<この記事には原作・TVアニメ『鬼滅の刃』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>
竈門家が鬼に襲われ禰豆子を鬼に変えられてしまったところから『鬼滅の刃』の物語は始まりますが、第1話の惨劇は本当に偶然に起こったことなのでしょうか? 改めて作中を振り返ってみると、実は竈門家の惨劇は起こるべくして起きたのかもしれません。
◆竈門家が襲われた最大の理由
第196話で竈門家を襲った鬼、そして禰豆子を鬼に変えた張本人は鬼舞辻無惨だったことが明かされます。無惨が竈門家を襲った目的は、彼自身が語っている通り「太陽を克服する鬼」を作るためでした。ここで気になるのが、無惨が意図的に竈門家を襲ったのかどうかという点です。
作中でその謎については明かされませんでしたが、無惨が竈門家を選んだのには大きな理由があると考えられます。それが「太陽を克服できる遺伝子」を持つ人間を探して襲っていたことです。第74話で無惨は「血の種類や病気、遺伝子など人間に判らないことが判別できる」と語っています。
つまり、無惨は人間の遺伝子情報をある程度理解したうえで人間を襲っていたことになります。しかし、無惨は「竈門家=太陽を克服できる遺伝子」の持ち主だと判別して襲ったのかというと、その可能性は極めて低いでしょう。なぜなら、仮に無惨が「太陽を克服できる遺伝子」を正確に理解していたのなら、もっと早くに竈門家を襲いに行ったはずだからです。現に竈門家は、戦国時代から約400年もの間、無惨に襲われていませんでした。
つまり、無惨は「太陽を克服できる遺伝子」を求めていたものの、それが具体的にどのような遺伝子なのか、正解を知らなかったと考えられます。それではどうやって判別していたのか? その方法は、無惨がこれまで襲った人間の遺伝子を記憶し、それとは異なるタイプの遺伝子を持つ人間を優先してねらっていたと推測できます。
たとえば、無惨が今まで襲った人間たちがAやBの遺伝子を持つタイプだったとすると、次はCの遺伝子を持つ人間を優先的に襲うということです。この方法なら、正解を知らなくてもいずれ「太陽を克服できる遺伝子」を持つ人間に辿りつけます。まさに悠久の時を生きる無惨だからこそ取れる戦法でしょう。
竈門家は、400年前に継国縁壱から「日の呼吸」を継承し、以来、代々「ヒノカミ神楽」として受け継いできた一族です。実際に禰豆子は太陽を克服したことから、遺伝子的にも特別な家系だったと考えられます。つまり、竈門家は無惨が今まで襲ってこなかった遺伝子タイプを持つ家系だったからこそ、目をつけられてしまったといえるでしょう。
◆青い彼岸花の捜索
そして、無惨が竈門家に辿りついた理由としてもう一つ考えられるのが「青い彼岸花」の捜索です。無惨の最終目標は太陽を克服した完璧な生物となること。その方法は「太陽を克服した鬼」を自らに取り込むか、または「青い彼岸花」を探し出すことでした。
第67話では猗窩座が炎柱を倒した報告よりも優先して青い彼岸花の所在をたずねていたことから、無惨がいかに青い彼岸花に執着していたかが分かります。
実はこの青い彼岸花、竈門家の近くに自生していたことが『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』(出版社:集英社)で明かされています。しかも炭治郎の母親・葵枝(きえ)は咲く場所を知っており、炭治郎も幼いころにその花を見せてもらったことがあったというのです。
山深いところに住んでいる竈門家ですが、麓に住む三郎爺さん、町にいる炭売りの馴染み客など、意外と交流がありました。「珍しい花がある」と、その存在が人々の間に広まっていても不思議ではありません。
そして無惨は正体を隠し、人間世界に溶け込んでいました。つまり、なんらかの噂をかぎつけ、調査のため雲取山を訪れた可能性は十分に考えられるのです。
まとめると、竈門家が無惨に襲われた理由は、今までにない遺伝子パターンを持つ人間たちだったから、そして不思議な花に関する噂を聞いたからだと考えられます。無惨が炭治郎の代で竈門家を襲ったのは偶然かもしれませんが、いつかは必ず無惨に襲われていた運命だった、ということになるのです。
◆禰豆子だけが鬼にされた理由
禰豆子は、無惨によって意図的に鬼にされた可能性があります。なぜなら、黒死牟や童磨が人間を鬼にする際「あの方に認められれば」と言っているからです。つまり、鬼化する最低条件は、無惨に認められる必要があると考えられます。
そうすると、なぜ禰豆子だけが鬼にされ、竹雄たちほかの兄弟4人はなぜ鬼にならなかったのか……。結果からみても、太陽を克服する遺伝子を持つ竈門家の人間なら条件は同じはずです。
理由としては大きく2つ考えられます。まず1つが、肉体的な成長です。本編を通してみると、実は子供の鬼はあまり登場していません。代表的な鬼は、朱紗丸(すさまる)や“下弦の伍”累ですが、累は禰豆子を妹にしようとしており、体格的にも禰豆子に近い年齢だったと推測できます。
一方の朱紗丸は年齢不詳ですが、ジャンプコミックスのおまけ企画の『中高一貫!! キメツ学園物語』では高等部3年に設定されており、炭治郎たちよりも年上として描かれています。このことから、幼すぎる肉体では、たとえ適性があっても無惨の血に耐えられないと考えられます。
理由の2つ目が、自身の中にある「強い想いや執着」です。無惨は強い執着や渇望がない者は鬼として大きな進化をしないと考えていました。事実、上弦の鬼たちは、善悪はともかく全員が何かしらの強い想いを秘めています。
禰豆子は父が亡くなったときも、残された弟たちを想い、亡き父に心配かけないよう笑顔で生きようと決意しています。誰よりも家族を守るという「強い想い」があったからこそ、人喰いの衝動も抑えることができたのです。
こうして禰豆子だけが無惨の血に耐えることができ、持ち前の精神力から上弦の鬼たちに匹敵する強さを手に入れたのだと考えられます。
──無惨がいずれ竈門家を襲うことは決まっていたのかもしれません。しかし、裏を返せば竈門家の人間もまた、必ず無惨の血を克服し鬼狩りとして無惨に立ち向かう運命だったということになります。竈門家と無惨の因縁は、継国縁壱の「日の呼吸」を継承したときから、既に運命づけられていたのかもしれません。
〈文/fuku_yoshi〉
画像引用元:Amazonより 『鬼滅の刃 第1巻(出版社:集英社)』
※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となります。
※鬼舞辻の「辻」は「一点しんにょう」が正しい表記となります。