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 第1作目のヒットを経て、11月7日から日本に上陸した中国のアニメーション映画『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』は、日本のアニメーションに親しみが強い人ほど、その表現に驚かされる体験となっていました。

 『ドラゴンボール』のような肉弾戦から異能力バトル物作品のような派手なアクションが詰め込まれているド直球なエンターテイメント作品となっている一方、人間と妖精という二つの種族の戦争危機を描く重厚さにスタジオジブリ作品などを想起する人もいるような作品です。注目したいのは、そういった日本アニメーション作品との共通点が多く見られるからこそ、昨今の“日本の作品との違い”もまた際立って見えてくるところです。

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◆最近の日本のアニメと『羅小黒戦記』の違いとは?

 『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』もとい『羅小黒戦記』シリーズが日本の作品に多大に影響を受けているのは、現在放送中のTVアニメシリーズ(もとい本来はWEBアニメシリーズ)などでも日本のTVアニメ作品などのパロディや引用が含まれていたことからも顕著です。

 しかし、日本ほどアニメーションが短期間に量産されている国も稀であり、頭身の高いキャラクターが縦横無尽に空間を動き回り、戦闘を繰り広げるようなアクション作品を作るとなると、そもそも前例として避けては通れない立ち位置にあるとも言えます。

 そのうえで『羅小黒戦記』が昨今の日本のアクションアニメと特筆して違う点として「過激な表現が避けられている点」です。

 「過激な表現」を具体的にいうと、たとえばバイオレンス描写。昨今のアクションアニメでは出血、流血は当たり前というほど、メインストリームを飾る人気アニメも身体の一部が戦闘で欠損したりという描写が頻出していて、ある意味でそれが“刺激的”な要素になっています。

 しかし『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』では、そういった描写はかなりマイルドなものになっています。多くのキャラクターが「妖精」であるという設定も活かして、銃で撃たれたりしても出血したり、例え腕を斬られても独自の特殊効果が働いたりして、“グロテスクな表現”に至らないようになっています。

 女性キャラクターのお色気要素のようなものも本作では排されています。『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』では主人公の小黒(シャオヘイ)にとっては年上のお姉さん的な立ち位置となる鹿野(ルーイエ)というメインキャラクターが新登場していますが、妙に身体が強調されるような展開やカットなどは設けられておらず、そういった演出がノイズに感じやすい人には具合の良いバランスの作品となっているでしょう。

  “バイオレンス表現”や“お色気表現”がどちらもない上でゴリゴリのアクションアニメーションをやるというのは、昨今の日本のアニメーションとは傾向がはっきり違うと感じられる部分です。

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◆表現はより警戒気味? そもそも日本と中国では市場の傾向が異なる?

 そんな『羅小黒戦記』の演出の傾向の違いがなぜ生まれたのかは、制作側の思想や姿勢だけでもないのでは、とも思える部分です。

 日本に比べると中国はどうしても過激な表現に関しては、制限が加わりやすい傾向にあります。過去にも『進撃の巨人』や『東京喰種トーキョーグール』などの日本のアニメが内容から一挙に有害指定を受けたり、近年でも2021年に江蘇省の消費者委員会が子供に不適切な内容を含む作品としてリストアップが行われ、そこには『名探偵コナン』や『マイリトルポニー』、『ペッパピッグ』といった既に中国でも人気の高かった作品などが含まれていました。

 またそもそも市場がそういった制限の目を敷かれた上で形成されていることも踏まえると、作品の傾向も変わってくるのは必然です。あからさまにバイオレンス要素やお色気要素をセールスポイントにはし難いわけで、作品の表現に対して日本とはまた違った取捨選択を辿っていきやすくなるでしょう。

 ただし唯一、表現という点で『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』が攻めていると感じられる要素が体制に関する考え方です。

 前作にもいえることですが、作中に登場するヴィランは現状の社会体制や権力側に反抗的な思想を持っているキャラクターが配されています。本シリーズでは、そんなヴィラン側を突き放したりはせず、彼らの言い分に関しても考える余地を残してくれているのが絶妙です。

 この点は、バイオレンスやポルノに並んで、テロリズムを助長する表現に対する危険視が強い中国では体制にただ前ならえするだけじゃない気概が感じられるところです。

 

  ──『羅小黒戦記』シリーズは日本にも馴染みのある2Dの手描きアニメーションがメインであることや、『週刊少年ジャンプ』漫画を連想するようなアクション要素盛りだくさんの群像劇作品であることから、とても共感しやすい作品といえるでしょう。だからこそ“違う”部分から国の違いや創作の姿勢の違いなどを観察していきたいところです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:映画『羅小黒戦記2』キービジュアル (C)Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

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