『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』が興行通信社が発表する週末観客動員数ランキングで2連続で4位にランクインしています。
この映画は久しぶりの『忍たま乱太郎』の劇場版作品。主人公・乱太郎たちの担任である土井先生にフォーカスした作品となっていて、長編作品ならではのシリアスな展開も注目のポイントの一つです。クライマックスでは感涙させられるような展開も待っています。
ただ、今回の映画のエピソードへの理解がより深まる放送回が実はあります。それが2024年度放送の第32シリーズの第63話「若い人の段」です。
◆土井先生の過去エピソード 第63話「若い人の段」とは?
第63話「若い人の段」は土井先生が過去を振り返るというエピソード。まだ若かった土井先生は、学園内でも殺伐とした雰囲気を纏ったままであったり、生徒たちとのコミュニケーションに慣れていなかったりといった様子が描かれます。
今ではしっかり者の印象の土井先生にも、うまく先生として立ち回れなかった時代があったのかと知れる回となっています。
13(金)の #忍たま は
「若い人の段」
一年は組の授業中、また胃がいたくなってしまった土井先生。
ふと、忍術学園につとめ始めたころのことを思い出す。土井先生はある事情から自分の名前を名乗れず、ほかの先生たちから「若い人」と呼ばれていて…
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— NHKアニメ (@nhk_animeworld) December 12, 2024
なぜこのエピソードを観ると映画への理解が深まるかというと、実は登場キャラクターにより感情移入しやすくなる情報が含まれているからです。
『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』のキーキャラクターといえば土井先生はもちろんのこと、生徒である一年は組の生徒たちや、とりわけ同居していて接する時間の長いきり丸との関係性にスポットが当たっています。
しかし、第63話で描かれている情報を知ると、実はそれ以外のキャラクターと土井先生の関係性もかなりていねいに描かれているのだと知れる放送回になっています。
◆土井先生と六年生にもしっかり絆があった! その理由
第63話で知れる事実の一つとして、土井先生と六年生の関係性があります。まだ先生になりたてだった土井先生が担当を受け持つことになるのが当時の一年生だったのですが、その当時の一年生たちが現在の六年生であることがその顔立ちから分かります。
この情報があると『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』に登場する六年生のシーンにより思い入れが増します。
映画では六年生たちが、行方不明となってしまった土井先生を探すというシーンが登場するのですが、熱心に捜索活動をする六年生たちは、担任の先生でもないのにすごく先生思いだなぁと感心させられます。
しかし第63話を観ていると六年生たちは一年生たち同様に土井先生は恩師の一人であり、特別な思いが乗ってしまうのにも納得できるようになっています。
映画の中盤では六年生が活躍する戦闘シーンが用意されているのですが、そのシーンの言動などにもより気持ちを乗せられるエピソードになっています。
◆シリーズで初めての事実も判明! 土井先生と山田先生の関係
六年生だけでなく、土井先生との関係を第63話で踏み込んで描かれているキャラクターが、一年は組の実技を担当している山田先生。導き手として山田先生がまだ若い土井先生の指導してくれる様子が描かれています。
そんな様子の中でキーとなってくるのがサブタイトルにもなっている“若い人”というフレーズ。
もともとぬけ忍だった土井先生は名前を聞かれても身の危険を踏まえて答えられずにいて、みんなから“若い人”と呼ばれていた様子が描かれます。
しかし、次第に不便さを感じさせてしまうことから名前が必要になるのですが、そこで土井先生に「土井半助」という名前を付けたのが山田先生だったことがこのエピソードで描かれます。
土井半助という名前が偽名だったこと。そしてその名付け親が山田先生だったこと。実はこれらはこのエピソードで初めて明かされた事実です。
既に30年以上続いているTVアニメ『忍たま乱太郎』ですが、まだまだメインキャラクターの新事実が判明したりすることは驚きでした。改めて現在進行形のシリーズであることが分かる瞬間です。
加えてこの事実を知っていると『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』もより味わいを増していきます。
作中では山田先生が土井先生のことを呼ぶシーンが何度も登場するのですが、「土井先生」と「半助」と二種類の呼び方が用意されています。
意図的に呼び方が分けて描かれていることが分かるとともに、第63話を観ていると、よりその名前への思い入れが増すようなエピソードとなっています。
今回の映画の公開で久しぶりに『忍たま』を観たという人も多いでしょう。話数も多いシリーズなのでどれを観たら良いのか、とも思うかもしれませんが、ぜひこのエピソードをチェックしてみてはどうでしょうか。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
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『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』公式サイト
(C)尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会