<この記事には『呪術廻戦≡(モジュロ)』のネタバレが登場します。ご注意ください。>
乙骨兄妹とともに主役の1人であるのが宇宙人のマルル・ヴァル・ヴル・イェルヴリ、通称・マルです。第1話では呪術師として圧倒的な実力の片鱗は描かれるものの、術式はいまだに謎のまま……。そんなマルの術式には、第3の眼の能力が密接に関わっていると考えられます。
◆描写から推測できる術式の特性
第4話時点で、マルが術式を使用したと思われるシーンは全部で2回です。
1回目は第1話で誘拐された乙骨真剣を捜索するシーン。2回目も第1話で誘拐犯の呪詛師を倒したシーン。
まず1回目で術式を発動した際、マルは乙骨憂花の手を握り、「憂花と世界を私の術式で“調和”する」と言っています。そして術式が発動後、対象者である憂花と釣り合いのとれる人間、乙骨真剣を見つけています。これらの描写から、何かしら探索系に応用できる術式だと捉えられます。
ここで注目したいのは、マルが術式を発動する前にわざわざ憂花の手を握っている点です。つまり、発動条件に対象の肉体に触れる必要があると考えられます。離れた場所を特定する能力に対象の肉体を使用するとしたら、釘崎野薔薇の「芻霊呪法」の発動条件と似ているかもしれません。
さらにマルは、憂花と真剣との血のつながりも確認していました。その結果、単純な呪力や力量で釣り合いがとれる者ではなく、ピンポイントに兄の真剣を見つけ出しています。このことから、おそらくもっと細かい「近親者特有の波長」などといった複合的な要因から探索しているのでしょう。
そして、2回目に術式を発動した呪詛師を倒したシーン。このとき、呪詛師はなすすべもなく意識を失っています。ここで注目したいのは、呪詛師側は一切の外傷がなく意識を取り戻した後もダメージが残ってなさそうだった点です。
実は本編でも、これと非常に似た攻撃方法がありました。それが五条悟の領域展開「無量空処」。無量空処は、相手に無限回の知覚と伝達を強制する術式効果で、簡単にいうと相手に膨大な情報量を流し込み、何もできなくさせる能力です。
この結果、攻撃を受けた対象は脳の処理が追い付かず気絶してしまいます。マルが言う通り、対象の人物と世界を調和できる術式なら、悪意を持てば世界を構成する情報を一個人に流し込むこともできるのではないでしょうか?
つまり、マルの術式は世界の情報を個人に流し込む無量空処のような攻撃もできるし、反対に世界の情報から個人を見つけ出す探索系にも応用できるものだと推察できます。
◆第3の眼の能力とは?
そして最も注目したいのは、術式発動時にマルが第3の眼を開眼させていた点でしょう。『呪術廻戦』で特殊な眼といえば、やはり五条悟の「六眼」を思い浮かべます。六眼は、生得術式や呪力を視覚情報として詳細に認識できます。
マルの第3の眼が六眼のように呪力や術式を見ただけで認知できるなら、マルの探知できる能力ともつながってきます。そうなると、五条悟の「無下限呪術」に六眼が必須だったように、マルの「術式」にも第3の眼の能力が必須だと考えられるでしょう。
しかし、六眼は天元や星漿体と因果でつながっているうえ、五条家の人間のみに発現する特殊体質です。つまり、「第3の眼=六眼」ではなく、六眼とは違った能力を秘めていると推測できます。それではいったい何を見るための「眼」なのでしょうか……?
先ほど、マルの術式は芻霊呪法と発動条件が似ていると言いました。そして芻霊呪法は、肉体と魂の両方に効果を及ぼします。マルの術式もその両方に影響を及ぼせると考えた場合、第3の眼と術式が大きく関わっているなら、やはり「魂」を視ると考えるのが自然でしょう。
本編では、「魂」の輪郭を知覚できたのは、主人公の虎杖悠仁や特級呪霊の真人、そして両面宿儺など、ごくわずかな術師や呪霊に限られていました。仮に、マルが魂そのものを視覚として見られるとしたら、強力な特殊能力になります。
余談ですが第3の眼は宗教的にいうと、「五感を越えた能力の目覚め」を表すことが多く、たとえば仏教では「物事の本質」や「真実」を見抜いたり、見通したりする「智慧の眼」ともされているそうです。物事の本質を見抜けるなら、やはり肉体の内に存在する「魂」を知覚できても不思議ではありません。
◆双子で術式を共有できるのはなぜ?
第3話でマルの術式は双子の弟・クロスと共有していることが明かされています。実は「術式の共有」は本編を通しても例がなく、マルの術式を考える上で最も異質な点といえるでしょう。
まず、マルとクロスが双子であることが明かされていますが、双子といえば本編で判明した通り「呪術では同一人物」としてみなされます。たとえば、禪院真希と双子の妹・真依の場合、真依が呪力を持って生まれたことで、真希が完全な天与呪縛のフィジカルギフテッドになりきれずにいました。
このことから2人で1つの「縛り」が共有されていたことが分かります。つまり、本来魂は「1人」につき「1つずつ」持って生まれてきますが、双子の場合「2人」で「1つ」の魂を分け合っていると解釈できるのです。
しかし、そんな「魂」を共有する双子でも「術式」を共有することはありません。実際、真依は構築術式を持っていましたが真希は術式を持っていませんでした。そもそも生得術式は、本編第230話での宿儺の発言から右脳の前頭前野に刻まれています。
つまり、呪術的に同一人物だからといって、肉体が同じでないなら術式を共有することはないハズ。仮に術式を共有できるのであれば、脳の構造や肉体的な構造が完全に一致しない限りあり得ないことになります。果たして魂を共有した上でまったく同じ肉体を持つ双子など、存在可能なのでしょうか?
おそらく、ここで活きてくるのが「宇宙人」という設定だと推察します。宇宙人だから、地球人と身体の作りが違う……というご都合的な解釈もできますが、ここで注目したいのは「宇宙人の技術力」です。
マルたちシムリア星人は、星間飛行できるほどの高度な科学技術を有しています。そして、高度な科学技術が必要で、SFを題材した物語でよく登場する同一人物を生み出す技術があります。
それが「クローン技術」です。もしかしたらマルとクロスは、私たちが知っている普通の双子ではなく、クローン技術で産み出された完全同一個体の人間なのかもしれません。
──第2話でマルはクロスに対して、乙骨兄妹が善人であることについて「もう分かっているはずだ」と語っていました。もしかしたら2人が共有しているのは「術式」だけではなく「体験」や「感情」すべてかもしれず、今後の動向に注目です。
〈文/fuku_yoshi〉
《fuku_yoshi》
出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5
※サムネイル画像:『「呪術廻戦≡」キービジュアル (C)芥見下々・岩崎優次/集英社』