海外での公開からおよそ9ヵ月遅れでついに日本でも『カンフー・パンダ4 伝説のマスター降臨』 がお披露目となりました。
『#ボス・ベイビー』の #ドリームワークス が贈る笑いと勇気のミラクル・アクション、待望の最新作!
シリーズ最強の敵、現る!『#カンフー・パンダ 4 伝説のマスター降臨』
11.20 デジタル先行販売
12.4 Blu-ray&DVDリリース
オリジナル短編「肉まん対決」も収録!https://t.co/YWtrB5obCG pic.twitter.com/Ry4f0KrsPc— NBCユニバーサル公式 (@universal_jp) September 20, 2024
ただし、海外のように劇場での公開ではなく、12月4日発売のBlu-ray&DVDリリースが初の日本上陸という形での公開となりました。なぜ日本では劇場公開できなかったのでしょうか?
◆日本では不遇な『カンフー・パンダ』シリーズ
『カンフー・パンダ』シリーズが日本でも海外と同じように劇場公開されていたのは2011年の『カンフー・パンダ2』まででした。当時は興行収入10億円以上の大ヒット作品だったのですが、状況が変わったのは2016年公開の『カンフー・パンダ3』からでした。
『カンフー・パンダ3』は一度は劇場公開が発表されたこともあったのですが、急遽Netflixでの独占配信が発表されました。これにより残念ながら日本は劇場の大きなスクリーンで上映が実現できなかったという世界でもめずらしい国となりました。
しかも、輪をかけてシリーズに追い討ちをかけたのが、初代から吹替版で主人公ポー役を演じていた元TOKIOの山口達也さんが、2018年に女子高生に対して強制わいせつを行なった容疑で書類送検され、これまでのような芸能活動が終了してしまうという事件がありました。
既に『カンフー・パンダ3』で佐藤せつじさんがポー役のバトンを受け取っていたとはいえ、少なからず従来のポーへのイメージにも影響を与えていたでしょう。
以降、Amazon Prime VideoやNetflixなどで新作TVシリーズなどもコンスタントにリリースされてきた『カンフー・パンダ』でしたが“知る人ぞ知る”シリーズに落ち着いてしまっていました。
◆『カンフー・パンダ4 伝説のマスター降臨』は世界では大ヒットしたけれども……!?
そんな『カンフー・パンダ』シリーズが今年久しぶりに劇場公開作として登場したのが、冒頭で紹介した『カンフー・パンダ4 伝説のマスター降臨』 です。
世界での興行収入はなんと5億ドル以上にものぼる成功作となりました。この数字に及ぶ作品は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や『スパイダーバース:アクロス・ザ・スパイダーバース』など、新型コロナウイルス感染症の流行以降では数えるほどしかないほどで、はっきりと大台と言える数字に到達しています。
これだけの結果を残していれば、日本でも劇場公開に臨んでも良かったといえるのは確かです。
ただ、やはり前述の通り前作にあたる『カンフー・パンダ3』が劇場公開できなかったうえに、吹替キャストのネームバリュー的な引きの強さもない。そんな“知る人ぞ知る”状態の『カンフー・パンダ』シリーズを、改めて今、日本の興行でヒットさせるというのはなかなかハードルが高いのも確かでしょう。
しかも実は作品のクオリティーに対しても気になる部分はあります。
時代を経て映像のクオリティーは高まっているという見方もできるかもしれませんが、一方で実はプロダクションがこの『カンフー・パンダ4 伝説のマスター降臨』 に対して注ぎ込んだ制作費としては、シリーズでもっとも少ないとされています。これまでのシリーズでは、映画の制作費に1億ドル以上の制作費を費やしていたのですが、今作では8500万ドルとされ制作のスケールとしては縮小傾向にあります。
主人公ポーにとっては新たな後継者問題という課題が生まれたり、新キャラクターのジェンとの出会いによるこれまでになかったバディムービー要素が加わったりとストーリー面での新たな風はしっかり加わっています。
一方で「映像的な革新性」のようなパッと見で感じられる引きの要素ははっきり言ってトレーラーなどでは分かりづらく、これまでの『カンフー・パンダ』シリーズを知っている人以上に波及させていくには難しい映画となっていました。
その点では、同じ制作会社のドリームワークス・アニメーション作品である『野生の島のロズ』のほうが直感で魅力を受け取りやすい作品といえます。まるでイメージボードがそのまま動き出したかのような映像は、『カンフー・パンダ』の従来のキャラクター知名度以上の引きが今の日本市場ではあるといえます。
古くからのシリーズのファンとしては少し寂しい扱いではありますが、今ドリームワークス・アニメーションは新しい時代へと突入しているタイミング。ドリームワークス・アニメーション作品としては、ソフト化すら果たせなかった『ルビー・ギルマン、ティーンエイジ・クラーケン』といった前例もあることを思うと、ディスクリリースしてくれただけでも「シリーズを大切にしてくれた」証拠なのかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『Universal Pictures』より