<この記事にはTVアニメ、映画、原作漫画、『ゴールデンカムイ』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>
2022年4月の連載終了時に、ほとんどの伏線が回収された『ゴールデンカムイ』ですが、明らかになっていない謎もあり、ファンの間ではその謎に対してさまざまな考察がなされています。
◆悪のカリスマ、鶴見中尉は生きていた?
第七師団のカリスマ、鶴見中尉は杉元との一騎打ちの末に胸を撃たれ、その後、杉元とともに海に落ちてしまいましたが、遺体も特徴的な額宛ても見つけらず、生死不明となりました。
鶴見中尉は、爆撃によって前頭葉を欠けても生きていました。そんな彼は、「不死身の杉元」と同じく不死身といえるのではないでしょうか。鶴見中尉が胸を撃たれているとはいえ、杉元が生きている状況で海に落ちて死んだとは考えにくいです。
また『ゴールデンカムイ』では、キャラクターが死亡したときは、死亡シーンが明確に描かれていました。鶴見中尉が「生死不明」となっているのは、実は生きているからと考えられます。
さらに、単行本31巻で加筆されたマッカーサーの写真には、その背後に怪しい男性が映っています。
深く帽子をかぶって、目元を隠し、白髪になっていますが、よく見ると帽子からは額宛てのようなものが見え、特徴的な髭も見られたことから、写真の男こそ鶴見中尉だろうとファンの間では噂されています。
生き残った鶴見中尉ですが、なぜマッカーサーの写真に写り込んでいたかというと、彼が北海道に眠る金塊を餌に、裏でマッカーサーを動かしていたのかもしれません。
第二次世界大戦時、北海道はソ連からの侵攻の可能性がありました。
それを阻止すべく、鶴見中尉がアメリカのマッカーサーに対し「北海道には大量の金塊があるのに、ソ連に渡していいのか?」というように、アイヌのコインをちらつかせながら進言したと考えられます。
大統領選挙などを視野に入れていたと思われるマッカーサーにとって、金はいくらあっても困りません。
結果、アメリカの助力もあって、北海道はソ連に侵攻されることはありませんでした。
もしこの考察の通りならば鶴見中尉は間接的に北海道を守ったことになり、ひいては祖国・日本を守ったことになります。悪者のように描かれた鶴見中尉でしたが、日本への愛は本物だったのかもしれません。
◆脱獄王・白石の一人勝ち? 大量の金塊の行方は?
金塊争奪戦後、白石は杉元たちと一緒に東京を訪れた際、何も告げずにどこかへ消えてしまいました。
悲しい別れをしたくなかったのかもしれませんが、やはり金塊を独り占めしたかったと考えるのが妥当かと思われます。
杉元たちが東京にいて、土方陣営・第七師団が金塊に目が向いていない隙をねらって、深夜にこっそりと金塊を持ち出したと考えられます。
脱獄王と異名を持つ白石ならば、深夜に人知れずこっそりと金塊を持ち出すことも可能でしょう。
物語としても、アシリパと杉元は金塊をあきらめたというラストでは、新たな争奪戦の火種になりかねません。
それならば、すぐに金を散在するような白石が豪快に使いきったというほうが、『ゴールデンカムイ』らしいラストといえます。
のちに白石が杉元やアシリパの前に現れたのならば、きっと制裁棒で思い切り叩かれたでしょう。
◆年の差婚? 杉元とアシリパの関係はどうなった?
相棒として金塊争奪戦に挑んでいた2人ですが、その後、共に生きていくことを決めますが「結婚」したという描写はどこにもありませんでした。
アシリパの年齢が12歳前後、杉元が20代前半なので、結婚したとしても年の差婚になりますが、果たして2人に恋愛感情はあったのでしょうか?
作中でアシリパは、耳まで赤くして杉元を意識している描写がいくつもありました。
しかし、恋愛よりもやらなくてはならないことがあるという使命感のほうが大きかったのでしょう。海賊・房太郎に対し「そういうのじゃない」と自分に言い聞かせ、気持ちを押し込めるようにつぶやくシーンもありました。
また、杉元は一回り近く年下のアシリパのことを終始「アシリパさん」と敬称をつけて呼んでいました。それは、アイヌのことや、森で生き抜く知識の豊富さに敬意を表していたからと思われます。
しかし、金塊争奪戦が終わって3年経っても、アシリパは「杉元」、杉元は「アシリパさん」と呼んでいました。
お互いの呼び方に変化がないことを考えると、2人の関係にも変化がないと考えるのが自然ではないでしょうか。
結果、2人は「婚姻関係」は結んでおらず、今も変わらず「相棒」のままかと思われます。
ただ、生活を共にしているであろうことを考えると「事実婚」のような関係に落ち着いているのかもしれません。
──多くの伏線を散りばめ、歴史的背景をうまく織り交ぜた『ゴールデンカムイ』。マッカーサーの登場にしても「鶴見中尉ならやりかねない……」と感じさせるほど、1枚の写真は多くを語っていました。
アシリパや杉元、白石のラストも誰もが納得する形となり、伏線のほとんどが見事に回収されました。
この伏線の回収と、あえて回収していない謎のバランスの絶妙さが『ゴールデンカムイ』が連載終了してもなお人気を集め続ける理由なのかもしれません。
〈文/Takechip 編集/乙矢礼司〉
※お詫びと訂正
本文中の杉元佐一の名前に誤りがありました。
深くお詫びするとともに、以下の通り訂正させていただきます。
【誤】杉本佐一
【正】杉元佐一
※サムネイル画像:Amazonより