登場人物の多くが実在の人物をモデルとしている『ゴールデンカムイ』。土方歳三や永倉新八はもちろん、白石由竹は「昭和の脱獄王」の異名で知られる白鳥由栄、牛山辰馬は「不敗の牛島」と呼ばれた柔道家・牛島辰熊など、挙げればキリがありません。そんな中で主人公・杉元佐一にも、モデルとなった人物がいるそうです。
◆いつか漫画にしたいと願った曽祖父の生き様
作者の野田サトル先生が、2014年9月に自身のブログ「野田サトルのブログ」で明かしたのは、主人公・杉元佐一の裏話でした。実は杉元のモデルとなったのは、野田先生の曽祖父である「杉本佐一」さんだそうです。
作中の杉元は第日本帝国陸軍「第一師団」に所属していましたが、杉本さんも屯田兵で、「第七師団」の歩兵27連隊乗馬隊に配属されていたといいます。そして杉元と同じく日露戦争に出兵し、最大の激戦地であったあの203高地に参加していたそうです。
ブログによると、あるとき杉本さんのいた500名程度の大隊が約2000人のロシア兵に包囲されてしまいました。絶体絶命の状況で、援軍を呼ぶ任務を任されたのが、杉本さんを含めた2人の兵士だったそうです。
命じた上官も「2人とも助からんだろう」と諦めていたというので、その窮状は察して余りあります。実際、杉本さんは何発も耳元で弾が通り抜ける音が聞こえたそうです。しかし、奇跡的なことに2人にも乗っている馬にも弾は当たらなかったといいます。
こうして杉本さんたちは4000人の援軍を連れてくることに成功。援軍の多さを見たロシア軍が撤退し、大隊は一人の死者も出さなかったそうです。野田先生は、もしかしたらこのエピソードから、「不死身」の着想を得たのではないでしょうか。
そして野田先生は、「いつかこの話を漫画で描きたい」と思ったそうです。これについては編集担当の大熊さんも、「先生はいつか曽祖父をモデルにした主人公を描きたい」という欲求を持たれていたと明かしています。
──余談ですが野田先生は、杉元と曽祖父の杉本さんは「まったくの別人」だと考えていると明かしています。杉本さんは203高地での功績から「金鵄勲章」を賜ったそうです。一方、作中の杉元は第1話で上官をぶっ飛ばして金鵄勲章をもらい損ねたと語っています。このことからも、野田先生は明確に2人が違う人物だと線引きしていたことが分かるでしょう。
〈文/fuku_yoshi〉
《fuku_yoshi》
出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5
※サムネイル画像:Amazonより 『「ゴールデンカムイ」第1巻(出版社:集英社)』



