<この記事にはTVアニメ・原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが登場します。ご注意ください。>
江戸時代のころ、鬼舞辻無惨が強い鬼を生み出すために組織した「十二鬼月」──。しかしその地位は不動ではなく、作中に登場するほとんどの鬼たちは十二鬼月に入ろうと躍起になっていました。そもそも十二鬼月にはどうやって入るのでしょうか。そしてそのランキングはどのように決まっていたのでしょうか?
◆十二鬼月入りと順位を決めた「入れ替わりの血戦」
どのように十二鬼月のランキングを決めていたのかについては、作中で明確にされています。それが第99話で黒死牟が猗窩座に話していた「入れ替わりの血戦」です。そして響凱(きょうがい)や笛鬼など、多くの鬼たちが十二鬼月入りをねらう発言をしていましたが、それもこの「入れ替わりの血戦」の制度を利用したものだと推察できます。
「入れ替わりの血戦」は原作で詳細は明かされていませんでしたが、おそらく任意で指名した相手と戦い、勝てばその地位を奪えるというシステムだったと考えられます。なぜなら上弦の参だった猗窩座が戦いを挑むと宣言していた相手は上弦の弐の童磨ではなく、上弦の壱である黒死牟だったからです。つまり、ランキングの飛び級が可能なのです。
作中で描写こそされませんでしたが、実際に飛び級で「入れ替わりの血戦」が行われたと推測できる事例があります。それが、第96話で登場した童磨です。当時まだ人間だった妓夫太郎と堕姫の前に現れた童磨は上弦の「陸」でした。しかし、童磨は猗窩座よりも遅く鬼になったのに、最終的には猗窩座より上位の上弦の「弐」となっています。
また『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』(出版社:集英社)によると、「入れ替わりの血戦」の勝者は無惨の許可を得たのち、敗者を吸収することができると書かれています。このことから、童磨は飛び級で前任の上弦の弐に挑み、打ち破ったと考えるのが自然でしょう。
ちなみに公式ファンブックでは、黒死牟が過去に3回「入れ替わりの血戦」を申し込まれていることも明かされています。そしてそのうちの1人が猗窩座です。このとき、敗北した猗窩座が黒死牟に取り込まれなかった理由は、黒死牟や無惨が猗窩座を気に入っていたからだと書かれています。
◆十二鬼月のランキングは強さ順ではなかった!?
十二鬼月は、上弦、下弦ともに「壱」から「陸」までの番号が割り振られています。そして作中の描写を見る限り、数字が小さいほど強いと考えられます。しかし、この「強さ順」というのが意外と曖昧なのです。
たとえばSNSなどでは、しばしば玉壺と妓夫太郎ではどっちが強かったのかと論争が巻き起こっています。数字上は玉壺が上位ですが、アニメ版『「鬼滅の刃」遊郭編』で描写された妓夫太郎は、相手の命を奪う猛毒を操り、音柱・宇髄天元を中心に炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助、そして天元の嫁たちが協力してようやく勝利できるほどの破壊力を見せました。
一方、アニメ版『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』で描写された玉壺は、小鉄の協力があったものの、霞柱・時透無一郎にほぼ単独で圧倒されています。玉壺は拳で触れたものすべてを鮮魚に変える「神の手」という凶悪な切り札を持っていましたが、無一郎よってその力は封じ込められてしまったのです。
少なくとも原作やアニメで描かれた戦いぶりを見ると、玉壺と妓夫太郎の実力はかなり伯仲しており、一概に数字通りの優劣はつけにくいことが分かります。
実は、これらの論争はあながち的外れではなかったと考えられます。なぜなら『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』で、下弦の伍・累は、彼より上位の下弦の壱・魘夢や下弦の弐・轆轤(ろくろ)と同等の実力を持っていたという衝撃の事実が明かされたからです。
つまり、十二鬼月のランキングはあくまでも「入れ替わりの血戦」にもとづくおおよその順位で、必ずしも絶対的な強さを示しているわけではないと考えられます。とはいえ、上弦の鬼たちの実力は番号が小さくなるほど凶悪だったので、彼らについては強さ順だったと結論づけてもいいかもしれません。
◆不死身の鬼たちの決着方法とは……
「入れ替わりの血戦」で多くの人が疑問に思ったことがあるでしょう。それは鬼同士でどう決着をつけていたのか……ということです。鬼は基本的に死なず、日輪刀などの特殊な武器以外では致命傷を受けてもすぐに再生します。
第19話で珠世も「鬼同士の戦いは不毛です。意味が無い」とまで言い切っています。そんな中で鬼同士が争う「入れ替わりの血戦」の決着方法は、大きく二つ考えられます。まず一つは、一見すると矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、再生ができなくなるまで戦うことです。
本来、鬼はどんな致命傷を負っても再生できます。しかし、それは鬼が万全の状態であるときに限られます。十二鬼月クラスとなれば、当然血鬼術を駆使した戦いになるでしょう。しかし、血鬼術は鬼としての能力をかなり消耗する戦い方だと推察できます。
第125話で半天狗は「まずい再生が遅くなってきた。“憎珀天”が力を使いすぎている」と語っています。このとき、憎珀天は玄弥と禰豆子、そして甘露寺を相手に血鬼術をフルに使って戦っていました。つまり、血鬼術は使えば使うほど、鬼の再生能力が遅くなると考えられるのです。強力な血鬼術を使う上弦クラスの戦いなら、意外と早く決着がついていたのかもしれません。
そしてもう一つの決着方法は、無惨が判定を下していた可能性です。第99話では、黒死牟が「気に喰わぬのならば入れ替わりの血戦を申し込むことだ」と言っています。「申し込む」ということは、十二鬼月の中でも最上位に君臨する上弦の壱ですら、独断で「入れ替わりの血戦」を行えないことを意味します。黒死牟よりも上位の鬼はただ一人、無惨だけです。
つまり、「入れ替わりの血戦」を行う際、無惨が立ち会っている可能性が非常に高いと考えられます。無惨は第24話で響凱から数字を剥奪していましたし、最終的に十二鬼月の順位にふさわしい実力の持ち主を選んでいたことが分かります。さらに無惨が立ち会っていたなら、黒死牟に敗北した猗窩座が吸収されなかったこともうなずけます。
このことから「入れ替わりの決戦」の決着方法は、相手が再生できなくなるまで戦い、立ち会っている無惨が勝敗を宣言していたと考えられます。
──十二鬼月たちが本気で戦いあっただろう「入れ替わりの血戦」。激しい戦闘の余波があるはずなので、行われていた場所は異空間「無限城」であった可能性が高いでしょう。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』で「入れ替わりの血戦」が描かれるのかも注目すべき点といえるでしょう。
〈文/fuku_yoshi〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「鬼滅の刃 ノベライズ ~猗窩座との戦いと伊之助の過去編~」(出版社:集英社)』
※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となります。
※鬼舞辻の「辻」は「一点しんにょう」が正しい表記となります。