※この記事にはTVアニメ・原作漫画『呪術廻戦』のネタバレが含まれます。ご注意ください。
※本記事はTVアニメ・原作漫画『呪術廻戦』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。
「失礼だな 純愛だよ」。特級過呪怨霊・祈本里香を生み出してしまった呪いの正体を、乙骨憂太はそう結論づけました。しかし、彼の呪いの根源が「純愛」だけではなかったとしたら。
乙骨自身が語った、五条悟を超えるほどの呪力。その源泉は、彼が生まれながらに背負う“血の宿命”に隠されているのかもしれません。
◆「五条先生よりも多い」──規格外の呪力と特級過呪怨霊の誕生
乙骨という男の異常性を語るうえで、まず揺るぎない事実として押さえておかなければならないのが彼の持つ底なしの「呪力量」です。
虎杖悠仁の死刑執行を命じられた乙骨が虎杖と対峙した激戦のさなかで、彼は自らの力についてはっきりと口にしました。「五条先生より多いんだよ呪力量」。
現代最強の呪術師とされる五条を、純粋な呪力の総量において自分は上回っている。これは、彼の強さの根源がたんなる技術や才能ではなく生まれ持ったエネルギーの量そのものが規格外であることを示しているといえます。
では、なぜそんな彼が物語の序盤ではただの気弱な少年に見えたのでしょうか。そのすべての始まりは、最愛の少女、祈本里香の死にあります。『劇場版 呪術廻戦 0』のクライマックスで明かされたように、彼女をこの世ならざる「特級過呪怨霊」へと変えてしまったのは、里香自身の怨念ではありませんでした。それは、乙骨が彼女の死を拒絶し、「ずっと一緒にいたい」と願った「愛」という名のあまりにも強すぎる“呪い”だったのです。
しかし、ここで一つの大きな疑問が生まれます。なぜ、たった一人の少年の純粋な想いが夏油傑ですら喉から手が出るほど欲しがる「特級」という、規格外の呪いを生み出してしまったのでしょうか。ただ「愛が強かったから」というだけでは、その異常なエネルギー量は説明できないといえます。
乙骨の莫大な呪力量と、彼が生み出してしまった特級過呪怨霊。この二つの常識から外れた現象は、彼の出自、すなわち“血筋”にそのすべての答えが隠されていることを強く示唆しているのかもしれません。
◆「僕の親戚」──菅原道真の血が起こした化学反応
乙骨が生み出した、規格外の呪い。その謎を解くカギは、彼を呪術高専にスカウトした張本人、五条の言葉の中に隠されているのかもしれません。
五条は『劇場版 呪術廻戦 0』のクライマックスで乙骨の身の上をこう語っています。「君 菅原道真の子孫だった 超遠縁だけど僕の親戚!!」。菅原道真とは、かつて実在した「日本三大怨霊」の一人。つまり乙骨は、生まれながらにして五条と同じ呪術界でも最高峰のサラブレッドの血を引いていたのです。
この事実こそがすべての謎を解き明かします。乙骨の五条を超えるほどの底なしの呪力は、この「菅原道真の血筋」に由来するものである可能性が高いと考えられます。彼は自覚がなかっただけで、元々呪術師としてとてつもない才能をその身に秘めていたといえるでしょう。
そして、その膨大な眠っていた力が一つの出来事をきっかけに最悪の形で暴走します。それが里香の死でした。
最愛の人を失いたくないという、純粋でしかし強すぎる「愛」と「執着」。この強烈な負の感情が引き金となり、彼の内に眠っていた規格外の呪力が爆発したのではないでしょうか。そして、そのエネルギーが里香の魂をこの世に縛り付け、特級過呪怨霊という人の手には負えない“怪物”を創り上げてしまったと考えられるでしょう。
特級過呪怨霊・里香の強さとは、彼女自身の怨念の強さなどではなく、乙骨自身が持つ五条超えの呪力量そのものをそのまま映し出した“鏡”のようなものだったのかもしれません。
乙骨が「五条悟に次ぐ現代の異能」と呼ばれる理由。それは「菅原道真の血筋」という“素質”と「里香の死」という“きっかけ”が運命のいたずらによって出会ってしまったからといえます。彼の呪いは血と愛が引き起こした奇跡であり、そして悲劇でもある“化学反応”の産物だったのではないでしょうか。
◆「純愛」の先にあるもの──呪いを解いた男が結んだ新たな契約
自らが里香を呪っていたという残酷な真実。しかし、夏油傑との死闘の中で乙骨はその真実を受け入れ、見事呪いを解くことに成功します。
では、呪いの源泉であった「底なしの呪力」と里香を失い、彼は弱くなってしまったのでしょうか。一見するとその通りに見えますが、実際彼は一度4級術師にまで降格しており、虎杖との戦闘中には「僕に呪力切れはあっても先生にはないしね」と、自らの限界を認める発言もしています。これは、『劇場版 呪術廻戦 0』で描かれた無限に呪力が湧き出る彼とは明らかに矛盾しているといえます。
しかし、これは弱体化などではなく、彼が真の“特級術師”へと生まれ変わった何よりの証なのかもしれません。
乙骨は呪いを解いたのち、里香が遺してくれた力を再び行使するために、自らの「底なしの呪力」を“代償”として捧げ、式神としての「リカ」と新たな“縛り”を結び直したのではないでしょうか。
つまり、現在の彼は『劇場版 呪術廻戦 0』のときのように無限の力に振り回されるのではありません。その代わり、「リカ」という強力な式神と、その中に蓄えられた呪力を5分間という時間制限の中で自らの意志で計画的に使用するより洗練された戦闘スタイルを手に入れたと考えられます。
五条は、乙骨に「僕と並ぶ術師になる」と大きな期待を寄せていました。それは、彼が同じ血筋であることだけでなく、この「一度すべてを失い、そして再び自らの意志で立ち上がった」経験こそが彼を本当の強さへと導くと見抜いていたからなのかもしれません。
呪いを解いた乙骨。彼は無限の力を手放すという“代償”と引き換えに愛する人が遺してくれた力を自らの意志で制御する、真の“特級術師”へと成長したと考えられます。
菅原道真の「血」と、祈本里香の「愛」、そして一度力を失った「経験」。この三つを受け継いだ彼こそが五条の意志を継ぎ、この呪術界の未来を担う唯一の希望なのかもしれません。
──乙骨の五条超えの呪力。その源泉は、菅原道真の子孫という“血の宿命”にあった可能性が高いです。そして、その力が「純愛」を起爆剤に暴走し、里香を「特級過呪怨霊」へと変えてしまったといえます。彼の強さは、血と愛が起こした奇跡であり悲劇の産物だといえるでしょう。
しかし、呪いを解き、一度は無限の力を手放した彼は愛する人が遺した力を自らの意志で制御する、真の“特級術師”へと成長したのです。五条亡き今、呪術界の未来はこの心優しき“異能”の双肩にかかっているのかもしれません。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
※サムネイル画像:TVアニメ『呪術廻戦』公式サイトより 『TVアニメ「呪術廻戦」第49話 場面写真 (C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会』



