<この記事にはアニメ・原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが登場します。ご注意ください。>

 7月18日から上映される『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』第一章のサブタイトルが“猗窩座再来”と正式に発表されました。鬼の中でも屈指の人気を誇る猗窩座は、実は多くの謎を残しています。

◆猗窩座は無限列車を襲撃する前にどこで何をしていたのか?

 猗窩座が無限列車に来た理由として、第67話で鬼舞辻無惨が「近くにいたお前を向かわせた」と語っています。それではなぜ猗窩座は移動しているはずの汽車の近くにいたのでしょうか?

 そのヒントとなるのが無限列車の向かう方角です。まず『鬼滅の刃』は、炭治郎の実家がある「雲取山」や、無惨のいた「浅草」など現実の地名が登場します。このことからも分かる通り、舞台は大正時代の日本となっているのです。

 それを踏まえて注目したいのが、TVアニメ『「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編』第26話での鎹鴉のセリフです。原作にはないセリフですが、鎹鴉は「タダチニ西へ向カエ」と言っています。このことからも、炭治郎たちは関西方面に向かったと考えられます。

 さらに鉄道に詳しいファンの間では、無限列車のモデルはそのデザインから蒸気機関車「8620形」だと考察されています。実はこの列車、東京駅から一日15本運行しており無限列車と同じく夜行列車もあります。さらに現存している鉄道省運輸局が編纂した『汽車時刻表』や『汽車汽船旅行案内』で発着時刻を確認することが可能。

 炭治郎たちの戦いが描かれたのはおそらく1915年です。関西方面の列車の時刻表を見ると、東京発大阪着の汽車だと運行時間は11時間55分となります。つまり18時に東京を出発する汽車に乗れば、翌朝5時55分に大阪に到着します。さらに原作やアニメの描写を見る限り、外套を着ている人物が映り込んでいるので、季節はおおよそ秋から冬だと仮定できます。

 秋から冬場の日の出時間は前後しますが、仮に朝6時とします。猗窩座と煉獄杏寿郎の戦闘が2時間ほどだったと仮定すると、日の出から逆算して、戦闘が行われた場所は関ヶ原から彦根あたりだったと推測できるのです。

 話は少し戻りますが、第67話で無惨は猗窩座に鬼殺隊の討伐のほかにある指示を出していました。それが「青い彼岸花」の捜索です。つまり、猗窩座は大阪方面で青い彼岸花を捜索していたと考えられるのです。

 先ほど煉獄との戦闘が行われた場所を彦根あたりと推測しましたが、実は彦根の次に急行が止まる駅が京都なのです。京都といえば平安京があり、無惨の生まれ故郷があったと考えられています。そして、ここまでの情報を踏まえると猗窩座は京都周辺で青い彼岸花の捜索の任務についていたと考えられます。

 つまり、猗窩座は大阪方面に向かう無限列車を迎え打つ形で、京都から打ってでたと考えられるのです。そうであれば、地理的にも、時系列的にも、辻褄が合ってくるのではないでしょうか。

◆なぜ猗窩座は炎柱と戦ったことがなかったのか?

 第63話で猗窩座は今まで倒してきた柱の中に「炎はいなかった」と発言しています。しかし煉獄曰く、歴史の古い水柱と炎柱はどの時代もいたと語っています。裏を返せば、鬼が最も遭遇しやすい柱だったハズ。もちろん偶然が重なり炎柱と遭遇しなかったとも考えられますが、猗窩座は十二鬼月の中でもかなりの古株です。無惨の命令の中に鬼殺隊の殲滅があるので、炎柱との戦闘経験が一切なかったことは少し疑問が残ります。

 実は猗窩座の独特な習慣から遭遇率が低かったと考えられるのです。『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』(出版社:集英社)では、無惨からの命令がないとき猗窩座はひたすら鍛錬に時間を費やしていたことが明かされています。そもそも猗窩座の目的は「至高の領域」に到達すること。多くの鬼が短絡的に人間を食べて強くなろうとする中、猗窩座は異例ともいえる存在だったのです。

 このことから、猗窩座は意外にも自ら表に出て人間や鬼殺隊と戦うことはせず、どちらかといえば、ひきこもって鍛錬していたと捉えられるのです。もしかしたら猗窩座は、ほかの上弦の鬼たちと比べて実践経験が少なかったのかもしれません。

◆本当は無惨のことをどう思っていたのか?

 猗窩座が登場するシーンでは、珍しく鬼同士の人間関係が多く描かれていました。たとえば、童磨に対しては隠すことなく嫌悪感を抱いていたり、黒死牟に対しては倒すべき目標としてライバル視したりしていました。そんな猗窩座ですが、無惨に対してはどう思っていたのでしょうか?

 猗窩座は上弦の中では珍しく、無惨から理不尽な叱責を受けている描写があります。第67話では命令を完遂したにも関わらず、全身が出血するほど細胞を暴走させられていました。同じように理不尽な叱責をされた下弦の鬼たちは無惨に対して各々の感情を向けていましたが、このときの猗窩座は特に顔色を変えていませんでした。

 実は『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』によると猗窩座が無惨に向けていた感情は完全なる「無」で、尊敬も畏怖も憎しみも何もなかったそうです。一方の無惨は意外にも猗窩座のことを気に入っていたことが明かされています。

◆猗窩座は無口なのか、それともおしゃべりなのか?

 第98話で無限城に呼び出された際、猗窩座はほとんど自発的に会話をしていませんでした。一方で煉獄と対峙しているときは、猗窩座は嬉しそうに話しかけています。実は『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』で人間と話すのが好きだったことが判明しているのです。

 猗窩座は相手の命を奪う命令があっても、まず相手とよく話してから倒していたそうです。さらに、煉獄に対してもそうだったように、少しでも強いと思った者はことごとく鬼に勧誘……。実際、過去に勧誘が成功して鬼にした人間もいたそうですが、みんな命を落としてしまったことが明かされています。

 

 ──命令以外ではあまり人間と戦わず鍛錬にいそしむ。そのうえ、人間と話すことが好き。敵役なのに、どこか人間味があるのが猗窩座という鬼です。猗窩座はただ強いだけではなく、鬼としてイレギュラーで意外な一面があるからこそ、より魅力的に映るのかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

 

※サムネイル画像:『「劇場版「鬼滅の刃」無限城編 」第一章 猗窩座再来 第2弾キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable』


『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 』第一章 猗窩座再来 公式サイト

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable


※鬼舞辻の「辻」は「一点しんにょう」が正しい表記となります。
※煉獄杏寿郎の「煉」は「火」+「東」が正しい表記となります。

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