<この記事にはTVアニメ、原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>

 TVアニメ『「鬼滅の刃」柱稽古編 』の最終回では、お館様が妻子と一緒に自爆をして、多くの視聴者が涙を流しました。しかし一方で、警戒心が強く臆病な無惨がお館様の秘策を見抜けなかったのかと、疑問の声も上がっているようです。なぜ、無惨はまんまとお館様の策略にハマってしまったのでしょうか?

◆無惨は「昆虫」に近い生物

 無惨がお館様の自爆を見抜けなかったのは、彼は共感性が極めて低いことから、鬼殺隊の根底に流れる鬼を許せないという気持ちを理解できていなかったからでしょう。

 無惨について『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』では、「人間的感性の持ち合わせがなく、共感能力が極めて低い」と記されています。

 また、無惨は負の真理を見抜く能力に長けていることから毒舌家で、共感性の低さと相まって、これまでに娶った妻5人を自殺に追い込んだこともありました。そのようなサイコパスともいえる性格のため、先述したファンブックでは「人間というよりも昆虫などに近いのかもしれない」と、記載されています。

 無惨の共感性の欠如は作中でもよく表れており、最終決戦では身内を殺されたことを恨んで無惨を追い続ける鬼殺隊を異常者扱いしていました。この振る舞いから、無惨が大切な家族を殺された鬼殺隊の心理をまったく理解していないことがよく分かるでしょう。

 このように無惨は他者へ共感できないことから、警戒していたとはいえお館様の自爆を見抜けなかったと考えられます。

 また、無惨が自爆を見抜けなかったもう一つの理由として、妻子を巻き込んで自殺しないという思い込みがあったのかもしれません。

 お館様が妻子もろとも自爆した際、無惨は驚き「妻と子供は承知の上だったのか?」と疑問を抱いていました。この驚きようからして、無惨はお館様が妻子を巻き込むとは夢にも思っていなかったのでしょう。

 しかし、この無惨の感覚は極めて一般的なものであり、誰でも妻子を巻き込んで自ら命を断つとは思いません。この部分だけ見てみると無惨が一般的な感性を持ち合わせているように見えますが、これは長い年月で培ってきた経験則がもたらしたものでしょう。

 無惨は平安時代から生きているため、ゆうに1,000歳を超えています。これまでたくさんの人間を食べてきてことから、さまざまな修羅場を見てきたはずです。その中には、無惨から妻子をかばったり助けようとしたりする夫がいてもおかしくありません。そのような経験から、妻子を巻き込まないだろうという思考の落とし穴が生まれたのでしょう。

◆お館様は妻子を巻き込む必要があったのか?

 一方で、お館様に対して妻子を巻き添えにして自爆する必要があったのかと、疑問の声が上がっています。なぜ、お館様は自分ひとりではなく妻子と一緒に自爆したのでしょうか。

 この答えは原作17144話で語られています。144話では、両親と一緒に自爆をした娘のひなきとにちかは「母同様に父の傍を離れようとしなかった」と説明されていました。このことから、自爆は妻子ともに承知していたことが分かりますが、なぜ妻のあまね様と娘のひなきとにちかはお館様とともに自爆する覚悟を決めたのでしょうか。

 もしかしたら、これまでに多くの鬼殺隊が犠牲になっていることから、自分たちだけ免れるということはできなかったのかもしれません。

 お館様は自身が当主についてから亡くなった隊士の名前をすべて覚えており、隊士たちを我が子のように可愛がっていました。そんなお館様の側にいたあまね様や、お館様に育てられたひなきとにちかが、同じように隊士たちを大切に思っていても不思議ではありません。

 家族同様の隊士たちが大勢犠牲になっていることから、自分たちだけ隊士たちに守られて生き永らえるという選択はできなかったのでしょう。

 また、ほかにもお館様だけでなく、妻子ともに未来を見通す能力があるため、無惨の来襲が彼を倒せる千載一遇のチャンスだと分かっていたのかもしれません。

 原作16巻にて産屋敷一族には未来を見通す先見の明があり、これまで何度も危機を回避してきたことが説明されています。

 産屋敷一族と説明されているからには、ひなきとにちかにも先見の明があってもおかしくありません。また、『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』では、あまね様が断片的な予知夢を見ることがあると紹介されていました。

 このことから、お館様だけでなく産屋敷家の全員が事前に無惨の来襲を知っていて、彼を倒せる好機だと考えていたのでしょう。

 その好機を逃さないためにも、無惨を油断させるためにあまね様やひなき、にちかも一緒に自爆し、無惨を倒す絶好の機会を後に託したのかもしれません。

 

 ──視聴者に衝撃を与えた妻子諸共のお館様の自爆を振り返ると、昆虫のような無惨の性格や、産屋敷一族の決死の覚悟が見えてきます。無惨を倒すという産屋敷家や鬼殺隊の宿願が叶うのか、劇場版三部作での制作が決まった続編「無限城編」がますます気になるところです。

〈文/林星来 @seira_hayashi

《林星来》
フリーライターとして活動中。子供の頃から培ってきたアニメ知識を活かして、話題のアニメを中心に執筆。アニメ以外のジャンルでは、葬儀・遺品整理・金融・恋愛などの記事もさまざまなメディアで執筆しています。

 

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テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編 

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