今や原作のないオリジナルアニメーションが少なくなってきましたが、今季のTVアニメで注目を集めているのが『LAZARUS ラザロ』。
『呪術廻戦』や『進撃の巨人』などを手がけてきたMAPPAの製作の新作アニメーションなのですが、それだけでなく製作の布陣から、油断できない作品となっているのです。
◆『LAZARUS ラザロ』は『カウボーイビバップ』を意識したチーム?
『LAZARUS ラザロ』は、海外発のリクエストでスタートした企画という点で特殊です。
物語の舞台は西暦2052年の近未来。脳神経学博士のスキナーが生み出した鎮痛剤・ハプナが副作用のない薬として重宝されていたものの、突如この薬は服用から3年で死をもたらすことが彼から明かされます。
自身の居場所を見つけ出せば、人類は生き延びられるというスキナーを追って、本作では世界中から集められたエージェントチーム“ラザロ”の活躍が描かれるという作品になっています。
あらすじの通り、内容はシリアス。ただし、硬派な雰囲気ながら派手なアクション要素も盛り込んだ作品です。
そんな本作の監督を務めるのが『カウボーイビバップ』や『サムライチャンプルー』といった作品を手がけてきた渡辺信一郎監督。海外からの支持を受け、完全に海外資本で製作する異色のTVアニメとなっています。
◆海外でカルト的な扱いを受ける『カウボーイビバップ』
そもそも渡辺監督が以前手がけた『カウボーイビバップ』は海外でもカルト的な人気を博した作品でした。
『カウボーイビバップ』は1998年にサンライズ制作のもとTVアニメ全26話が放送され、2001年にはその劇場版である『カウボーイビバップ 天国の扉』がサンライズから派生して生まれたボンズ社製作で公開されます。
今でこそ『僕のヒーローアカデミア』シリーズなどで広く知られるボンズでしたが、当時はまさに『カウボーイビバップ』にてスタートダッシュをきめた新進気鋭の制作会社でした。
『カウボーイビバップ』は2071年を舞台にした近未来SF作品で、賞金稼ぎのスパイクたちがさまざまな事件と遭遇していくハードボイルドな作風の作品。もう一つの大きな特徴として、ジャズやブルースなど印象的な音楽の活用の仕方からも人気を博しました。
本作は海外のアニメ専門チャンネルであるカートゥーンネットワークの大人向け作品枠であるアダルトスイムで放送され、根強いファンが生まれるようになりました。
その影響は2021年にNetflixにて実写ドラマシリーズが制作されるといった企画が生まれている通り、今なお健在。
今回の『LAZARUS ラザロ』もまさにそんな『カウボーイビパップ』の再来と言わんばかりに、アダルトスイムでの放送作品として製作されています。今回も渡辺監督ならではの音楽センスが発揮された作品となりそうです。
◆アクションには実写映画から思わぬスタッフが参加!
本作がそんな国際的な企画であることは、アクション監修として名を連ねるチャド・スタエルスキさんの存在からも異色ぶりが明確です。
チャドさんといえば、人気映画『ジョン・ウィック』シリーズの監督として知られ、自身もスタントマンという出自を持つ人物。
今作でもただ仕上がったものを確認するだけでなく、チャドさんから実際にアクションの映像を撮影してもらい、それを参考に映像化していくという本格的な制作過程を踏んでいるというのだから驚きです。
渡辺監督の作品でアクションといえばケレン味のある殺陣にも定評のあった『サムライチャンプルー』が印象的ですが、今回の『LAZARUS ラザロ』は音楽だけでなくアクション面でも新たなマスターピースの誕生が期待できます。
原作となる作品があるわけでもなければ、既存の人気キャラクターがいるわけでもない。そんな中で今回登場する『LAZARUS ラザロ』は、然るべくしてオリジナル作品として堂々と打って出るだけある背景を持った期待作なのです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:https://lazarus.aniplex.co.jp/story/より
オリジナルアニメ『LAZARUS ラザロ』
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