2025年夏にテレビ朝日系で新作TVアニメの放送が決定した『地獄先生ぬ~べ~』。連載漫画では「トイレの花子さん」や「人体模型」、「赤いチャンチャンコ」、「メリーさん」など多くのエピソードがトラウマを読者に植え付けました。
鬼の手で悪霊や妖怪から生徒を守ってきたぬ~べ~ですが、実はいろいろな事情があって倒せなかった妖怪もいたのです。いったいどんな理由だったのでしょうか?
◆良い神様は倒さない──厠神(かわやしん)
ある日、ぬ~べ~のクラスに在籍する男子生徒が古い汲み取り式のトイレを使ったあと、便器の中にツバを吐きました。
すると、便器の底から「コラ~、ツバを吐くな~」との声が聞こえ、生徒たちは変質者がいると思い込み、大量のゴミを投げ入れます。
その姿を見たぬ~べ~は「そのトイレには厠神がいて、片手で小便を受け止め、片手で大便を受け止めている。そのため、ツバを吐かれると厠神は口で受け止めなければならないため怒っている」と説明しました。
生徒たちは「汚い!」と大騒ぎしますが、ぬ~べ~は厠神が八百万の神の中でもとくに偉いことを説明し、事情を知った生徒たちは便器に向かって謝罪することに。
その瞬間、糞尿にまみれた厠神が便器の中から登場し、涙を流して喜びながら「ワシが汚くないことを子供たちに教えてくれてありがとう!」と言い、ぬ~べ~に握手を求めました。
あれほど子供たちに力説していたぬ~べ~ですが、握手を拒みます。すると、最後に厠神は悪臭に満ちた身体でぬ~べ~をギュッと抱擁。「ありがとう!」とお礼を言いましたが、ぬ~べ~は「うぎゃあ~っ!きったねぇ~!!」と絶叫してしまいました。
◆真の姿が意外過ぎた玃(やまこ)
「玃」は、オスしか生まれず、人間の女性と結ばれることで子孫を残していく妖怪です。その日、一匹の玃が人里に下り、人間に化けて自分の伴侶を見つけることにしました。
玃が選んだのはぬ~べ~のクラスで、女子生徒たちは「男の子が転校してくる!」とみんな目がキラキラ。
しかし、ぬ~べ~に連れられて現れたのは、女子生徒たちが期待していたイケメンとは程遠い顔立ちをした男の子でした。
一気に気持ちが冷めた女子たちとは裏腹に、「玃(かく)ケンジ」と名乗る玃(やまこ)は美少女が勢ぞろいしているぬ~べ~クラスの女子にメロメロ。
あの手この手でキザなセリフを囁いたり、バラの花を贈ったりするものの、女子たちは誰一人として振り向かないばかりか、とうとう玃を無視する始末。
「女にモテない悪霊でも憑いているのか?」と哀れに思ったぬ~べ~が調べたところ、ケンジが妖怪だと発覚したのです。
ぬ~べ~と男子生徒たちは「このままでは女子がみんなさらわれてしまう!」と慌てますが、そんなとき、玃が命がけで事故から女子たちを守り、自分は大ケガを負ってしまいます。
その姿を見た女子たちは「彼は純粋な心の持ち主なのだ」と改心するも、やはり顔面が受け付けず「友達ならなってあげてもいいけれど、恋人にはなれない」と全員がお断り。
玃も性格の良い妖怪だったため、「自分には女の子にモテるだけの魅力がなかった。もう一度、山に帰って修行してくる!」と決意し、本来の妖怪の姿に戻ることに。
「さらばだ愛しいベイベーたち」と言って手を振った玃の妖怪の姿は、アイドルにも引けを取らないほどの超美少年だったのです。
その途端、女子たちは手のひらを返したように心を奪われてしまい、「恋人にして~!」と言いながら玃を追いかけます。
残されたぬ~べ~と男子たちは「あいつ、妖怪の姿ならすっげーカッコイイじゃん…」「アホで助かったよ」と脱力するのでした。
◆ぬ~べ~を一睨みで倒す──疫病神
クラスで彗星の観察をすることになっていたある日、まことが道を歩いていると、疫病神が自分のパンを食べたネズミをライターでいたぶっている姿を目撃。
動物好きなまことは「やめるのだ、おっさん!」と叫んで浣腸し、ネズミの膨らんだお腹を見て、「きっと赤ちゃんがいるから栄養が必要なはず」「どんな小さな生き物でも、その命を奪う権利は神や悪魔にもない!」と力説しました。
紆余曲折を経て疫病神の正体を知ったまことは、彼から「この町に人類が未だ遭遇したことのない恐ろしい病が彗星とともにやってくる」「自分の持っているミニチュアの棺桶は、今日死ぬ人たちの魂を入れる棺桶だ」と告げられます。
その後、急いでぬ~べ~と疫病神のもとに向かいますが、疫病神はぬ~べ~を一睨みで倒してしまったのです。
万事休すかと思われましたが、疫病神が棺桶を取り出すと、そこでは先ほどのネズミが出産しており、棺桶を食い破って巣を作っていました。
唖然とする疫病神でしたが、棺桶が使えない上に彗星も通り過ぎてしまったので、とうとう彼の野望は潰え去ったのです。
もしもぬ~べ~が倒されたあとに流行病がやってきたら……。考えただけでゾッとするエピソードでした。
◆ぬ~べ~を「パンツ」にするためにやってきた眠鬼(みんき)
ぬ~べ~が左手に封印している鬼には「眠鬼」という妹がおり、兄の仇を取ろうとぬ~べ~に襲いかかります。
眠鬼は強い霊能力があるぬ~べ~を「パンツ」にしようと試みますが、ひょんなことから自分が履いているパンツをなくしてしまい、力のコントロールができなくなっていました。
そこからは学校中の生徒や教職員がパンツ1枚にされたり、男子生徒たちがパンツにされたりとすったもんだの展開になりましたが、最後はぬ~べ~と和解して眠鬼は彼の妹になることを決意し、それからはぬ~べ~と一緒に暮らすことになったのでした。
──ぬ~べ~はいつでも妖怪や悪霊を倒しているわけではなく、時には圧倒的な力の差で負けたり、おっちょこちょいな妖怪に戦意喪失したりすることもあります。
特に厠神は敵ではありませんが、「汚い」ことが理由でぬ~べ~が精神的に負けてしまったと思うと、衝撃的な展開といえます。
〈文/花束ひよこ〉
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