7月2日から、TVアニメのリメイク版の放送が始まった『地獄先生ぬ~べ~』。連載終了後も高い人気を誇る同作ですが、最初から絶大な支持を得ていたわけではありません。過去にはタイトルの変更を余儀なくされたり、原作の内容が読者から批判されたりと、茨の道を歩んでいたようです。

◆本当は『地獄先生ぬ~ぼ~』になる予定だった?──タイトル変更の理由はまさかの「お菓子」

 同作のタイトルに入っている「ぬ~べ~」は、主人公・鵺野鳴介の愛称です。

 読者からも親しまれているこの呼び方ですが、原作者が当初付けていたタイトルは『地獄先生ぬ~ぼ~』でした。

 実際、コミックス第3巻に収録されている特別読み切りのタイトルは『地獄先生ぬ~ぼ~』でしたが、その後『週刊少年ジャンプ』で連載するにあたり、「ぬ~ぼ~」という森永製菓のお菓子が実在することが判明。

 作者は、もし同作がアニメ化された際、協賛が森永製菓のライバル企業だった場合に起こり得るトラブルを考慮した結果、タイトルを『ぬ~べ~』に変更して連載することにしたのだとか。

 コミックス内で作者は「トホホ」とコメントしていることから、少なからずタイトル変更にショックを受けていたようです。

 森永製菓が製造していた「ぬ~ぼ~」は1988年から1996年まで販売されており、パッケージに描かれていたかわいらしいキャラクターは1990年に『ぬ~ぼ~・きえたメダル』のタイトルでOVA化もされています。ぬ~ぼ~役はTARAKOさんが担当。

 このことを踏まえると、無用なトラブルを防ぐためにも『ぬ~べ~』サイドがタイトルを変更したことは賢明な判断だったといえるでしょう。

◆性格が悪すぎて読者が拒否反応?──弥々子河童(ねねこがっぱ)

 『地獄先生ぬ~べ~』は連載終了後に文庫化されており、その中で作者とキャラクターたちが当時の裏話を「メイキング」として語るページがあります。

 文庫本第6巻には、「弥々子河童」という女の河童が登場するエピソードが収録されています。弥々子河童が学校に通いたいとぬ~べ~のクラスに体験入学するという内容でしたが、メイキングで読者からの評判が悪かったことが明かされました。

 作中での弥々子河童は、相撲で本気を出して男子児童らにケガを負わせたり、周囲の意見を聞かずに寒中水泳や木登りを強要したりと、傍若無人に振る舞い続けます。給食の時間は、彼女のせいで誰も喋らず教室が静まり返る始末。

 それを見かねたヒロインの稲葉郷子と相撲で決着をつけることになり、郷子が勝ちます。

 クラスメイトたちから批判された弥々子河童はショックを受けて学校を飛び出しますが、最後はぬ~べ~から人と人との関わりの大切さなどを教えられて改心し、周囲と和解できたのでした。

 心温まるラストだったにもかかわらず、読者には弥々子河童の自己中心的な性格が受け付けなかったようです。作者によると、当時の担当者からも「この話は子供には分からないと思う」と告げられ、少なからず不評になることは予想されていたといいます。

 弥々子河童のエピソードは現時点でTVアニメ化されていませんが、人気が低かったことと、服を着ていない弥々子河童の容姿が放送コードに引っかかるほどセクシーなものだったことが理由だと考えられます。

◆ありえないほど人気が二分化?──妖狐・玉藻

 文庫本第1巻「#11 妖狐・跳梁跋扈の巻(前編)」から登場する玉藻京介は、狐の妖怪の中でも最高位に君臨する妖狐です。

 容姿端麗で知能の高い玉藻はぬ~べ~とも互角に渡り合うほどの実力の持ち主で、作中で特に内面的な成長を遂げたキャラクターでもあります。

 妖怪でありながらぬ~べ~のライバルを経て親友になるなど、かなり良いポジションにいる玉藻ですが、文庫本のメイキングでは『週刊少年ジャンプ』のメイン読者である男子小学生からほとんど支持されなかったことが明かされました。

 作者によると、それまで『週刊少年ジャンプ』の読者アンケートでも同作は決して高い位置にランクインしていたわけではなかったものの、玉藻の登場でますます下位まで人気が急降下する結果に……。

 その結果、玉藻は次の登場までかなりの時間を要し、作品の内容も従来の学校の怪談タイプのエピソードを中心に戻して読者アンケートでの人気回復を図りました。

 逆に、玉藻は女性読者から絶大な支持を得ており、作者は多くの人にウケる作品を描くことの難しさを痛感させられたのでした。

◆怖すぎてアニメ化不可と言われていたけど……──てけてけ

 玉藻の登場で下がってしまった人気を回復するため、その後はインパクト重視で衝撃的な表現もたくさん盛り込まれることになった同作。

 その中でもコミックス第3巻に収録されている「#17 てけてけの怪の巻」は、多くの読者にトラウマを植え付けたといわれるほど強烈なエピソードです。

 「てけてけ」は上半身しかない霊で、同作では「てけてけの話を聞いたら3日以内に現れる」「正しい呪文を唱えると助かる」というオリジナルの要素が付け加えられました。

 作中で、てけてけに上半身しかない理由は、電車の事故で身体が切断されてしまった女子中学生の霊だからと説明されていました。その切断部分がリアルに描かれたほか、栗田まことが机の下を覗いたときにてけてけの顔が突然ドアップで現れるなど、読者に衝撃を与える展開が続いたのです。

 さらに、最後にはてけてけに関するウソの噂を流していた男子高校生の元にてけてけが現れ、報復として彼の両足を引き抜いて持ち去るというシーンがあります。

 最初から最後まで過激なシーンだらけだったためか、てけてけの話はアニメ化されていませんでしたが、72日より放送が始まった新作アニメの第2PVでは、てけてけの姿が確認できているため、新作アニメでは、てけてけのエピソードが放送されるようです。

 

 ──バラエティーに富んだ話で人気を得た『地獄先生ぬ~べ~』ですが、放送が始まったばかりのリメイク版ではどのエピソードがTVアニメ化されるか期待が集まっています。

 放送枠が深夜ということもあり、てけてけをはじめとする衝撃的なエピソードが時を超えて放送される日が近いかもしれません。

〈文/花束ひよこ〉

 

※サムネイル画像:『アニメ「地獄先生ぬ〜べ〜」第3話 場面写真 ©真倉翔・岡野剛/集英社・童守小学校卒業生一同』


アニメ『地獄先生ぬ〜べ〜』公式サイト

©真倉翔・岡野剛/集英社・童守小学校卒業生一同

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