サスケを偏愛する変態キャラのイメージが強い香燐ですが、実はとんでもない才能を秘めた忍でした。原作では目立った活躍は少なかったですが、もし香燐がその力を十分に発揮していたら、忍界の歴史が変わっていたかもしれません。

◆香燐はナルトの母・クシナと同じ「うずまき一族」の末裔

 香燐は、ナルトの母・クシナと同じく「うずまき一族」の末裔です。うずまき一族は封印術に長け、高い生命力を持っているため、木ノ葉の初代火影・柱間は妻にうずまき一族のミトを、四代目・ミナトはクシナを迎えています。

 うずまき一族は、かつて渦潮隠れの里に住んでいましたが、滅亡し、一族は故郷のない流浪の民として世界各地に離散しました。暁のリーダー・長門など、わずかな生存者しかいない希少な血統でもあります。

 戦災により故郷を追われ、草隠れに逃げのびた香燐は、ここで過酷な扱いを受けます。アニメでは、体を噛んでチャクラを回復させる特異体質を目当てに、強制的に戦場にかり出され、里では奴隷同然の扱いを受けていたことが描かれました。

 香燐は、ミト、クシナ、長門などそうそうたる人物を輩出しているうずまき一族の末裔として、ナルト、サスケらに勝るとも劣らない才能を秘めていた忍の1人といって良いでしょう。

 もしも、香燐が木ノ葉の里でナルトやサスケ、サクラと一緒に成長していたら、血筋的にナルトの妻の候補として縁談が持ち上がったかもしれません。うずまき一族の復興も夢ではなかったでしょう。香燐は貴重な能力を持ちながらも、恵まれない環境で育った不遇の出自を持つキャラといえそうです。

◆尾獣をも縛るうずまき一族に伝わる封印術「金剛封鎖」

 鷹のメンバーになったあともしばらくは、香燐の秘めた能力が開花することはありませんでした。しかし、第四次忍界大戦で、サスケがマダラに瀕死の重傷を負わされたとき、猛攻を受けながらもサスケの元に急行する中で、突如としてうずまき一族の能力に目覚めます。

 香燐は、「金剛封鎖」といううずまき一族に伝わる強力な封印術を発動させました。これは、尾獣をも縛る能力で、これまで九尾化したナルトを抑え込んでいたヤマトの能力を遥かに超えるものでした。これを見た大蛇丸は「うずまきクシナと同じ力……」「今になってやっと……」と心の中で漏らしており、能力の開花を待ちわびていたことがうかがえます。

 香燐が小さいころから木ノ葉隠れの忍として過ごし、アカデミーに入学して忍術を基礎から正しく学んでいれば、もっと早くに「金剛封鎖」を使いこなせるようになっていたかもしれません。

 香燐の能力があれば、尾獣が暴走したときの対策も立てやすくなり、他里が所持している尾獣への脅威も軽減できたはずです。

 また、ミト、クシナと同じくうずまき一族の血を引く香燐は、自身が人柱力になる可能性もあるため、ナルトの精神的な痛みを共有できる唯一の存在となれていたかもしれません。

◆体を噛むだけで回復させる「特異体質」、忍界屈指の「感知能力」 

 香燐は、自身の身体を噛ませるだけで相手にチャクラを分け与えられるという特殊な体質の持ち主です。体に残った無数の歯形は、草隠れで負傷した大勢の忍に長年噛まれ続けたことでできたものだったことがアニメで明かされました。

 第四次忍界大戦で重症を負ったサスケを助けに行く際、ネジら多くの忍の命を奪った「木遁・挿し木の術」をまともに喰らい、胸を貫かれながらも、自身の手首を嚙んで回復していたことから、この能力は自分自身にも適用できることが分かっています。

 また、チャクラ感知能力も持っています。自身のチャクラを消して敵の感知から逃れたり、チャクラの乱れから相手のウソを見抜いたりすることもできるなど、感知の射程範囲は非常に広いため、要人の護衛など重要な任務には最適です。

 回復、感知という忍にとっての重要な2つの能力を持ちあわせた香燐は、忍界の中でもかなり貴重な存在です。鷹のような少数集団でなく、大国で重要なポジションに就いたり、高いランクの任務に抜擢されたりすることも可能だったでしょう。

 ダンゾウとの交戦では、サスケに捨て駒のように扱われ、仲間でありながら命を奪われかけましたが、サスケが最後まで命を落とさずに闘い抜けたのは、香燐の能力があったからこそだったといえるかもしれません。

◆綱手と香燐の医療2本柱で木ノ葉の忍の生存率は飛躍的に上がる?

 木ノ葉の里において、医療忍術のスペシャリストといえば五代目火影・綱手です。彼女の提案により里の任務には医療忍者の同行が必須となった結果、任務終了時の生存率が上がったという実績もあります。しかし、医療忍術は回復に時間を要するというリスクがあります。

 また、医療忍術は繊細なチャクラコントロールが必要なため、医療忍者は自分自身が傷ついた場合、回復するのが難しいという欠点もあります。第四次忍界大戦でも、綱手は闘いに集中するため、「創造再生」を使い、口寄せしたカツユに回復を任せていました。

 一方、香燐の回復能力は、医療忍術よりも使い勝手が優れています。たとえば「木遁・挿し木の術」を喰らった瞬間に自身を噛み、回復しながら行動を続けていました。努力すれば誰でも習得できる術ではありませんが、医療忍術や、重吾の血肉を分け与える能力など回復系のあらゆる能力の中でも、使い勝手はダントツに良いといえます。

 第四次忍界大戦で、鷹でなく忍連合軍の医療班に配属されていれば、大幅に犠牲者を減らすこともできたでしょう。また、香燐が木ノ葉の忍になっていれば、綱手とタッグを組んで急を要する重傷者と、そうでない負傷者に選別して治療にあたるなど、医療忍術の分野で革新的な体制づくりが可能になっていたかもしれません。

 

 ──希少かつ貴重な能力を持った香燐は、サスケを助けるためだけに鷹のメンバーとして行動し、秘めた力を十分に発揮できませんでした。

 恵まれた環境で育ち、能力を扱うための適切な修行さえできていれば、忍界の歴史をも変える一流の忍になっていたかもしれません。

〈文/lite4s〉

《lite4s》

Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。

 

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