<この記事には『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』のネタバレが少し登場します。ご注意ください。>
昨日7月18日から公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は本編を観ると、「なるほど、だからこの副題なのか」と納得する仕上がりとなっていました。
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 』は三部作での公開が発表されている作品。当初は『無限城編 第一章』の副題だけが発表されていたのですが、公開の直前になり『猗窩座再来』の副題が追加されました。実はこれらの副題には、この劇場版シリーズの見方のヒントとなる要素が示されていました。
◆『猗窩座再来』は『無限列車編』のリベンジマッチであり見所を示していた?
映画の公開のわずか1ヵ月前のタイミングで、今回の劇場版『鬼滅の刃』の第2弾キービジュアルとともに、正式タイトルが『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』と発表されました。それまでは最終決戦が始まることだけが示唆されていたのですが、ここで初めて具体的な第一章で描かれる戦いの内容が明らかになったわけです。
【7月18日(金)公開】
劇場版「鬼滅の刃」無限城編
第一章 猗窩座再来第2弾キービジュアルを公開しました。
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そんな猗窩座の再登場の示唆は、まさにこの第一章がどんな見所を持つのかをはっきりと示すものでした。この第一章ではいくつかの戦闘が描かれるものの、なんといっても一番の見所として副題になっている“猗窩座の再登場”が用意されています。
猗窩座といえば、日本の最高興行収入記録を塗り替えた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のクライマックスで登場した敵キャラクター。残念なことに猗窩座によって炎柱である煉獄杏寿郎は致命傷を負い、炭治郎達もあと一歩のところで猗窩座を逃してしまうという観ている我々にも悔しい思いを残した鬼です。
そんな猗窩座に対する遺恨に決着をつけるための映画がまさにこの『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。わざわざ副題にするのも納得なほど、この第一章では猗窩座の再登場だけでなく、彼との戦いやその顛末までが描かれます。
そういう意味では前回の劇場版以来、TVシリーズの『鬼滅の刃』を追っていないという人にも最適。“あの『無限列車編』で登場した猗窩座との話”が描かれるということで「煉獄と猗窩座の戦いを観た人は今回の映画も観に来て」という制作側のメッセージとも受け取れます。『無限列車編』が前編だとしたら、今回の『猗窩座再来』はある意味で後編。猗窩座を軸にその因縁の行方を描きます。
無限列車編を経て煉獄を失った鬼殺隊の怒りと、かくいう自身も情けなく逃亡を選ばざるを得なくなった猗窩座の怒りがついに合間見えるということで、その描写は期待以上。原作漫画で描かれている以上にアニメーションでできる効果を存分に活用しているので、漫画で読んだ人にも新鮮な体験が待っているようにできていました。
◆『無限城編』という副題は伊達じゃない? 「無限城の描写」がすごいことになっていた
『猗窩座再来』の副題は今作の見所として“猗窩座の存在”が大きいことを示しているわけですが、もう一つ『無限城編』という副題自体にも実は本作の見所が示されています。
というのも、てっきり戦いの舞台として無限城に落とされたからこのタイトルになっていると思いきや、それ以上の意味で今回の劇場版では“無限城”が作り込まれていたからです。
TVアニメ『「鬼滅の刃」 柱稽古編』の最終第8話「柱・結集」のラストにて、鬼殺隊の面々が続々と無限城に落とされる様子で幕を閉じました。無限城は建物の構造やその重力の方向もまともではない様相でその映像化にも驚かされましたが、まさにあの描写は序章に過ぎませんでした。今回の劇場版では、“無限城”の作り込みにかなりのパワーを注いでいることがこの第一章から分かります。
無限城の再現のなさそうな広大さやその特性は原作漫画から描かれていた要素ではあったのですが、今回の劇場版ではその演出をさらに強化。蠢(うごめ)く無限城がどんな様子なのかや、さまざまな構造物の存在がアニメシリーズならではのアレンジで、よりリッチに、より具体的に戦いに華を添えてくれています。
無限城はこれまでのシリーズと同様に3DCGを用いて製作が成されているのですが、その動きや見た目の精巧さや手描きのアニメーションと合わさった時の馴染み方は、まさに日本のアニメーションとしても最上級の仕上がり。そういう意味では今回の劇場版シリーズが「最終決戦編」でなく『無限城編』であることは必然ともいえます。
「続き物なんでしょ?」と出来が不安で足が重くなった人も改めて今回の劇場版のタイトルに安心してほしい──。“猗窩座の再来”も、ましてや“無限城”も映画の出来として担保されている劇場版になっています。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:『「劇場版「鬼滅の刃」無限城編 」第一章 猗窩座再来 第2弾キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable』
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 』第一章 猗窩座再来 公式サイト
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
※煉獄杏寿郎の「煉」は「火」+「東」が正しい表記となります。