秋本治先生原作の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、『こち亀』)が『週刊少年ジャンプ』に初めて掲載されてから、2026年で50周年を迎えます。    

 一度も休載することなく約40年間連載された同作には数多くの濃いキャラクターが登場しますが、意外にもあまり知られていない裏話が存在します。

◆中川と麗子はなぜ制服の色が違う?──自由な制服を着るための条件が難関すぎる

 中川圭一と秋本・カトリーヌ・麗子は、ほかの警察官とは違って貸与された制服を着ず、黄色やピンクのカラフルな制服を着用しています。

 その理由について、中川はTVアニメ第2話で「日本の警察の制服はイマイチですから、アルマーニでオーダーメイドしたんです」「100万円くらいだったかな」と話し、両津は飲んでいたお茶を盛大に噴き出すほど驚いていました。

 しかし、19948月出版のコミックス第88巻に収録されている「制服大革命!!の巻」で、中川と麗子は警視庁から「私的制服着用許可証明書」というものを交付されていることで、自由な制服を着られることが明かされています。

 これは『こち亀』の世界線のみのフィクションの証明書ですが、交付認定を受けるためには原則として「無遅刻・無欠勤であること」や「20ヵ国語が完璧に話せること」など、難関すぎる条件が提示されているのだとか。

 そのため、両津はこの認定を受けることは自分には不可能だと思い断念。

 ちなみに紫色の制服を着ている安里愛が「私的制服着用許可証明書」を認定されているという描写はなく、なぜほかの警察官と色違いの制服を着ているのかについては明かされていません。

◆両津は19歳で刑事に昇格──尊敬する先輩が目の前で……

 普段は派出所の巡査長として勤務している両津ですが、実は19歳で刑事に昇進していたことがあります。

 このエピソードは19867月出版のコミックス第41巻と、テレビアニメ第122話で明かされており、若かった両津はTVドラマの影響で刑事に憧れ、上司の大原大次郎から助言を受け、指名手配犯を数多く捕まえて手柄を立て刑事課に配属されたのでした。

 そのとき南部という先輩刑事の世話になることになり、南部は両津を弟のようにかわいがってくれました。

 地道な聞き込みや張り込み捜査など、気の遠くなるような仕事に飽き飽きしていた両津を励まし、時には諭す南部でしたが、アニメ版では南部の婚約者が太田黒という男に手にかけられているというエピソードが追加されています。

 太田黒の逮捕に向けて捜査を続ける二人ですが、ある時、両津の20歳の誕生日である33日に「朝まで飲み明かそう」と約束していると、太田黒が部下とともに姿を現しました。

 南部が太田黒を捕まえようとしたとき部下の男が南部に発砲し、両津はそれを目撃してしまいます。

 執念で犯人を全員逮捕した両津でしたが、大原から南部の殉職を知らされ、優しかった南部の笑顔を思い出して両津はその場で泣き崩れました。

 その後、両津は「俺、何も分かっていなかったって気づいて……。お願いします!もう一度、ここで働かせてください!」と上司たちに頭を下げ、再び公園前派出所勤務となります。

 元がギャグマンガのため原作でのラストは笑いのオチがついていますが、アニメ版では最後に現在の両津が南部の墓参りに行くシーンに変更されています。

 同作は人が亡くなることがほとんどないため、このエピソードは『こち亀』屈指のシリアス回ともいえるでしょう。

◆両津と中川は親戚だった!?──両津に顔がそっくりな弟が結婚するときに発覚した事実は……

 両津と中川は19966月放送のテレビアニメ第2話で初めて会いましたが、19991月放送の第111話「兄として」で、遠い親戚であることが判明しました。

 このエピソードでは両津の弟・金次郎が結婚することになり、結婚式をぶち壊されたくないと考えた両津の父・銀治が、結婚式の招待状を抜き取ったことで大きなトラブルに発展。

 ある日、両津がツーリングに誘うと、中川は「母方の祖母の妹の息子の奥さんの甥の姉の娘」の結婚式があると答え、両津が何気なく招待状を見ると、そこには実の弟の名前が記載されていました。

 このとき両津は父親の悪巧みを知らなかったため、金次郎がわざと自分に結婚を知らせなかったと思い込んで大激怒。

 そのまま派出所を飛び出して金次郎のもとに向かった両津でしたが、取り残された中川は「先輩と僕が、親戚になってしまう」とショックを受けた様子で放心してしまいます。

 ちなみに金次郎は両津に顔がそっくりで、兄と同じくつながった太い眉毛の持ち主です。しかし性格は両津と正反対で真面目であり、アニメ版では東京大学出身で弁護士になり、台東区に弁護士事務所を構えていることが明かされています。

 誤解も解けて結婚式は大成功に終わりましたが、両津は中川と親戚になったことを利用し、TVアニメ第112話「身内として」では、中川の父が経営する会社でやりたい放題に振る舞ったのでした。

◆両津は19歳の女性警察官と結婚するはずだった?──作者が明かした「破談」の理由とは

 一部の女性から熱狂的に愛された両津ですが、原作・アニメともに誰とも結婚することはありませんでした。

 しかし、200012月放送のテレビアニメSP9「両さん、最大の危機!ライバルはチャキチャキ江戸っ娘」に初登場した19歳の擬宝珠纏(ぎぼし まとい)とは、紆余曲折を経て入籍直前まで至りました。

 当初、新人警察官として配属された纏とはケンカばかりしていましたが、謹慎処分を受けた両津が纏の実家である高級寿司店で働くことになり、距離が縮まります。

 ですが、両津の祖父・勘兵衛と纏の祖母・夏春都(げぱると)80年以上絶縁していた実の兄妹であることや、両津が擬宝珠家のお宝を売ろうとしていたことが発覚して結婚は破談に。

 秋本先生は200411月出版の『両さんと歩く下町――「こち亀」の扉絵で綴る東京情景』(出版社:集英社新書)で、破談の経緯について「両さんと纏が本当に結婚したら、『こち亀』という作品自体にオチがついてしまう」「又いとこだったことを明らかにして、好き嫌いの関係とは違う身内どうしにしてしまったわけです」と明かしました。

〈文/花束ひよこ〉

 

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