11月8日から公開が始まった劇場版『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』は、タイトルにもあるように“仮面ライダースカル”という『仮面ライダーW(ダブル)』シリーズの仮面ライダーが登場するアニメーション映画となっていますが、仮面ライダースカルは、“特別”の意味がけっこう強いヒーローとなっています。

◆仮面ライダースカルとは何者なのか?

⇒写真をもっと見る

 『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』はもともと2022年に放送されたTVアニメ『風都探偵』シリーズに連なる、前日譚を描いた新作アニメーション映画です。

 この映画の元をたどると2017年より連載が始まった同名漫画が原作にあり、さらに元をたどれば2009年に放送された特撮TVドラマシリーズ『仮面ライダーW』という作品がベースにあります。

 この『仮面ライダーW』は鳴海探偵事務所に所属する主人公の左翔太郎とフィリップのコンビが活躍する物語なのですが、そんな探偵事務所の初代所長である鳴海荘吉が変身した姿が仮面ライダースカルです。

 ドクロをモチーフとした頭部に、荘吉が変身前から身につけていた白いハットとマフラーを付けた異色の見た目をしたライダーで、黒と白を基調とした大人なデザインは、一見すると正義の味方なのかどうか分からないなど、その特徴を挙げただけでも“特別”な存在といえるかもしれません。

 しかしここでいう“特別”さとはドクロモチーフのヒーローという点で仮面ライダー史……ひいては仮面ライダーの原作者である石ノ森章太郎先生による仮面ライダーの創出にもつながる意味を持ったキャラクターとなっていきます。

◆バッタをモチーフとした仮面ライダーが生まれるまで

 仮面ライダーといえば、もともとはバッタをモチーフにしたヒーローでしたが、実はそのデザインに行き着くまでに一度、ドクロをモチーフにしたデザインを考案していたと知られています。

 一番最初のドラマシリーズ『仮面ライダー』はテレビ局や東映が新ヒーローの原作者として、『サイボーグ009』シリーズで実績を残していた漫画家の石ノ森章太郎に依頼したことで生まれました。

 バイクに乗るといったコンセプトこそ決まっていたのですが、デザインは決まっておらず、そこから石ノ森先生はデザイン案をいくつか出していくわけです。そんなデザイン案の中の一案として登場したのが骸骨を模したデザインのマスクをした『スカルマン』でした。

『スカルマン』とはもともと1970年に石ノ森先生が読み切り漫画として発表した作品。タイトルにもなっている“スカルマン”をテーマにした作品で、そのデザインを新ヒーローに活かそうという考えはあったのですが、既存作品の流用であったり、モチーフがドクロでは営業の際に問題があるとされボツとなりました。

 そんな流れから、ドクロのビジュアルと類似点が見られたバッタの顔面を生かした、最初の『仮面ライダー』が生まれていくのですが、まさに仮面ライダー誕生前夜にその場にいたのはドクロをモチーフにした仮面のヒーローだったのです。

 まさに前日譚で活躍するヒーローとしてドクロのデザインが用いられることは、仮面ライダーというシリーズにとって原点回帰を感じさせる特別な意味が生じてくるといえるでしょう。

◆ドクロのヒーローの系譜まで持った仮面ライダースカル

 仮面ライダースカルというキャラクターが『スカルマン』の系譜にあるわけですが、そう考えると仮面ライダースカルは仮面ライダーの系譜だけでなく、“ドクロ”モチーフのキャラクターの系譜にも連なっていると分かります。

 当時こそ企画段階でドラマ化の実現が叶わなかった『スカルマン』ですが、実は『スカルマン』のようにドクロをモチーフにした頭部のヒーロー作品は1970年時点でも既に存在しました。それが『黄金バット』です。

画像引用元:Amazon.co.jpより

<画像引用元:Amazon.co.jpより>

 黄金のドクロの顔に黒いマントを纏った、今見ても斬新すぎるヒーロー。まさに仮面ライダー放送前の1960年代後半にTVアニメシリーズが制作されたり、それ以前には実写版が制作されています。その歴史を辿ると1930年代の紙芝居時代に遡るとされ、スーパーヒーロー物としても最古参に類するキャラクターです。

 黄金バットの存在を思うとドクロをモチーフにした『スカルマン』もデザインとしてアリではないかと思う一方、『黄金バット』のTVアニメなどが放送されてから間もないタイミングで似たデザインのヒーローを売り出すというのも気が引けるというのは想像できます。

画像引用元:Amazon.co.jpより

<画像引用元:Amazon.co.jpより>

 そんな『スカルマン』も時を経て、2007年にTVアニメーション『THE SKULLMAN』として映像化を果たしています。ドクロフェイスのヒーローもまた、仮面ライダーとは別のルートで引き継がれ映像化を果たしています。

 そういう意味でも、今回特撮TVドラマでなくアニメーションシリーズとして降臨する仮面ライダースカルは、ドクロモチーフのヒーローの系譜の現在地を走っている一人なのです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。Twitter⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『仮面ライダー公式チャンネル』より


劇場版「風都探偵 仮面ライダースカルの肖像」公式サイト

©2024「風都探偵」製作委員会

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.