※この記事にはTVアニメ・原作漫画『NARUTO -ナルト-』のネタバレが含まれます。ご注意ください。
※本記事はTVアニメ・原作漫画『NARUTO -ナルト-』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。
物語の終盤まで読み返すと、ナルトの服装や何気ないセリフ、そして序盤のギャグのような術まで、のちの展開につながる手がかりに見えてきます。『NARUTO -ナルト-』は、里の歴史、うちは一族の真実、ナルトの両親といった大きな謎が、物語の進行とともに少しずつ明かされていく作品です。
中でも興味深いのは、そのヒントの多くが第1巻の時点で早くも描かれていた点です。読み始めたばかりの読者にはたんなるキャラクター描写に見えていた場面が、後から振り返ると重要な伏線として機能していたことに気づかされます。
◆ギャグ技に見えた「おいろけの術」が終盤まで残った理由
ナルトが序盤から使っていた代表的な術といえば、「おいろけの術」です。忍者学校の問題児だったナルトが、周囲を驚かせたり大人を困らせたりするために編み出した術であり、最初は完全にギャグ寄りの技として描かれていました。
しかし、この術はたんなる笑いのための小ネタで終わっていません。ナルトは人の意表を突くことに長けた忍であり、「おいろけの術」もまさにその性格を表す技でした。相手の注意をずらし、一瞬の隙を作るという意味では、のちの大きな戦いにも通じる発想が含まれています。
その流れを象徴するのが、木ノ葉丸との関係です。ナルトの影響を受けた木ノ葉丸は、当初「おいろけの術」を教わる相手として登場しました。ところがのちにペイン六道が木ノ葉の里を襲撃した際、木ノ葉丸はナルトから受け継いだ螺旋丸で地獄道を撃破します。
ギャグ技の弟子入りに見えていたやり取りが、のちに木ノ葉丸の成長とナルトからの継承を示す場面へつながるわけです。最初に笑いとして提示された師弟関係が、シリアスな戦場で意味を持つ構成になっていました。
さらに終盤、大筒木カグヤとの戦いでも、ナルトは「おいろけ・逆ハーレムの術」を使用します。最強格の敵に対して、力だけではなく意表を突く発想で隙を作る展開は、ナルトらしさが凝縮された場面といえます。序盤のネタ技が、最後の戦いでも通用する切り札の一つとして描かれたことは、かなり印象的です。
◆第1話から特別に描かれていた四代目火影
ナルトの父親が四代目火影・波風ミナトであることは、物語が進んでから明かされます。ただ、親子関係を示すヒントは序盤からいくつも置かれていました。
第1話では、九尾の妖狐を封印した人物として四代目火影が語られます。歴代火影の一人というだけでなく、里を救った特別な忍として強く印象づけられていました。さらに第2話では、三代目火影が「ナルトを英雄として見てほしい」という四代目の願いに触れています。
この時点では、九尾を封印された少年と、その封印を行った火影の関係に読者ははっきりとは気づけません。しかし、四代目がナルトに対して特別な願いを残していたことは、のちの真相を知ると大きな意味を帯びます。
また、うちはイタチと干柿鬼鮫が木ノ葉の里を訪れた際、イタチはナルトを「四代目火影の遺産」と表現しました。単に九尾を封印された器という意味にも取れますが、「遺産」という言葉には血筋や継承を連想させる響きがあります。
外見も重要な手がかりでした。ナルトの金髪と青い目、そして快活な雰囲気は、のちに描かれるミナトの姿とよく重なります。物語の序盤では見逃しやすい特徴ですが、読み返すとかなり分かりやすい親子のサインとして配置されていたことが分かります。
◆サスケの一言に隠されていたイタチの涙
うちはイタチの真実もまた、長い時間をかけて明かされた大きな伏線です。サスケにとってイタチは一族を滅ぼした兄であり、復讐すべき相手として描かれていました。しかし、その憎しみの奥には、序盤から小さな違和感が残されていました。
第4話でサスケは自己紹介の中で、一族の復興と「ある男」を倒すことを自分の目的として語ります。この段階で、彼の人生を決定づけた過去があることは示されています。
さらに第7話、カカシによる鈴取り演習の場面で、サスケは「あの時……泣いてた……」「オレの……」とつぶやきます。初読時には意味がつかみにくい独白ですが、物語が進むと、これがうちは一族が滅ぼされた夜に見たイタチの涙を指していたことが分かります。
イタチは冷酷な兄としてサスケの前に立ちはだかりますが、真相が明かされると、彼は里と弟を守るために苦しい選択を背負っていた人物でした。サスケが記憶の奥で捉えていた涙は、イタチの本心を示すもっとも早い手がかりだったといえます。
たんなる復讐劇に見えた兄弟の物語が、後に里の歴史やうちは一族の悲劇へと広がっていく。その入り口が第1巻の短いセリフに置かれていたことを考えると、かなり緻密な構成です。
◆ナルトの服に刻まれていた母のルーツ
ナルトの父親については、四代目火影との関係を早くから予想していた読者も少なくありません。一方で、母親であるうずまきクシナの存在は長く伏せられていました。それでも、彼女につながる手がかりは、ナルトの服装にすでに描かれていました。
木ノ葉の忍たちの服には、渦を思わせる紋章が入っています。これは後に、渦潮隠れの里と木ノ葉隠れの里の友好を示すものだと分かります。そしてナルト自身の服にも、肩や背中に大きく「うずまき」の紋章があしらわれていました。
下忍以下の服装は比較的自由であるにもかかわらず、ナルトの衣装にはこの紋章が強く押し出されています。あとから見れば、母であるクシナの出身と、ナルトの姓「うずまき」をつなぐ伏線だったと考えられます。
さらに、ナルトのオレンジ色の服にも意味を見いだせます。クシナは赤い髪を持ち、「赤い血潮のハバネロ」と呼ばれていました。父であるミナトは「木ノ葉の黄色い閃光」です。赤と黄色が重なることで生まれるオレンジは、ナルトが両親の特徴を受け継いだ存在であることを象徴しているようにも見えます。
ナルトが父の姓である「波風」ではなく、母の姓である「うずまき」を名乗っていることも、後から考えると大きな意味を持ちます。ミナトとの親子関係を隠すためという事情が考えられる一方で、物語上はクシナや渦潮隠れの里の存在を示す重要な手がかりにもなっていました。
──『NARUTO -ナルト-』の伏線は、大げさに目立つ形で置かれていたものばかりではありません。ギャグのように見える術、服の色や紋章、短い独白、何気ない呼び方や表現。その一つひとつが、後の真相を知ったときに意味を変えていきます。
特に第1巻の時点で、ナルトの両親、サスケとイタチの関係、木ノ葉丸への継承、そしてナルト自身の戦い方までが見え隠れしていた点は見逃せません。序盤では笑いとして読める場面が、終盤ではキャラクターの成長や物語の核心に接続していく構造になっています。
だからこそ『NARUTO -ナルト-』は、読み返すほど印象が変わる作品です。最初は気づかなかった違和感や小さな情報が、物語全体を知ったあとでは別の意味を持って立ち上がってきます。ナルトが背負っていたもの、サスケが見ていたもの、そして里に刻まれていた歴史は、すでに第1巻から静かに描かれていたのかもしれません。
〈文/最上明夫 編集/相模玲司〉
※サムネイル画像:Amazonより 『「NARUTO -ナルト-」第1巻(出版社:集英社)』

