『まんが日本昔ばなし』の公式YouTubeチャンネルが今年の10月に開設されました。当初の登録者数はわずか百数十人程度でしたが、X(旧Twitter)ユーザーの投稿をきっかけに口コミで広がり、12月15日時点で登録者数は約18万人を突破しています。
現在、チャンネルでは12本のアニメ本編が無料公開中ですが、その中には屈指のトラウマエピソードとして名高い「キジも鳴かずば」も含まれており、X上では「あのトラウマ回をまた見てしまった……」といった投稿が相次いでいます。
さらに、現在は未公開ながら「吉作落とし」「飯降山」もトラウマ回として当時の視聴者の記憶を呼び覚ましているようです。いったい何が、それほどまでに視聴者へインパクトを与えたのでしょうか?
◆「キジも鳴かずば」──娘の歌が父親を追い詰める救いゼロの展開
「キジも鳴かずば」は、12月15日の時点で公式YouTubeチャンネルにて視聴できますが、地上波での放送は難しい内容かもしれません。
X上では「教訓的なものが受け取れない、ただただイヤな話」「人柱って言葉の意味をこれで覚えた」という投稿が相次いでいます。さらに「幼少期のトラウマになって『まんが日本昔ばなし』はホラーアニメだと思っている」という声まで上がっています。
ある日、貧しい父が病気の娘のために地主の蔵から無断で米と小豆を持ち出します。元気になった娘が無邪気に「あずきまんま食べた」と手まり歌を歌ったことで悪事がバレてしまいます。折しも洪水が続いていた村で「人柱を立てよう」という話になり……罪人である父が選ばれ、土手に埋められてしまいまったのでした。
娘はその後一言も喋らなくなり、何年も経ったある日、猟師が雉(キジ)を撃ち落とすのを見て初めて口を開きます。「キジよ…お前も鳴かなければ撃たれないで済んだものを」──それが最後の言葉でした。
日本中の子供に衝撃を与えた『まんが日本昔ばなし』屈指のトラウマ回と語られるこのエピソード。娘に悪気はない、ただ歌っただけ──それなのに結果は悲劇。この救いのなさに、当時の視聴者は震え上がりました。子供向けアニメでありながら容赦がないという点が、当時の視聴者にトラウマを植え付けたのです。
◆「吉作落とし」──助けを呼んでも誰も来ないリアルすぎる絶望
「吉作落とし」もトラウマ回として繰り返し話題にあがるエピソードです。今のところ公式YouTubeチャンネルでは未公開ですが、「現実でも起こる可能性がある」「命の危機に立たされたときどうしようもできないと思うとマジで怖い」といった投稿がX上では多く見受けられます。
岩茸取りをしていた吉作が、断崖絶壁の岩の棚で休憩しようとした瞬間に悲劇が起きます。綱に手が届かなくなってしまい、岩壁の途中に取り残されたのです。
「おーい!誰か助けてくれ!」。吉作は何日も叫び続けますが、声は崖にこだまして「化け物の声」に聞こえてしまいます。一人ぼっちの吉作を探す人は誰もいません。飢えと寒さで意識が朦朧とする中、吉作は岩の棚から身を投げてしまいます──。
「ほかのトラウマ回は実際に起こらないと分かっているけど、このエピソードは実際にあり得るから怖い……」といった投稿がXにあるように、妖怪でも呪いでもない現実の怖さが、今見ても刺さる内容です。
◆「飯降山」──尼僧たちによるおにぎりの奪い合いに震え上がる
「飯降山」も今のところ公式YouTubeチャンネルでは未公開ですが、X上ではたびたび『まんが日本昔ばなし』のトラウマ回として取り上げられています。
山で修行する3人の尼僧のもとに、毎日おにぎりが3つずつ降ってきます。「仏様からの褒美」と喜ぶ3人でしたが、飢えと欲は人の心をおかしくさせます。
ある日、2人の尼僧が結託して1人を手にかけます。「これで分け前が増える」と期待しましたが、おにぎりは2つに減っていました。残ったおにぎりを独り占めしようと、再び事件が起きてしまいます。
しかしその結果、おにぎりは一つも手に入らなくなってしまいました。春になって山を下りて村人の元に現れたのは、一番年上の優しそうな尼僧だけでした。
「子供のころに見てモヤっとして、ずっと覚えている」という声も多いこのエピソード。おにぎりという食べ物のせいで壊れていく人間関係が淡々と描かれる心理ホラーは、当時の視聴者の心に暗い影を落としました。
──『まんが日本昔ばなし』はたんなる子供向けのアニメではなく、多くの人にトラウマを残したアニメでもあります。かつて視聴していた人の中には、今では親となって子供と一緒にYouTubeで楽しんでいる人もいることでしょう。
令和の時代は放送当時よりもコンプライアンスが厳しいため、過激なエピソードはYouTubeチャンネルにアップされない可能性もあります。「ただの昔話」ではないという点が『まんが日本昔ばなし』の持ち味の一つであり、多くの人の記憶に今もなお残っている一因なのかもしれません。
〈文/コージ 編集/相模玲司〉
※こちらの記事は2025年12月15日の時点の情報に基づいて記事を制作しています。
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