2024年で芸歴85年を迎えたベテラン声優の野沢雅子さん。

 1995年出版の著書『ボクは、声優。』(出版社:オプト・コミュニケーションズ)によると、叔母が女優だった縁で幼いころから芸能界に身を置き、3歳にして映画デビューを果たしたそうです。

 その並々ならぬプロ根性と驚きのプライベートでのエピソードは、多くの人を魅了してやみません。

◆家が火事で全焼!──そのとき、野沢さんが取った行動は

 2018年8月、野沢さんはフジテレビのバラエティー番組『ダウンタウンなう』に出演した際、共演した俳優の坂上忍さんから「野沢さんの都市伝説で、家が全焼しても仕事休まなかったって本当ですか?」と質問されると「そうです」と事実を認めました。

 原因は「もらい火」で、家は跡形もなく全焼。普通ショックで何も手につかなくなりそうですが、当時アフレコを控えていた野沢さんは、警察から事情聴取を受けるも「いや、私、ちょっと仕事があるんで。すみません。もうこれ以上ダメです、仕事がありますから」と、収録現場に駆け付けたのでした。

 10分遅刻したものの、無事に仕事を終え、「今日は本当にすみませんでした。実はウチ、火事に遭いまして丸焼けなんですよ」とスタッフに説明と謝罪をしたところ、「そういう冗談言うんじゃないよ」とすぐには信じてもらえなかったといいます。

 事実を知った声優仲間は「今日来なくていいんだよ」と気遣いましたが、野沢さんは「そうはいかないです。(仕事は)公のもんだから」と譲りませんでした。

 そのときの10分の遅刻を今でも悔いているという野沢さん。プロ根性にただただ頭が下がります。

◆姪が友人に「伯母が孫悟空役」と自慢!?──電話で話してほしいと言われた結果

 2004年に出版された『トリビアの泉 8: へぇの本 素晴らしきムダ知識』(出版社:講談社)によると、1989年頃、当時小学生だった野沢さんの姪は、友人らに「伯母が(『ドラゴンボール』の)悟空の声を担当している」と自慢したものの、信じてもらえなかったそうです。

 そこで姪は、野沢さんに電話をかけ、友人に悟空の声で自己紹介をしてほしいと懇願。普段、仕事以外で悟空のセリフを言わない野沢さんでしたが、かわいい姪の頼みとあってこれを承諾。

 電話口で姪の友人に「オッス! オラ悟空! よろしくな」と自己紹介し、事実を証明できた姪は大喜びしました。

 しかし、親戚の間では、野沢さんにアニメのキャラクターのセリフを言わせてはいけないという暗黙のルールがあり、姪は母親にこっぴどく叱られたそうです。

 生で野沢さん演じる悟空の声を聞けた姪の友人たちは幸運といえます。

◆ラスカルの役作りで10日園動物園に通う!?──アライグマがまったく鳴かなかった結果……

 1999年に出版された『声優グランプリ』Vol.24(出版社:主婦の友社)によると、野沢さんは『あらいぐまラスカル』のラスカル役を熱望し、オーディションに参加したことを明かしています。

 見事オーディションに合格すると、アライグマを理解するため、時間を見つけては上野動物園に行って観察を続けました。

 しかし、10日間ほど通い詰めてもアライグマの鳴き声を聞くことはできず……。

 諦めかけたとき、当時放映していたテレビドキュメンタリー番組『野生の王国』で偶然アライグマの鳴きを耳にし、それを参考にしたそうです。

 このことは、2013317日発行の『日刊スポーツ』内のコラムで明かされています。

 『あらいぐまラスカル』がアニメ化されたころは、現代のようにインターネットで検索すればさまざまな動物の鳴き声を容易に聞ける時代ではないからこそ、苦労がうかがえます。

 もし『野生の王国』でアライグマが鳴いていなかったら……。野沢さんはどうしていたのか、想像もつきません。

◆大塚明夫のオムツを替えていた!?──数十年後、役者として共演した結果

 漫画家の故・水木しげるさんの人気作『ゲゲゲの鬼太郎』などのイベント「ゲゲゲ忌2019」が201911月に水木さんのゆかりの地・東京都調布市で開催(開催期間:11月23日~12月1日)。1130日には、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』51周年記念上映会も行われ、当時放送中の『ゲゲゲの鬼太郎』第6期で、目玉おやじ役を担当する野沢さんも登場しました。

 そのとき、ぬらりひょん役を演じていた大塚明夫さんについて、野沢さんは過去を振り返り、「私は明夫のおむつを替えていますから」と驚きの発言をしました。

 二人は古くから家族ぐるみの付き合いで、「(大塚明夫さんが)生まれる前から(父の大塚周夫さんと)劇団をやっていたから」「遊びに行くと、(赤ちゃんだった)明夫が泣いていて、かわいかった」と明かしました。

 まさか数十年後、自分がオムツを替えていた赤ちゃんと声優として共演するとは、当時想像もしていなかったでしょう。

 さらに、大塚さんについて「役者になると思っていなかった」と語り、「(大塚さんの)芝居もいいでしょ」と演技力の高さを評価するなど、声優仲間として信頼していることがうかがえます。

 

 ──3歳から芸能活動を始め、ベテラン声優として90歳近くになっても現役で活躍する野沢さん。家が全焼した時も現場に駆け付けた伝説のエピソードやエネルギッシュな姿は、見る人に勇気を与えてくれます。

〈文/花束ひよこ〉

 

※サムネイル画像:青二プロダクション、タレント紹介ページより

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