<この記事にはTVアニメ、原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>
TVアニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編』では、炭治郎や甘露寺蜜璃、時透無一郎に発現した「痣」について語られました。お館様の妻・あまねは痣について柱へ説明するとき「鬼の紋様に似た」と言っています。
『刀鍛冶の里編』で甘露寺の痣を見た半天狗も「鬼の紋様と似ている」と考えていましたが、痣と鬼の紋様は何か関係があるのでしょうか——?
◆痣と鬼の紋様にはどのような効果がある?
まずは痣と鬼の紋様にどのような効果があるのか考察していきましょう。
作中の様子からして痣が発現すると身体能力が向上すると考えられます。甘露寺は痣が発現した後、動きが格段に変わっていて、戦っていた半天狗からも「この小娘先刻よりも動きが早い!!」と驚かれていました。
また、同様に時透も痣が発現した後、玉壺から「さっきよりも尚早い動きで私に傷をつけた」と、痣が発現する前より動きが早いことへ疑問を抱かれています。この様子からして、痣が発現した後は格段に身体能力が向上しているといえるでしょう。
しかし、痣を発現させるのは簡単なことではありません。痣を発現させる条件について、時透は「心拍数が200を超えること」「体温が39度以上になること」と、語っています。話を聞いた胡蝶は「そんな状態で動けますか?」と驚いていましたが、時透は「そこが篩に掛けられる所だと思う」と言っていました。痣を発現して身体能力を向上できるのは、柱のような人並外れた実力を持つ限られた人物だけといえるでしょう。
一方、鬼の紋様についてはどのような意味や効果があるのか、作中で明言されていません。鬼の紋様はほとんどの鬼にあるようですが、下弦の鬼や上弦の鬼など強い鬼のほうが紋様がはっきりしているように見えます。
また、『遊郭編』では禰豆子の鬼化が進んだとき、体に蔦のような紋様が浮かび上がっていました。このときの禰豆子は上弦の鬼に匹敵する強さを身に着け、明らかに身体能力が向上していました。このことを考えると、鬼の紋様もはっきり濃いほど身体能力が向上しているのかもしれません。
◆痣と鬼の紋様は同じもの?
痣と鬼の紋様の効果を考察しましたが、どちらも効果が共通していることから、痣と鬼の紋様は同一のものなのかもしれません。
それぞれの効果で触れたように、どちらにも身体能力の向上という共通点があります。さらに、ほかにも人間の枠組みを超えた強さを持つという共通点があるでしょう。
鬼はすぐ傷が治ったり血鬼術を使ったりなど、あきらかに人間を超えた強さを持っています。一方、痣が発現したものも人間離れした動きを見せて、上弦の鬼と対等に戦っていました。加えて痣の発現条件である心拍数が200以上、体温が39度以上という体で戦えるのも常軌を逸しています。このことからも、痣が発現したものは人間を超えた強さを持っているといえるでしょう。
また、『遊郭編』で現れた禰豆子の紋様について、『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』にて、正式に痣と表記されていたのも根拠の一つです。ファンブックでは禰豆子の紋様について、「鬼化か進んだ身体には、葉の紋様のような痣が全身に発現し、額には鬼の象徴ともいえる角が現れた」と記されています。この表記から禰豆子の身体に浮かんだ紋様と痣は同一であるといえるでしょう。
これらの共通点や根拠から痣と鬼の紋様は同じものだと考えられ、人間を超越したものの証とも考えられます。
◆境地に至った人と鬼との違い
痣と鬼の紋様が同一のものならば、痣が発現したものと鬼は同じ境地に至ったものと言い換えられます。しかし、なぜ両者には考えかたや生きかたに大きな違いがあるのでしょう。
もちろん、無惨の血を分け与えられ鬼化し、人間を食べ物にしているという大きな違いはあります。しかし、ほかにも絶望から立ち直ったものと、立ち直れなかったものの違いがあるといえるでしょう。
たとえば、上弦の陸である妓夫太郎と堕姫の兄妹には、花街の最下層で生まれて堕姫が生きたまま焼かれるという、つらい過去があります。妓夫太郎は堕姫を救うために鬼となりましたが、その後は幸せそうな他人を許さず、奪って取り立てる側へまわりました。人間のころに妹を取り立てられて絶望したにもかかわらず、同じことを他人へ行うのは絶望から立ち直れていないといえるでしょう。
一方、柱の悲鳴嶼行冥は過去に人間に裏切られた経験がありながらも、鬼から人を守る鬼殺隊として責務を全うしています。疑い深くなり心の傷は癒えていないようですが、それでも人を守る姿には多少なりとも絶望から立ち直っているといえるでしょう。
ほかの柱も鬼に身内を殺され、絶望の淵に突き落とされてきました。それでも、ほかの人に自分と同じ経験をさせないため、絶望の淵から這い上がり刀を握って鬼と戦っています。
痣が発現したものと鬼たちは生物としての違いはもちろんありますが、絶望から立ち直れたかの違いでそれぞれの存在が分かたれたのかもしれません。
《林星来》
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。