<この記事には『呪術廻戦』の最終話までのネタバレが含まれます。ご注意ください。>
一躍『週刊少年ジャンプ』の看板作品として人気作品となった『呪術廻戦』が、9月30日に最終回を迎えました。死滅回游編の終盤から最終回へかけて怒涛の展開が続きましたが、本作を読み返してみると序盤に伏線が張られていて驚く場面があります。どのような描写が伏線になっていたのでしょうか?
◆百葉箱に込められた意味とは?
序盤に張られていた伏線の中で欠かせないのが、第1話で特級呪物である宿儺の指が保管されていた百葉箱です。当初、なぜ宿儺の指が百葉箱に保管されていたのか疑問の声が上がっていました。しかし、最終話まで読むと百葉箱に重要な役割があったことに気づかされます。
この漫画は虎杖らオカルト研究会(通称、オカ研)が百葉箱に保管されていた宿儺の指を拾ったことから物語が始まりました。その後、虎杖は呪霊に襲われるオカ研や伏黒を助けるため、宿儺の指を体内に取り込み、それをきっかけに呪術師への道を歩み始めます。そして、迎えた最終回では宿儺との戦いに決着を迎え、宿儺の指は再び百葉箱の中へ保管され、ひとりでに百葉箱の扉が開いたところで終わりました。
物語が始まったきっかけでもある百葉箱で締められるのは、感慨深い演出です。しかし一方で、第236話「南へ」で語られた方角の意味を思い返すと、この終わり方には別の意味を考察できます。
第236話では七海が1級術師の冥冥におすすめの移住先を聞いた際、「新しい自分になりたいなら北へ 昔の自分に戻りたいなら南へ行きなさい」と、教えてもらったと語っていました。七海は迷わず南国を選んだと言っており、五条もまたタイトルから南へ向かったと推測されます。
一方、百葉箱は直射日光が入らないように扉の面が北を向くように置かれていることから、宿儺は北へ向かったと考えられるでしょう。最終回で宿儺は生前に違う生き方を選べる機会があったことを振り返り、次があれば生き方を変えてみるのもいいかもしれないと話していました。このことから宿儺が生き方を変えて新しい自分を目指したことを、方角に関係する百葉箱で暗喩しているのかもしれません。
◆虎杖の能力にも序盤に伏線が張られていた
虎杖の能力についても序盤で伏線が張られ、人外魔境新宿決戦の終盤で伏線が回収されています。
第14話で虎杖が五条に特訓をつけてもらっていた際、五条が「そのうち君(虎杖)の体には宿儺の術式が刻まれる」と考えていました。この伏線は多くのファンが注目し、いつ伏線が回収されるのかと注目を浴びていましたが、一向に回収されないまま物語が進んでいきます。そして、ついに第257話で虎杖が黒閃で覚醒状態になったことで、彼の肉体へ刻まれた宿儺の術式「御廚子」が使えるようになりました。
また、ほかにも序盤で五条が予言していた虎杖の能力に関する伏線があります。先ほどの伏線と同様に虎杖が五条と特訓をしていたとき、虎杖特有の技「逕庭拳」を高く評価したことです。
逕庭拳は虎杖の身体能力の高さゆえに生まれた技で、通常ならば遅れることがない呪力が体の動きについていけず、一度の打撃で二度の衝撃が生まれます。逕庭拳は第20話で初めて登場し、五条は逕庭拳を高く評価して「大きな武器になる」とも言っていました。しかし、その後に呪術高専京都校の東堂が「特級相手には通用しない」と酷評を下し、ファンの間でも弱いとの認識が広まってしまいます。
そんな逕庭拳ですが、人外魔境新宿決戦の終盤において決着をつけるきっかけとなり、序盤で下した五条の評価は正しかったと見直されました。
そもそも、東堂が逕庭拳に酷評をくだしたのも、逕庭拳だけでは特級相手に通じないという意味で、逕庭拳が弱いということではありません。
逕庭拳は通常の拳と使い分けることで真価を発揮し、攻撃を受けるまで逕庭拳なのか通常の拳なのか分からないという強みがあります。当初は虎杖が未熟ゆえに酷評されましたが、使い手が成長すれば強力な武器となるポテンシャルの高い技だったといえるでしょう。
◆宿儺が伏黒へ受肉するのは最初から決まっていた?
第212話で宿儺は受肉先を虎杖から伏黒へ変え、多くの読者を驚かせました。しかし、この伏線は実は第1話から張られていたのです。
記念すべき第1話の見開きカラーは虎杖・伏黒・釘崎・五条の4人が描かれており、伏黒は自身の術式「十種影法術」を使ってカエルの式神「蝦蟇」を2匹召喚しています。実は、この蝦蟇のうち1匹に宿儺の顔の文様と同じものが描かれていたのです。
また、同じように第58話の扉絵では虎杖の首に真人の手が、伏黒の首に宿儺の手が回されています。当時は不穏なイラストながらも、お互いに因縁がある相手や執着している相手へ首に手を回していると解釈されていました。しかし、宿儺が伏黒へ受肉先を変えたことを考えると、この扉絵も伏線のひとつだったのでしょう。
ほかにも、213話のタイトルが「呪胎戴天-伍-」であることからも、宿儺が伏黒へ受肉するのは最初から決まっていたように思えます。
もともと「呪胎戴天」は序盤で描かれたエピソードで、突如少年院に呪胎が発生したため1年生の3人が生存者の確認と救出へ向かう話です。
タイトルの呪胎戴天の「戴天」には「天をいただくこと。この世に生きていること」という意味があり、少年院に発生した呪胎が特級呪霊となり、1年生の前に立ちはだかることをさしていると思われました。
しかし、213話のタイトルが「呪胎戴天-伍-」だったことから、呪胎戴天は少年院の特級呪霊だけでなく、伏黒へ受肉した宿儺もさしていることが分かります。この呪胎戴天が5年越しに続いていた展開には、多くのファンが驚くと同時に予想できなかったと絶賛しています。
──このように『呪術廻戦』には序盤から多くの伏線が張られており、見返すと思いがけない発見があります。最終回を迎えたのを機に、また最初から振り返ってみるのもいいかもしれません。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
《林星来》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。葬儀会社やベンチャー企業での社会経験を生かしたビジネス系の記事や、FP2級を保有し金融の知識を生かしたマネー系記事を執筆。また、人には言えない恋愛経験も多く持っており、恋愛系の記事を執筆することもある。
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