう。
〈文/fuku_yoshi〉
《fuku_yoshi》
出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5
※サムネイル画像:株式会社BANDAI SPIRITS公式Webサイトより 『「HUNTER×HUNTER VIBRATION STARS-イルミ-」 (C)P98-24 (C)V・N・M』





