ここまで突然の上映のニュースが発表されるのも珍しいのですが、中国で146億元(約2900億円相当)の興行成績を叩き出し、現在進行形でその数字を伸ばしているアニメーション映画『ナタ(哪吒):魔童鬧海』の日本公開が発表されました。
🎬ポスタービジュアル解禁🎬
アニメ映画の世界歴代興行収入1位となった3DCGアニメ映画『ナタ(哪吒):魔童鬧海』
世界が熱狂した大ヒット作が中国語字幕版で緊急上陸決定!🔥中国語・英語字幕版3月14日(金)公開 📽️
日本語字幕版4月4日(金)公開 📽️
詳細は下記URLよりご確認ください▼… pic.twitter.com/FsY89onOoF— 映画『ナタ(哪吒):魔童鬧海』 (@nezha2_JP) March 7, 2025
既にアニメーション映画としては世界一の興行成績の作品となっている本作ですが、あまりのヒットの規模の大きさからか、通常の海外のアニメーション映画とは違った上映の仕方を発表しています。
◆日本上映でも日本語が一切なしの上映を先行して行われる?
今回の映画『ナタ(哪吒):魔童鬧海』の日本上映は、2段階に分けられて行われます。
まずは3月14日(金)に中国語音声で英語字幕が付いたものが先行して上映されます。続いて半月ほど遅れて、4月4日(金)からは日本語字幕版が上映をスタートします。つまり、一切日本語によるサポートがない上映が先行して行われます。
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『ナタ(哪吒):魔童鬧海』
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※中国語音声+中国語•英語字幕限定公開▼上映館は公式サイトをチェック▼https://t.co/V3nzoKI3wa#ナタ #哪吒魔童閙海 #封神演義 pic.twitter.com/8QdulzWMC3
— 映画『ナタ(哪吒):魔童鬧海』 (@nezha2_JP) March 11, 2025
それだけ聞くとびっくりしてしまうところですが、これは日本語字幕や音声が一切なくても興行が成立することが明らかだからです。というのも、日本に住む中国国籍・地域の人口は昨年時点でも80万人規模もある上、在留資格を獲得する人は増える傾向にあります。そのために“日本人に向けた”興行以外でもある程度成り立つようです。
しかも『ナタ(哪吒):魔童鬧海』のような歴史的な大ヒット映画とあればなおのこと。より「観てみたい」と映画館に足を運んでくれる人は多いでしょう。
◆実際に成功してきた現地在住者に向けた上映作品たち
実はこういった日本で興行をしながらも、現地の在住者に向けた映画は前例がありました。
直近でも『ナタ(哪吒):魔童鬧海』と同時期に公開された中国映画『封神・激闘!燃える西岐攻防戦』が同様の興行戦略を取っています。
本作は中国での公開日である1月29日(水)のわずか2日後の1月31日(金)から日本での上映を行いました。ただし、このタイミングでは日本語の吹き替えや字幕はなし。『ナタ(哪吒):魔童鬧海』と同じく中国語音声と中国語・英語字幕のみの上映でした。
結局日本語の字幕を設けたバージョンは3月7日(金)からの上映となり、まさにローカライズよりもスピード重視の興行といえます。
日本語がないのはそのほかのライバル映画に比べるとかなりのハンディキャップに思えますが、上映館・上映回数も限定的にしたせいか週末の回は満席が続出。需要の大きさを見せつける結果となりました。
思えば、過去にも当初は日本の在留者に向けた上映からスタートした映画がありました。それが『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』です。
本作は中国での上映とほぼ同じ2019年に日本でもミニシアター向けに限定的な上映が行われました。このときはまだ“ぼくが選ぶ未来”の副題もありませんでした。しかしこの興行が口コミで評判が広がっていき、集客数は増加。翌年の秋には、日本語吹き替え版を制作するほどのより大規模な上映となりました。
『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』の場合は『ナタ(哪吒):魔童鬧海』とは違い、当初から日本語の字幕は用意されていたのですが、この字幕もブラッシュアップを経ており、日本語の字幕だけでも複数バージョンが存在する事態となりました。
最終的には字幕のバージョンそれぞれに需要があり、ソフト化の際には一通りの字幕がそれぞれ収録されるという異例の対応がされ、ある意味、『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』の成功例があるので、日本の在留者に向けた興行を小規模に行ってみてそこから興行を広げていくという戦略が成立しやすいのかもしれません。
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新作映画
「#羅小黒戦記 2」
日本語吹替版制作決定
━━━━━━━━━━━前作日本語吹替版公開から約5年、
新作映画として帰ってきます🐾シャオヘイ役は、#花澤香菜 さんが続投決定✨
お楽しみに🐈⬛https://t.co/ktBYuLkZto#ロシャオヘイセンキ pic.twitter.com/aXF1KvaN82
— 『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』❘ 新作映画 日本語吹替版制作決定! (@heicat_movie_jp) March 5, 2025
今年『羅小黒戦記』シリーズは新作映画『羅小黒戦記2』の公開も発表されていますが、本作の興行の仕方にも注目といえるかもしれません。できればローカライズを早い段階でおこなってほしいです。
「日本で上映するのに日本語がないなんて!」という意見もあるかもしれませんが、日本で暮らす人たちが多様化している証拠ともいえます。
今でこそ英語字幕上映も限定的にしか行われないですが、今後は増えていくかもしれないですし、中国作品だけでなくもっとさまざまな国に限定した言語作品の興行が増えていく将来もあり得ます。
昨今、日本のアニメーション映画も続々と海外での上映規模を広げたり、日本と同じタイミングでの上映を行っているように“映画の上映”自体も国の境界線を超えてきているようです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
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