『NARUTO -ナルト-』は物語が進むにつれて、里にまつわる悲しい過去や千手一族とうちは一族の確執など、次々と知られざる過去が明かされていきました。それらの謎を解くヒントは、実は漫画第1巻から随所に「伏線」として散りばめられていました。

◆ただのネタ技ではなかった「おいろけの術」

 コミック1巻からナルトが使う、最初に覚えた忍術が「おいろけの術」でした。イタズラ心と周囲の気を引くためにナルトが影で特訓のすえ編み出し、三代目火影・猿飛ヒルゼンの孫、木ノ葉丸にも受け継がれたこの術。「ネタ技」と思われがちですが、のちに物語の重要な場面で登場しています。

 暁のペイン六道が木の葉の里を急襲。地獄道に追い込まれた木ノ葉丸は、ナルトから密かに伝授されていた螺旋丸により見事に地獄道を撃破。直前の回想シーンも相まって、過去に自ら伝授を志願して習得した「おいろけの術」が大きな伏線となり、現場にいたエビスや読者をおおいに驚かせました。

 また第四次忍界大戦の最終局面にて、大筒木カグヤとナルト、サスケの対戦中、カグヤのスキを作るためにサスケの援護を受けて、ナルトの「おいろけ・逆ハーレムの術」が炸裂。見事カグヤの意表を突き一撃お見舞いすることに成功しました。

 ナルトの代名詞となった螺旋丸以上に、実は特訓を重ねていたのが「おいろけの術」だったこともナルト本人によって明かされており、今なおX(旧Twitter)をはじめとするSNSでは盛り上がりを見せています。

◆ナルトとその父親・四代目火影

 ナルトの父親は四代目火影・波風ミナトであることがのちに自来也と綱手の会話で明かされましたが、物語の随所にヒントは隠されておりそれはコミック第1巻から既に描かれています。

 漫画の第1話で語られた“九尾の妖狐の言い伝え”ですが、最後に「その忍の者 名を四代目火影と申す……」と、明らかに歴代火影の中でも特別な人物として印象づけられていました。

 第2話では三代目火影から、四代目が「里の者たちにナルトを英雄として見てほしいと願っていた」ことが語られ、ナルトと特別な関係だったことも描かれています。

 うちはイタチは鬼鮫と木の葉の里を訪れた際、カカシに目的を聞かれ「四代目火影の遺産ですよ……」と回答。カカシが心の声で「ナルトか……」とすぐに察した点や、“遺産”という言葉を使った点からも、「息子なのでは?」と察した読者も多かったようです。

 また、ナルトの容姿も大きなヒントになっており、四代目火影・波風ミナトと近しい髪型、かつ金髪に碧い目。同じ特徴を持った忍が木の葉の里にいないことも、親子関係への大きな伏線となっていました。

◆イタチの存在と本心

 死後に真実が明かされ、実は誰よりも弟と里を想っていたことが分かったうちはイタチ。彼と弟のサスケをめぐる確執は原作でも重要な要素として長きにわたって描かれてきましたが、実は漫画1巻からサスケが兄、イタチの存在と彼の本心を察しているような描写があります。

 漫画第4話のサスケが自己紹介をしている中で「夢なんて言葉で終わらせる気はないが、野望はある!一族の復興とある男を必ず…殺すことだ」と、復讐したい人物がいることがまず明かされます。

 そして第7話、カカシの鈴取りテストでサスケとサクラが2人きりになったシーン。鈴が取れずいらだつサスケは突然感傷的になり、「あの時……泣いてた……」「オレの……」と独り言をつぶやきますが、のちにこれが「うちは一族が皆殺しにされた夜の、兄・イタチの涙」だったと分かりました。

 うちは一族を皆殺しにし、里を抜けて暁の一員となったイタチ。彼が「実はいい人では?」と予想できるヒントはのちに物語の中でいくつも描かれ、最終的にすべての真実は62巻の第590話、穢土転生で蘇ったイタチからサスケに伝えられました。

 まさか583話も前から、ここまで壮大な伏線となるセリフが既に描かれていたとは、まさに緻密な伏線回収といえます。

◆コスチュームに隠されていた母親の出自

 早い段階からナルトの父親が四代目火影なのでは? と予想した読者は多かったと思いますが、母親については長く明かされませんでした。漫画53巻第497話でナルトの精神世界に登場した母・うずまきクシナにより、ナルトに自身の出自などが語られましたが、実は第1話からその人物像を示唆するヒントが作中には描かれていたのです。

 それが「ナルトと木の葉の里の忍のコスチューム」です。木の葉の里の忍は一部の人物を除き、中忍以上から「黒装束にベスト」という制服になっていますが、黒装束の二の腕部分とベストの背面中央には、のちに「渦潮隠れの里と木の葉の里の友好の証」と明かされた「うずまきの紋章」がデザインされています。

 下忍以下の服装は基本的に自由ですが、なぜかナルトのコスチュームにだけ、同じく両肩と背中に大きな「うずまきの紋章」がデザインされており、クシナの故郷である渦潮隠れの里とナルトの関係性を示す伏線となっていました。

 さらに、ナルトのコスチュームがオレンジ色であることも、実は伏線だったことが判明します。クシナは自身の赤い髪と、過去に自分をバカにした男子を半殺しにしたエピソードから「赤い血潮のハバネロ」と言われていたことを明かしており、「木の葉の黄色い閃光」という通り名を持っていた父・ミナトとの間の子ゆえ、赤と黄色の中間色のオレンジとなっていました。

 クシナから両親の馴れ初めを聞いたナルトは、嬉しそうに「木の葉のオレンジ火影だってばよ!」と語っていることからも、原作者によってナルトのコスチュームの色が両親の特徴を示唆していたものと推察できます。

 そして、忘れてならないのがナルトの姓です。本来は父・ミナトの姓「波風」を名乗るのが自然ですが、母の姓を名乗り「うずまきナルト」となっています。これは三代目火影の意向もあり「ナルトとミナトの親子関係を隠すため」というのが通説となっていますが、作中では明言はされていません。

 しかし、少なくとも四代目火影の設定(名前)が確定した時点で、うずまき姓はナルトの母親の出自についての伏線とされたのは間違いないでしょう。

〈文/lite4s 編集/乙矢礼司〉

 

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