映画『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』がとんでもない上映に挑もうとしています。

 2月21日に公開となるこの映画は、日本では初めてとなる観客参加型の「インタラクティブ映画」として公開されます。果たしてどんな映画で、どんな参加の仕方をするのでしょうか。

◆映画館でラップバトルを完全再現!?  観客が勝敗を決める?

 『ヒプノシスマイク』シリーズといえば“音楽原作キャラクターラッププロジェクト”と公式が称している通り、音源をベースに多くのメディアミックス展開を広げている作品です。それぞれ個性の異なる男性ラッパーキャラクターが現在18人発表されており、それぞれが所属するチーム6つに分かれてラップで対決します。

 ラップバトルといえば、お互いにラップを披露してどちらのラップの方が良かったかを決めていくもの。一世を風靡した番組『フリースタイルダンジョン』で広く知られるようになりましたが、番組では審査員のジャッジによって決めていましたが、大会などの規定によっては観客の歓声の大きさによって決めるというケースも少なくありません。今回の映画『ヒプノシスマイク』はまさにその手法を取り入れた試み。

 映画の観客はスクリーンで繰り広げられたラップバトルを踏まえて、スマートフォンアプリを通じて勝敗を投票します。その結果はリアルタイムに集計され、投票数が多かった選択肢に沿って、映画のストーリーが変化していきます。つまり、上映回によっては全く異なるストーリーの映画が流れうる、“普通じゃない”映画なのです。

◆どういう仕組みになっているのか? 世界初じゃない理由

 上映形式だけを聞いてもいったいどうやっているのかが気になるところですが、実はそもそもこのシステム自体は存在しており、映画『ヒプノシスマイク』はそれに沿って製作されているような状態です。

 前述の通り、投票にはスマートフォンアプリが必要なのですが、そのアプリというのが「CtrlMovie」という専用のアプリです。観客はこのアプリを通して、スクリーンに表示されているQRコードをスキャンすることで“映画に参加”できます。

 このアプリは映画『ヒプノシスマイク』に限定されたものではなく、それ以外にも対応している映画が存在します。それが2016年に製作された映画『Late Shift』です。

 この映画では、学生である主人公マットの遭遇するできごとをなぞりながら、所々で観客が主人公の運命を決め、それによりストーリーが変化していくという内容です。エンディングは7つも用意されており、本作ももちろん一度の鑑賞ではすべてのストーリーを追うことはできません。

 この『Late Shift』は海外の映画祭などでも上映されています。そのため、今回の映画『ヒプノシスマイク』の観客参加型インタラクティブ映画という形式が、世界初ではなく“日本初”という表記になっているわけです。

 ちなみにこの映画『Late Shift』は既にさまざまな媒体に向けて配信されているので、自宅などで“体験”できます。

◆果たして満足いく? 投票システムはどう作用していくのか

 とはいえ、今回の映画『ヒプノシスマイク』のようなキーとなるキャラクターが多く登場する作品の興行を行うことに関しては、世界初と言っても過言ではないでしょう。それだけにいくつか興行には心配な面もあります。

 たとえば投票の偏りなどにより、どの上映回へ行っても同じストーリーばかり観せられてしまう可能性があります。前回とは違ったストーリーを楽しみたいと思って2回、3回と足を運んでも、必ず違う内容が観られるとは限らない不安があります。しかも自分の強く望んでいる結果があればなおのこと。思った通りの勝敗にはならず悔しい思いをするという例も大いにあるでしょう。

 こうなってくると、応援しているファン同士で集まって結託して特定の上映回に集まったり、あえて遠方の映画館に足を運んだりという人も出てくるかもしれません。それでも必ずしも望んだ勝敗にならないことは念頭に置いておく必要があります。

 場合によっては限られた人しか観られないストーリーや、もしかするとどの劇場でもお目にかかれなかったストーリーなんてものも生まれてしまうかもしれません。

 地域や特定の映画館によっては客層の偏りによって、このストーリーになりやすい……、なんて傾も生まれてくるかもしれません。そういった情報交換も活発化することも予想できます。上映後の口コミの動向も気になる仕組みといえるでしょう。

 前代未聞のインタラクティブ映画興行。果たしてどんな結果を生むのか。作品内容だけでなく、上映後の動向にも注目です。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『東宝MOVIEチャンネル』より


映画 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-
©ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Movie

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