カカシの親友・オビト、マダラの弟・イズナには、偶然とは思えない「奇妙な一致」がいくつもあります。

 ナルトとサスケがアシュラとインドラの生まれ変わりだったように、もしかするとオビトは「イズナの生まれ変わり」かもしれません。

◆イズナの目を受け継いだのはオビト

 2人をつなげるのは、イズナからマダラへ、マダラからオビトへ受け継がれた「イズナの眼」です。うちは一族は、万華鏡写輪眼の瞳力を使いすぎると失明しますが、その唯一の解決策が「眼の移植」です。

 元々は愛情深く優しい人物だったマダラは、二代目火影・扉間との戦闘で重症を負い、回復の見込みがないと分かった弟・イズナの眼を受け継ぐことを決意。イズナはうちはの将来を兄に託し、この世を去りました。

 永遠の光を得たマダラでしたが、一族の存亡を賭けて闘った初代火影・柱間との闘いに敗れます。命からがらひっそりと生き続け、復活の計画を企てたマダラはオビトを利用するために自身の眼を託しています。

 一見すると、マダラは己の計画のためにオビトを利用したにすぎません。しかし、当時はまだうちは一族のクーデター前で、ほかにもめぼしいうちはの候補者は多くいたにもかかわらず、うちはの中でどちらかというと落ちこぼれだったオビトを選んでいます。用意周到なマダラが、「うちはなら誰でも良い」と安易に人選するとは思えません。

 リンがカカシによって命を奪われるシーンをオビトに見せたのも、マダラの計画だったため、オビトの弱みを握っていたことが理由とも考えられます。しかし、愛情深いうちは一族の忍なら誰にでも弱みはあるもの。マダラがオビトを選んだ理由には、理屈を超えた「運命的な何か」があったと考えられるでしょう。

◆2人に浮かび上がる「奇妙な一致」

 『NARUTO -ナルト-』の登場人物は、それぞれ誕生日、血液型、趣味に至るまで細かく設定されています。現実世界では少数派のB型、AB型が過半数を占めるなどの傾向はありますが、その中でもオビト、イズナには偶然とは思えない「奇妙な一致」があります。

 それは、2人とも誕生日が210日、血液型がO型と、まったく同じであることです。確率でいうと1200分の1以下で、ありえない数字ではありませんが、原作者が任意に設定していることを加味すると、ただの偶然で片づけるには少々疑問が残ります。

 それだけでなく、他民族の集まりである木ノ葉の中で、2人はうちは一族という狭いコミュニティに属し、奇しくも「イズナの眼」でつながっています。

 血液型が眼の移植の適合条件にないことは作中で判明しており、眼を受け継ぐというストーリーのために、同じ血液型に設定した可能性はなさそうです。

 そのため、誕生日、血液型の一致には何か意味があると考えるほうが、自然だといえるでしょう。もしかすると、原作者・岸本斉史先生が読者に向けて残した「裏のメッセージ」だったのかもしれません。

◆オビトとイズナ、2人が賛同した「マダラの思想」 

 もう一つ、オビトとイズナを紐づけるのが「マダラの思想」への共感です。第四次忍界大戦では、復活したマダラは「月の眼計画」こそが世界に平和をもたらすという思想を掲げ、その思想に共感、賛同し、ともに戦ったのが実の弟・イズナとオビトの2人でした。

 一旦は頓挫しましたが、復活の希望を見出し、マダラが計画の実行を任せたのがオビトです。マダラの緻密なマインド・コントロールによって自分に従うように仕向けていますが、オビトからはマダラへの愛情も感じられます。

 また、数あるうちは一族の衣装の中で、第四次忍界大戦に参戦した際のオビトが身につけていたのは、マダラやイズナの時代に彼らが着ていた「旧式」のものでした。動きやすさなどの面で改良された現代の衣装もある中、あえて当時の衣装を選んだのは、紛れもなく「マダラ、イズナの想いを背負って闘う」という意志のあらわれといっていいでしょう。

 オビトは「昔から……別にアンタを仲間だと思ったことはない」と、突き放すようなセリフを言い放っていますが、本当は「裏切られたくない」「利用されていると認めたくない」という心の声だったのかもしれません。

◆オビトが最後に裏切ったのは「イズナの意志」?

 オビトはただの「捨て駒」としてマダラに利用され、マダラの真意を知ったオビトは最終的にマダラの命を奪おうとしますが、これはイズナの意志だったとも考えられます。

 オビトは、自分が利用されていることに薄々気づいていましたが、「アンタにとって……オレは何だ?」と問いかけ、マダラの気持ちを確かめているシーンからは、本当は信頼してほしかったというオビトの本音がうかがえます。

 その後、淡い希望は打ち砕かれ、オビトはマダラの思想を否定して考え直すように語りかけています。イズナが生きていたとすれば、「一族のため」という目的を逸脱し、忍の道を外れた兄を同じように諫めたのではないか? と言わんばかりのセリフでした。

 闘いに敗れたマダラは、最期に柱間と和解してこの世を去りましたが、オビトだけはマダラを改心させ、何とか生き続けてほしいと願っていたとも考えられます。裏切りの前の問いかけは、オビトの魂に憑依した弟・イズナの心の叫びだったのかもしれません。

 

 ──愛情深いうちは一族に生まれたオビト、イズナは、どちらも哀しい末路を辿りました。これも、一族の中でとりわけ2人の愛情深かったことのあらわれでしょう。

 愛情と絶望が表裏一体のうちは一族には、まだまだ原作で描き切れなかった「裏のメッセージ」が潜んでいるのかもしれません。

〈文/lite4s〉

《lite4s》

Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。

 

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