<この記事にはアニメ・原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが登場します。ご注意ください。>

 人間を鬼に変えられる鬼舞辻無惨の血には特殊な設定があり、それが「血の呪い」です。しかし、この「呪い」については、原作で詳細が語られていない部分があります。

◆鬼舞辻無惨の「血の呪い」の原理

 本来、人間にとって猛毒である無惨の血ですが、適合した人間は鬼に変貌してしまいます。

 この際、鬼となった者に強制的にかけられるのが「血の呪い」です。そんな無惨の「呪い」の効果は主に二つ。

 まず一つは、血を分け与えた存在の位置や思考、体験を把握できることです。思考を読むにはある程度近い距離にいなければなりませんが、位置情報に関して無惨は常に把握できています。

 また鬼が体験したことを無惨本人も共有できます。たとえば配下の鬼が毒をくらってそれを解毒した場合、その解毒方法は無惨にも共有されるため無惨にもその毒は効かなくなります。

 そして二つ目は、無惨の名前を口にしたり無惨の情報を漏らしたりすると、その鬼の命を奪えることです。具体的には、無惨が鬼の体内に残留する無惨の細胞を暴走させ、肉体を破壊し消滅させるのです。

 つまり「呪い」の原理は、無惨と同じ「血」を体内に取り込むことで、細胞レベルでつながってしまうこと。まさにプライバシーもなにもない、常に無惨の監視下に置かれ、無惨の気分次第で命を脅かされることこそが「呪い」の凶悪な部分といえます。

 そして鬼たちはこの「呪い」でつながっているために、無惨が命を落とすと、彼から生まれたすべての鬼たちも命を落としてしまいます。この事実は第137話で産屋敷耀哉も指摘しており、無惨も図星をつかれたように激昂していたので間違いないでしょう。

◆珠世と禰豆子が「呪い」を外した方法とは?

 珠世と禰豆子が「呪い」を解除した具体的な方法は、原作では語られていません。しかし、結論からいうと「呪い」を外す方法は、血を変化させ細胞レベルで身体を作り変えるしかないと考えられます。

 まず珠世の場合は、第187話で解除するきっかけが描かれています。戦国時代、継国縁壱によって追い詰められた無惨は、無数の肉片に散らばりなんとか逃げ延びることに成功しました。無惨はこのときかなり弱体化したため、珠世は「一時的に」無惨の支配から解放されたと書かれています。

 ここで注目したいのは、あくまでも「一時的に」である点です。つまり、この時点では「呪い」は完全に解かれていないと捉えられます。何より、第15話で珠世が少量の血を摂取するだけで生きられるようになったのは、自らの肉体をいじったからだと明かしていました。つまり、珠世は無惨の支配から解放されている間に自分の肉体を変化させて、完全に「呪い」を外したと考えられるのです。

 続いて禰豆子の場合はどうだったのでしょうか。実は、禰豆子がいつ「呪い」を外したのかは原作では明かされていません。初めて禰豆子が「呪い」を外していると分かったのは、蝶屋敷に連れ帰られたあとを描いた第52話です。

 つまり、那田蜘蛛山の戦いの時点では「呪い」が外れていたことが確定します。『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』(出版社:集英社)では、禰豆子は「自力で呪いを外した」と書かれています。

 さらに第15話での珠世の推測では、2年間眠り続けたことで「体が変化している」と語っていました。つまり時系列的に状況的に考えても、禰豆子は2年間の眠りの中、自力で身体を変化させたと捉えるのが自然でしょう。実際に禰豆子はこの2年間の眠りを経て、人を食べずとも睡眠をとるだけで生命活動が維持できる特殊な性質を獲得しています。

 珠世と禰豆子それぞれのケースを振り返ってみると、共通して肉体を変化させて無惨の「呪い」を解除していることが分かります。

 しかし、肉体を変化させるとはいったいどのような手段なのでしょうか? それは第127話にヒントが描かれています。禰豆子の血を調べていた珠世が、短期間で血の成分が何度も変化していると語っていました。

 つまり、肉体の中でも特に血を変化させることが重要なのかもしれません。自らの血を変化させて無惨との血のつながりを完全に断つことが、「呪い」を解く唯一の方法だと結論づけられるでしょう。

◆無惨の「呪い」を解除した三人目は誰?

 無惨は珠世と禰豆子の二人が自分の「呪い」を外していることに気づいていました。しかし、実は三人目がいることに気づいていませんでした。

 それは浅草で無惨に鬼にされた男性です。通称「浅草の人」と呼ばれる彼は、第127話で珠世によって無惨の「呪い」を外してもらっています。

 浅草の人は珠世と同様、少量の血で生きていけると書かれているので、恐らく珠世と同じような肉体改造が施されたと考えられるでしょう。

 実はこの浅草の人、かなり強力な血鬼術の使い手でした。第138話で珠世は無惨が存在を把握していないことを逆手にとり、彼の血鬼術「肉の種子」で無惨を固定することに成功しています。

 イレギュラーな存在で完全に虚をつかれる形になったとはいえ、この血鬼術は無惨をもってしても簡単に同化や吸収できなかったのです。無限城編の決戦の火蓋を切ったのは産屋敷と珠世でしたが、第三の存在として「呪い」を外した浅草の人の協力も大きかったといえるでしょう。

 

 ──無惨の支配の象徴として描かれた「血の呪い」……。無惨と鬼が「呪い」でつながっていたのに対し、産屋敷と鬼殺隊たちは「絆」で結ばれていました。「呪い」を外した珠世と禰豆子も、最終的に鬼殺隊と絆を結んでいます。設定一つに注目してみてもテーマが感じられるので、そういう視点であらためて読み返すと作品の深みをより体感できるかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「鬼滅の刃」第11巻(出版社:集英社)』


※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となります。
※鬼舞辻の「辻」は「一点しんにょう」が正しい表記となります。

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