今や世界中で愛され、発行部数がギネス記録に認定されるほどの作品となった『ONE PIECE』。連載開始から瞬く間に人気を獲得したイメージがありますが、実はそのスタート地点は決して順調ではなく、むしろ社内会議では“ある厳しい評価”を受けていました。
◆連載会議で「落選」続き? 初代担当が明かす衝撃の過去
『ONE PIECE』の原作連載20周年を記念して行われた歴代担当編集者による座談会「「歴代担当編集さんに『ONE PIECE』について根掘り葉掘り聞いたぞ!」の巻」(『ONE PIECE.com』にて2017年9月に掲載)という対談記事によると、初代担当の浅田氏は連載前の驚くべきエピソードを明かしました。
なんと、尾田栄一郎先生渾身のネームを連載会議に提出しても、当初は何度も落とされていたというのです。
さらに、当時の連載会議では、提出されたネームに対して上層部が意見を書くのですが、そこには賛否両論、むしろ「批判」の声も多く含まれていたといいます。
現在メディア担当を務める杉田氏も、当時の資料を見て「これほどの人気漫画なら絶賛ばかりだろうと思っていたら、批判を受けながら始まったことに驚いた」と語っています。
なぜそこまで評価が割れたのか。それは当時、既存のヒット作にはない新しい要素や、尾田先生の独特な作家性がまだ理解されきっていなかったからかもしれません。
初代担当の浅田氏は「なぜこの面白さが分からないのか」と上司に対して怒りすら覚えたそうですが、結果的に尾田先生は何度もネームを描き直し、ブラッシュアップを重ねることで、最終的に誰にも文句を言わせない「最高に面白い第1話」を完成させたのです。
また、アニメ化の際にも一悶着ありました。初代担当の浅田氏は、ルフィが冒険に出る動機を視聴者に伝えるため、原作通りの第1話をアニメでも描くべきだと主張しましたが、アニメ制作サイドは「ドラマよりもキャラクターの楽しさを前面に出すべき」と判断。ここでも制作側と激しくぶつかり合ったといいます。
しかし、こうした衝突はすべて「作品をより良くしたい」という関係者全員の熱意によるもの。編集者、アニメスタッフ、そして尾田先生自身の譲れないこだわりがぶつかり合い、磨き上げられてきたからこそ『ONE PIECE』はたんなる海賊漫画を超えた、世界中で多くのファンを獲得するエンターテインメントへと進化していったのでしょう。
──世界的なヒット作の裏には、連載当初の批判や制作現場での衝突といった多くの逆境を、尾田先生と歴代担当者たちの圧倒的な熱量とこだわりで乗り越えてきた、知られざるドラマが隠されていたのです。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
※サムネイル画像:Amazonより 『「ONE PIECE」第1巻(出版社:集英社)』



