『キン肉マン』はテコ入れによる路線変更があったため、最初にあった空を飛んだりビームを出したりする設定がその後のプロレスでの戦いで邪魔になり、特殊なルールが生じています。また、超人だけあって人間を超越した不思議な現象を引き起こすこともしばしば。

 次の4つはアニメ『キン肉マン』完璧超人始祖編を観るうえで知っておきたい、超人プロレスの暗黙のルールです。

◆どんな凶悪な超人でも従う暗黙のルール

 超人は空を飛べる設定ですが、マッスルスパークやロビン・スペシャルなど相手を空中に投げてかける技を飛んでかわすことはタブーとなっています。

 試合中に空が飛べてしまうと多くの技が成立しなくなるのでこのルールは当然ですが、ミート君の身体をバラバラにして人質にとったり、負けた味方を平気で処刑したりする凶悪な超人でもこのルールには従います。

 ただし、空を飛ぶ設定そのものがなくなったわけではありません。夢の超人タッグ編で敗れたネプチューンマンは、宇宙から地球にやって来ていた仲間の完璧超人たちを撤退させるため、空を飛んで空中で自爆しています。

 また、ザ・ホークマンやペンタゴンといった羽を持った超人は、試合中でも飛ぶことを許されています。いずれもキン肉マンに敗れており、キン肉バスターやキン肉ドライバーなど相手を掴んだ状態で空中に跳び上がり、ホールドしたまま落下する技に対しては羽を持っていても飛んで抗うことはできないようです。

 また、ペンタゴンがウォーズマンに負けたときは、羽をちぎり取られてしまいました。しかし、ロビン・スペシャルのように単純に相手を空中に放り投げて仕掛ける技の場合、彼らなら飛んでかわせるのでかなり有利といえるでしょう。

 もちろん当初あったキン肉マンがスペシウム光線のようなビームを出したり、アイスラッガーのようにマスクのトサカを飛ばしたりすることもなくなっています。これは試合が基本的に超人委員会の管理下で行われるため、空を飛ぶことをはじめこのあたりの技については使わないようにルールを徹底しているのでしょう。

 ただ、ルール無用の悪魔超人や残虐超人たちが、空を飛ばないルールに素直に従うのは不思議ではあります。この技をくらったら死ぬというときでも、空を飛んで技をかわさないルールを決して破らないのは超人としての誇りの高さゆえでしょう。

 しかし、ミート君の身体をバラバラにして人質とする非道な行為は許容しておきながら、決して空を飛んで技をかわすことは許さない超人委員会こそ、不思議な倫理観を持つ組織といえるかもしれません。

◆体の一部や装備品であれば凶器を使ってもOK

 試合において凶器を使うのは反則ですが、ジャンクマンの針やサンシャインの呪いのローラーのように体の一部になっている物であれば、いくら相手を痛めつけてもルール違反にはなりません。しかも、ウォーズマンのベアクローのように装備して使うものも、なぜか凶器扱いにはならないという不思議なルールとなっています。

 ベアクローはペンタゴンを引き裂き、ラーメンマンの頭を貫いて再起不能にした強力な武器です。ウォーズマンの身体の一部かと思いきや、着脱式であることが発覚。両手に装備したり、足に付けてドロップキックで攻撃したりとやりたい放題です。

 しかも、ロビンマスクがベアクローを装備して攻撃したこともあります。ウォーズマンの気持ちを背負ってロビンマスクが決死の反撃をするというシーンでしたが、「それ、ただの凶器攻撃だから」とツッコんだ読者も多いのではないでしょうか。

 これが許されるなら、どの超人も凶器を装備すればよいことになってしまいます。しかし、キン肉マンゼブラが鉄球を握ってパンチしたり、ケンダマンがガラスの破片で攻撃したときは凶器扱いとなっていました。

 こればかりは超人委員会のルールがどうなっているのか不思議でなりません。体に装着するものはOKというルールなら、キン肉マンが頭のアイスラッガーで攻撃している場面も久しぶりに見てみたいところです。

◆超人は自然化学現象を変えられるくらいスゴイ

 『キン肉マン』の戦いでは、たびたび自然化学を無視した現象が起こります。モンゴルマンは、地球において当たり前の法則を超越したことで勝利を収めました。

 モンゴルマンがスプリングマンを破ったとき、その決め手となったのが地獄のシャワーです。これは自らの汗を蒸発させて雲を作り、雨を降らせる技となっています。

 スプリングマンの身体は鋼鉄でできているため、塩分を含んだ雨で錆びてしまい敗北しました。海の近くに住んでいると、車が潮風で錆びやすくなるのと同じ現象なのでしょう。

 しかし、汗の場合、水分は蒸発しますが塩分は残ります。そのため、汗を蒸発して降らせた雨が、スプリングマンを速攻で錆びさせるほどの塩分を含んでいるという設定は少し無理があるハズ……。しかも、このときモンゴルマンはラーメンマンである正体を隠すため、肉じゅばんを着こんでおりどうやって汗をかいていたのかも謎です。

 仮に雨に塩分を含ませることは可能だったとしても、着こんでいた分厚い肉じゅばんの上から汗を蒸発させるのは不可能に思えます。

 しかし、超人は人間を超越した存在ですから、この程度の自然化学現象を覆すことなど決して難しくないと認識しておいたほうがよいのでしょう。

◆超人は理由もなく生き返って来る

 『キン肉マン』は命をかけた熱い戦いが見どころであるため、超人が死ぬことは珍しくありません。しかし、命を落としたはずの超人が何の理由もなく、ひょっこり再登場することがよくあります。

 ロビンマスクは突っ込んで来た飛行機からキン肉マンをかばって下敷きになり、その後谷底に落ちて死んだと思われました。しかし、バラクーダというキャラクターになって再登場。

 そして、彼は飛行機に突っ込まれて谷底に落ちたときの負傷で二度と戦えない体となっていました。そのため、ウォーズマンを戦闘マシンに育て上げてキン肉マンへの復讐を果たそうとします。

 ところが、7人の悪魔超人との戦いでは普通にロビンマスクは、アトランティスと試合をしていました。さらに、この戦いで負けると今度は本当に死んでしまいます。

 しかし、7人の悪魔超人との戦いで敗れて死んだウォーズマン、ロビンマスク、ウルフマンはバッファローマンから超人パワーを分けてもらって生き返りました。

 死んでいたはずの超人が生きていた、パワーを分けてもらうなどして復活したというのは漫画ではよくあるので不思議なことではありません。

 しかし、その後はキン肉マンに負けて死んだブラックホールが、しれっとペンタゴンとコンビを組んでタッグトーナメントに出場。ジャンクマンの針で串刺しになって死んだザ・ニンジャも、王位争奪戦で普通にキン肉マンソルジャーチームの一員として参加しています。

 このように最初こそ超人たちが生き返った理由が描かれていましたが、途中からは特に理由もなく、当たり前のような顔で再登場している超人も多いです。

 そのため、死んだと思っていた超人がひょっこり現れても過剰なリアクションは取らず、作中のキン肉マンたちと同じく、死んだという事実はなかったかのように迎えてあげましょう。

 

 ──『キン肉マン』には違和感あるルールが存在したり不思議な現象が起きたりしますが、昔ながらのファンにとってはそういったアバウトな部分も楽しみの一つとなっています。

 4つの暗黙のルールをおさえておけば、TVアニメ『キン肉マン』完璧超人始祖編をより楽しめるでしょう。

〈文/諫山就〉

《諫山就》

フリーライターとして活動中。漫画・アニメ・医療・金融などの記事、YouTube用シナリオを執筆・編集しています。

 

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