『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』といった『週刊少年ジャンプ』発の作品が特大ヒットを果たしている中、今このタイミングこそと言わんばかりにジャンプアニメのもう一つの旬の作品『呪術廻戦』が年末にかけて映画館での興行を繰り広げようとしています。果たしてこのジャンプアニメブームの流れに乗ることはできるのでしょうか。
◆興行ラッシュ! TVアニメ新シーズンに向けて二大企画を実施
タイミングとしてはジャンプアニメが大活躍をしている真っ只中ではありますが、年末にかけて『呪術廻戦』は映画館での興行が盛り上がっています。
この週末の10月17日(金)からは『劇場版 呪術廻戦0』の大規模な“復活上映”が実施されます。
<画像引用元:『「劇場版 呪術廻戦 0」復活上映 キービジュアル (C) 2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (C)芥見下々/集英社』>
ただのリバイバル上映ではなく、今回の復活上映に合わせてわざわざキービジュアルを新たに用意していたり、そのイラストを採用した復活上映限定の入場者プレゼントが用意されていたりと力の入った企画となっています。
しかも10月24日(金)には北海道・東京・愛知・大阪・福岡の5大都市を対象とした発声可能応援上映も開催され、専用のガイドムービーを新たに用意したりとその注力ぶりが感じられる企画も控えています。本作は2021年末の公開作でまだコロナ禍を感じさせる時期だったことからも、改めての大々的な応援上映の実施となりました。
『呪術廻戦』の興行は実はまだこれが“前座”と言わんばかりの状態で11月7日(金)からは劇場版『呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回遊 先行上映」』の公開が始まります。
本作は2023年に放送されたTVアニメ『呪術廻戦』の「渋谷事変」編を劇場公開に合わせた特別編集版としてまとめ、さらに来年2026年1月から放送予定のTVアニメ『呪術廻戦 死滅回遊 前編』の第1話、第2話をあわせて劇場公開するという試みです。
10月、11月と立て続けに映画館で『呪術廻戦』を楽しめる企画を設けながら、新年早々に新たなTVシリーズを展開していくという、それ自体が新シーズンのPRとなるような体制となっています。
◆実はそもそも映画館での興行に積極的だった『呪術廻戦』
あまりにもジャンプアニメのブームの流れに乗ったような時期での興行となりましたが、そもそも『呪術廻戦』はアニメシリーズを積極的に映画館の興行に入れ込んでいく作品で、今回のリバイバル上映や特別編集版の公開なども突発的な企画というよりも、順序立てて実施されていった計画的なものでした。
今年の5月には劇場版総集編 『呪術廻戦 懐玉・玉折』が公開され、こちらもTVシリーズの総集編的な特別編集版ながら、新規カットであったり複数の来場者特典であったりとこの年末の興行と同様の相当な規模の興行を実施していました。
渋谷事変編に関してもそもそもソフト化の際にはBlu-ray&DVD発売記念のセレクションイベント上映を実施していたりと、実はTVアニメでの放送とまもなく公開の特別編集版との間にも一部のエピソードは既に一度映画館での上映を果たしていたりもしました。
その際にも宿儺と摩虎羅の戦いの映像などは放送時からかなりのブラッシュアップが施されていて話題となっていましたが、今回の特別編集版でもそれを体験できるという意味では、イベント上映に参加できなかった人にとっても注目の内容になっています。
映画館での興行をそもそも存分に活用していた作品である『呪術廻戦』が、『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』といった“仲間たち”が大活躍している中での公開となったのはおそらく偶然。とはいえ「渡りに船」と言わんばかりにそれらを観に来た観客の多くにも、年末の企画はかなり訴求できたと言えます。完全な新作劇場版というわけではないながらも、『呪術廻戦』が年末にかけて次なる大ヒット作となる可能性は全然あり得るでしょう。
それでなくとも新年から放送されるTVアニメの新シリーズの宣伝としては、もはやタイミングとしては既に大成功と言わんばかりの状態。本当の『呪術廻戦』イヤーは来るべき2026年が本番と言えるのかもしれません。我々は既に作品自体の“領域”に足を踏み入れている状態なのでしょう。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:『「劇場版 呪術廻戦 0」復活上映 キービジュアル (C) 2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (C)芥見下々/集英社』