<この記事にはアニメ・原作漫画『鬼滅の刃』のネタバレが登場します。ご注意ください。>
『鬼滅の刃』では、原作終了後に出版されたファンブックやコミックの空白ページのメモ書きなどで新事実が多く語られており、意外と知らない「裏設定」もあります。その内容は、驚きの「伏線回収」や、言われなければ気づかないような「細かい設定」、「鬼滅のお金事情」までさまざまです。
◆鬼殺隊の給料はいくら? 柱になるための正式な条件とは?
鬼殺隊には、最上位の甲から乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸まで10段階の階級があります。その給料事情について2019年7月に出版された『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』(出版社:集英社)によると、最下級の癸で給料は約20万円ほどだったそうです。
鬼殺隊士となった炭治郎も最初は最下級の癸からスタートしましたが、最下級で20万円であれば、現代の日本の一般的な会社員と鬼殺隊の給料は大きく変わらないのかもしれません。
しかし、最上位である柱ともなると話は別で、ファンブックによれば「柱になると給料は無限に欲しいだけもらえる」とされており、いかに柱という存在が鬼殺隊、産屋敷家にとって貴重な存在かがうかがえます。
また、そんな柱になる条件も『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』によって明かされています。具体的な柱昇格の条件とは、「最上位の甲まで昇進した隊士が50人の鬼を倒すか、最強の鬼である十二鬼月を1人倒すこと」だそうです。
原作では下弦の鬼に対抗できた鬼殺隊士は、炭治郎たち一部の才能ある隊士のみだったことを考えると、柱への道は果てしなく長く険しいものだといえるでしょう。また、昇格するまでに上弦の鬼に遭遇しないなど、強運を持ちあわせていることも必要なのかもしれません。
◆悲鳴嶼行冥は獪岳を子供のころから知っていた!?
柱稽古編の中で、岩柱・悲鳴嶼行冥の過去や鬼殺隊に入隊するきっかけとなったエピソードが明かされました。また、無限城編に登場した我妻善逸の兄弟子であり、新たな上弦の陸となった獪岳ですが、2人は「まさかの顔見知り」だったことが明かされています。
寺で育ち、身寄りのない子供たちの世話をしていた行冥ですが、その中の1人の少年の裏切りによって沙代という少女を除く全員が鬼の餌食となった過去を持っています。
そのとき、鬼に襲われ裏切りに走った少年こそ、幼き日の獪岳であったとコミックス17巻の145話と146話の間の空白ページにあるメモ書きによって明かされました。
また、「お寺のお金を盗んだことがバレてしまい他の子供たちから責められ、あの日の夜お寺を追い出されました」と、事件に至った経緯についても語られています。
お寺の一件のあと、雷の呼吸を学び始めた獪岳でしたが、雷の呼吸の後継者として将来を期待されながらも、自尊心が高く、欲しがるばかりで人に何も与えることができなかった彼の性分は、少年時代から変わっていなかったようです。
最終的には「生きてさえいれば何とかなる」「死ぬまでは負けじゃない」という考えから鬼になってしまった獪岳ですが、実は少年だったころの「あの日の夜」、既に鬼に魂を売っていたのかもしれません……。
◆無限列車編で煉獄らが目覚められた理由
下弦の壱の魘夢に襲われ、睡眠状態にされた鬼殺隊の中で、炭治郎は夢の中でそれに気づき、自害することで目覚めるという手段を見つけましたが、煉獄をはじめほかの鬼殺隊士たちがどのようにして目覚めたのか? について、実は原作本編にはっきりとした描写はありませんでした。
しかし、コミックス7巻の59話と60話の間の空白ページに書かれている「大正コソコソ補足話」にて、「ねずこが煉獄さんたちの切符を燃やしたので三人は目覚めたよ」と明かされ、この内容がコマ数問題などにより本編に入りきらなかったことも判明しました。
たしかに、煉獄が睡眠状態のまま本能的に動き、自身の夢に入り込んだ娘の首を絞めるという驚異的な反応をみせるシーンはあったものの、伊之助らも気付けば目覚めて戦闘に参戦しており、あまりに自然な展開だったため、そこに疑問を持った読者は少なかったかもしれません。
本来であれば、そのまま割愛されてもおかしくない細かい設定ですが、コミックスにて漏れなく補足説明を入れる点は、緻密な設定を考え、読者を大切にされてきた原作者・吾峠呼世晴先生の人柄を象徴する“ならでは”の演出といえるかもしれません。
◆実は産屋敷輝利哉はコミック1巻で既に登場していた?
鬼舞辻無惨の急襲により、父・耀哉を亡くしたことで、長男である産屋敷輝利哉はわずか8歳にして、急遽第98代当主となりました。
あまりに突然の展開で、理解が追いつかない読者もいたほどだと思いますが、実はコミックス第1巻で既に輝利哉少年は登場していました。
炭治郎が挑んだ最終選別を描いた第6話「山ほどの手が」で、最終選別が行われる藤襲山の入口に、案内人として産屋敷家の2人の子供が提灯を持って登場しますが、このうちの黒髪の方が実は輝利哉であったことが、コミックス17巻の空白ページに書かれているメモ書きによって明かされました。
産屋敷家の男児は病弱のため、魔除けのため13歳までは女の子として育てられる風習があることが原作で語られていますが、髪の色以外、まったく見分けがつかないほど姉妹たちと瓜二つの外見のため、当時既に輝利哉少年が登場していたことに気づかなかった人がほとんどでしょう。
本来であれば、まだ女の子として数年を過ごすはずだった輝利哉少年にとって、父・耀哉の死は分かっていたこととはいえ、あまりに早すぎたといえるかもしれません。
──『鬼滅の刃』では、コミックスの空ページの「大正コソコソ補足話」などで多くの伏線が回収されたり、驚きの裏設定が明かされたりしています。今後もファンブックなどにより、読者の予想を超えるような、さらなる「新事実」が明かされることがあるかもしれません。
〈文/lite4s〉
《lite4s》
Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。
※サムネイル画像:Amazonより 『「鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録」(出版社:集英社)』
※煉獄杏寿郎の「煉」は「火」+「東」が正しい表記となります。
※鬼舞辻の「辻」は「一点しんにょう」が正しい表記となります。