今年の夏の映画館は例年以上に“熱く”なりそうです。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』の第一章が7月18日(金)から劇場で公開されることが発表されました。

 この日付は学生たちの多くにとって夏休みが始まるタイミングなので、配給側からしても夏休み興行の“大本命”だと分かります。

 『鬼滅の刃』はこれまでもTVシリーズの編集版などの上映を毎年映画館で行ってきました。しかし本編を丸々完全新作として上映するのは、あの大ヒット作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』以来。今回も凄まじい動員数に期待がかかるわけですが、ほかの同時期に上映を予定していた映画たちには脅威の存在となりそうです。

◆『鬼滅』だけじゃない? 2025年の夏映画もビッグタイトルが並ぶ

 実は現時点で2025年の夏に興行を発表している作品は『鬼滅の刃』以外にもたくさんあります。

 たとえば、昨年は『インサイド・ヘッド2』を上映したりと毎年大作をぶつけてくることでお馴染みのディズニーも、ピクサーの最新作『星つなぎのエリオ』の上映を予定しています。

 本作は、宇宙へ行くことを夢見る孤独な少年エリオが、さまざまな星のリーダーが集まる「コミュニバース」に地球のリーダーと間違えられて転送されてしまうという内容で、監督には『リメンバー・ミー』の共同監督としてクレジットされているエイドリアン・モリーナさんと『私ときどきレッサーパンダ』の監督・脚本のドミー・シーさん、短編『夢追いウサギ』の監督・脚本のマデリーン・シャラフィアンさんの3名が名を連ねるという豪華な布陣です。

 対抗する海外大手作品でいえばユニバーサルからは『ジュラシック・ワールド 復活の大地』が夏公開であることが発表されています。

 『ジュラシック』シリーズでは初の女性主人公として、『アベンジャーズ』シリーズ等でのブラックウィドウ役としても知られるスカーレット・ヨハンソンさんが起用され、シリーズも新たな物語へと進んでいきます。ディズニーの3DCGとは一転して、リアルな恐竜を再現するVFX要素にも注目の映画です。

 VFXで言えばヒーロー作品として心機一転の新シリーズに突入する映画『スーパーマン』やマーベルからは『ファンタスティック4』の公開も発表されています。

 海外作品だけでもこれだけ充実しているのに、ここにさらに日本からは『鬼滅』を配給する東宝自身が人気ドラマシリーズの新作『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』であったり、かつてのゴールデンウィークシーズンから夏上映に移行した『クレヨンしんちゃん』の最新作『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』も上映するなど既に発表されている作品だけでも激戦区となっています。

◆スクリーンは急に増えない! 話題作が多いと起きる問題とは?

 こうして話題作が充実していること自体は嬉しい一方、懸念点も出てきます。

 たとえば、スクリーン数。どれだけ話題作が増えても映画館自体は急に増えたりはしません。限られた上映回をいくつもある映画ごとに割り振っていくことになります。

 その場合、自ずと人気の筆頭作の上映回数が増えます。『鬼滅の刃』のような出足から多数の動員が予想できる作品はなおさら、公開日から桁違いの上映回数が用意されます。

 一方でそれ以外の動員数が未知数な映画は新作と言えども上映回数が限られることになり、より観に行きにくくなってしまいます。そのため、たとえ夏休み映画として公開される映画でも、作品によっては早めに劇場に足を運んでおかないと、いつの間にか上映回が一日一回になっていたり、既に終わっているなんてこともあり得ます。

 さらに厄介なのがラージフォーマット上映と呼ばれる特殊なスクリーンでの上映です。近年ではIMAXやDolby Cinemaといった特殊な規格のスクリーンや、MX4Dや4DXといった体感型スクリーンでの上映を実施する映画も増えてきました。

 しかし、これらの上映は通常上映よりもさらにスクリーン自体も限られており、より大作が上映回を取り合うような状況になっています。上映回があるならまだしも、海外では上映規格として用意されていても日本での上映がないなんて例もしばしばです。

 そんな中、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』は早くも公開初日からIMAX版での上映を全国53館で行うことを発表しています。嬉しいニュースではある一方で「ほかの作品たちのIMAX上映はどのタイミングになるのか」「そもそも上映はあるのか」といった懸念も生まれてきます。

 『鬼滅の刃』ほどのビッグタイトルこそ上映回数は確保してくれると予想できるので安心ですが、それ以外の作品については計画的に映画館に足を運ぶ必要が出てきそうです。あれも観たい、これも観たいと思っている人は、興行の盛り上がるシーズンこそ各作品の公開日や上映回に気をつけましょう。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

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劇場版「鬼滅の刃」無限城編 公式サイト

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