世界中のクリエイターがSFやファンタジーといった超常的なテーマで攻めた内容のアニメーションを製作することでお馴染みの『ラブ、デス&ロボット』のシーズン4の配信が、Netflixで5月15日から始まりました。
シーズン4では新たに10作品が発表されたのですが、バイオレンス描写や不気味なホラー描写などが多いことでもお馴染みのシリーズでありながら、妙に共通しがちなテーマがあります。それが“ネコ”。今回のシーズン4、やけにネコの活躍にフォーカスされています。
◆シーズン4必見! ネコエピソードたち
シーズン4もこれまでのシリーズに違わず攻めたエピソードが目白押しです。『エイリアン3』や『ファイト・クラブ』で知られるデヴィッド・フィンチャー監督がレッド・ホット・チリ・ペッパーズのライブ映像をマリオネットに置き換えて再現するエピソード「Can’t Stop」や、『デッドプール』などで知られるティム・ミラー監督が脚本を務めた、巨大な赤子のような生き物とギャング達の抗争を描いた「400番街のボーイズ」など短編ながら強烈なインパクトを残す作品だらけです。
そんな中、シーズン4で活躍するのがネコたち。シーズン4では複数の作品でネコが主役として活躍します。
たとえば、エピソード「もうひとつの大きなもの」では、人間に飼われている一匹のネコがお手伝いロボットと出会ったことで、人間たちに反旗を翻すという短いながら驚きの展開を見せていきます。
またエピソード「スマート家電と愚かな人間たち」は家電製品たちが人間たちについて各々で思いや愚痴を披露していくのですが、ここでも“オチ”としてネコに関連したアイテムが登場。ここでもおいしい役を担っています。
For He Can Creep pic.twitter.com/WAwHdj393H
— Love, Death + Robots (@lovedeathrobots) May 19, 2025
そしてシーズン4の締めのエピソードである「彼は忍び寄る」では世界を終わらせるための詩を詩人に書かせようとするサタンと、それに対峙する詩人の飼いネコたちの戦いが描かれます。
悪魔に果敢に立ち向かうのがネコであり、それぞれのネコに独自の能力があったりとネコという生き物自体の神秘性も感じられるエピソードになっています。
悪魔や怪物、宇宙人といったモチーフは『ラブ、デス&ロボット』内でも多くの作品で起用されているのですが、それに並ぶように今シーズンでのネコの活躍が目立ちます。
◆ネコを特別視するのは世界共通の認識だった?
面白いのはこの『ラブ、デス&ロボット』が世界のいろんな国のアーティストが監督を務めるシリーズという点です。
製作作品のテーマとして、タイトルにある「ラブ」、「デス」、「ロボット」のいずれかのテーマに沿うものという体裁はあるのですが、なぜかここに“ネコ”という共通項を持つ作品が複数出てくるのが興味深いところ。
実はネコがキーとなるエピソードはこれが初めてではなく、過去にもシーズン1のエピソード「ロボット・トリオ」では、人類が滅んだ後の世界に現れる存在がネコであり、そのネコがその滅亡に絡んでいたことを明かすという展開が用意されています。
シリーズが始まった当初から、『ラブ、デス&ロボット』ではネコの偉大さを暗に伝えていたようにも思えます。
『ラブ、デス&ロボット』は複数のスタジオによるオムニバスシリーズなので、特定のスタジオの傾向だったり、特定の作家の観念が色濃くは出ません。そんな中でこうもネコたちの活躍……、しかもネコが強大な力を持っているかのような描写が重なるのは面白い現象ですこういった結果を思うとネコを特別視するのは世界の共通認識なのかもしれません。
『ラブ、デス&ロボット』以外でも、今年の米国アカデミー賞を制したアニメーション映画『Flow』も、人間が不在の世界を黒ネコが主人公となり冒険していく物語でした。世界の終末との結びつきという点ではどこか『ラブ、デス&ロボット』に近い要素も感じられます。
古代エジプトの時代からネコは神聖な生き物として崇拝されていました。それには穀物を荒らすネズミの天敵として重宝されたという背景もあるそうですが、そういった役目がメジャー出なくなった現代でも、これらのアニメーションでの扱いを思うに、今もなおその神聖視は続いているのが分かります。
『ラブ、デス&ロボット』シーズン4は愛や死、文明の発達といったテーマと並んで、「ネコ」という存在の悠久さを思い知らされる、まさかの新シーズンといえます。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:https://x.com/lovedeathrobots/status/1924510361492889893より