『スーパーマリオ』シリーズが、未就学児を対象としたブランド展開を開始しました。その名も『マイマリオ(MY MARIO)』(以下、『マイマリオ』)。『マイマリオ』では、2023年にヒットした映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の続編にあたり、来年4月に公開が予定されている映画とは違う『コマどりマリオ』というアニメも製作されています。
◆玩具に絵本にアニメーションも 『マイマリオ」とはいったいなに?
任天堂は8月26日に新たな商品シリーズとして『マイマリオ(MY MARIO)』を発売しました。その発売に合わせて新たな映像作品として『コマどりマリオ』も公開。
この『マイマリオ』では絵本、積み木、服やカバン、食器など小さな子供向けの商品を販売するシリーズとなっており、それに合わせて発表された『コマどりマリオ』も各話1分ほどで、掛け声程度のセリフしか登場しないシンプルなコマ撮りアニメーションです。
今回発表されたのは第1話「マリオのひげ」、第2話「ぼうし とどくかな?」、第3話「こうらに ちゅうい!」の全3話。それぞれゲームではおなじみの『マリオ』のBGMが流れる中、パペットのマリオがさまざまなアクションを繰り広げる内容です。“親子で一緒に楽しめる”というブランドの方針に合致するような、かわいく洗練されたデザインの仕上がりとなっています。
ドワーフが制作に携わった
ストップモーションアニメーション
『マイマリオ「コマどりマリオ」』が
公開されました!ぜひご覧ください✨
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— dwarf studios (@dwarf_inc) August 26, 2025
本作にはクレジットがなく、制作の具体的なスタッフなどは明らかにはなっていないものの、制作にはアニメーション制作会社のドワーフが携わっていると明らかになっています。
ドワーフといえば、『こまねこ』シリーズや「ゼスプリ キウイ」のCMシリーズなど、ストップモーションアニメーションでの活躍が顕著な制作会社。任天堂に関連した活動では、直近でもNetflixアニメシリーズ『ポケモンコンシェルジュ』の制作担当でも知られており、『ポケモン』だけでなく『マリオ』というもう一つのビッグネームのアニメーション制作に携わる形となりました。
宮本です。私たちはいま、スーパーマリオの新たなアニメ映画を作っています。
この映画は、米国を含む多くの地域で2026年4月3日、その他の地域では4月中に劇場公開する予定です。 [1/2]— 任天堂株式会社 (@Nintendo) March 10, 2024
『マリオ』のアニメ化企画では、『ミニオン』などでも知られるイルミネーションエンターテインメントと任天堂の共作で『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を2023年に発表し、来年2026年4月には続編映画の公開も予定されています。
しかし、アニメーション企画としては、今回のように一つのスタジオや手法に限らずターゲットやブランドのねらいに合わせて、別の企業とも合作していくようで、マリオというキャラクターの幅を広げていく姿勢が感じられる機会ともなりました。
◆ゲーム会社であることも忘れていない? さらなるもう一つの“アニメーション”とは?
ゲーム会社である任天堂が、キャラクターのゲーム以外の商品展開に注力しているニュースとしても受け取れそうな、今回の『マイマリオ』シリーズの発表ですが、実はこの商品媒体の一つにも“ゲーム”が存在します。それがタブレットやスマートフォン、Nintendo Switch、Nintendo Switch2向けアプリとして無料でのリリースが発表された『かおマリオ』です。
このアプリは“マリオの顔を触って遊ぶおもちゃのようなアプリ”としてリリースされており、画面上に表示されたマリオの顔を引っ張ったり、つついたりすることでマリオがさまざまな反応をするというものです。過去のゲームシリーズでもミニゲーム的にマリオの顔を操作するという類似したものは発表されていましたが、それ自体がメインとなる作品は今回が初めてです。
この『かおマリオ』の見事な点は、一切チュートリアルなどがない中で、直感的に「できるかな?」と思った行動に対して、しっかりマリオがそれぞれの反応をしてくれることにあります。
何回も同じ場所をつついたらどうなるのか。二本指で拡大や縮小させるピンチアウトやピンチインをしたらどうなるのか。帽子や眉毛や鼻など操作する場所によってどうなるのか。回転させる操作をしたらどうなるのか。「これをしたらどうなるのかな?」という操作に対してしっかり反応が個別に用意されているのが見事で、小さな子供だけでなく大人でもその自由度に感心する内容になっています。
ゲームでおなじみの“ハテナブロック”のボタンを押すと、アイテムや敵を使ったさらに一歩踏み込んだアクションも用意されていて、隠しアクションが用意されているような点ではとても“ゲーム的”ともいえます。
昨今のアニメーションの賞ではゲーム部門が用意されている賞も増えてきています。プレイヤーの操作に対してキャラクターたちがどんな反応をするのかや、美術がどう変化するのかといったアニメーションの部分での視点での評価がされるようになってきました。まさに『かおマリオ』は、任天堂自身がマリオとアニメーションをゲーム的に掛け合わせたら、何ができるのかの答えを見せてくれたようです。
『マイマリオ』はマリオというキャラクターのポテンシャルがまだまだあるということを思い知らされる、そんなシリーズとなりそうです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:任天堂株式会社公式Webサイトより © Nintendo