『ONE PIECE』の海賊女帝、ボア・ハンコックといえば、誰もが認める世界一の美女であり、ルフィに恋する乙女な一面も魅力的な人気キャラクターです。しかし、実は構想段階のデザインでは、現在のようなかわいらしさは微塵もなく、むしろ近寄りがたいほど恐ろしい「意外な風貌」で描かれていたのです。
◆初期案は「悪そうな年上女性!?」 世界一の美女が完成するまで
その事実は、2010年に発売された公式ファンブック『ONE PIECE GREEN SECRET PIECES』にて明かされました。そこに掲載された初期設定画には、凛とした美しさを持つハンコックとはまったく異なる、強烈な威圧感を放つ女性の姿が描かれていたのです。
設定によると、初期のハンコックは現在よりもかなり年齢が高く設定されており、目つきは鋭く、顔には不気味な入れ墨のような模様まで施されていました。
その雰囲気はまさに「悪の女ボス」そのもので、ルフィに恋をして顔を赤らめるような可愛げや、読者を魅了するキュートさは一切感じられません。このまま登場していたら、ルフィの味方になるどころか、ただの恐ろしい敵役として終わっていた可能性すら考えられます。
尾田栄一郎先生はそこから、キャラクターの方向性を大きく修正していきました。まずは年齢設定を徐々に下げ、若さと美貌を与えます。次に、ただ怖いだけだった表情に「凛とした気高さ」を加味し、王下七武海としての威厳を持たせました。そして最後に、ルフィの前で見せるギャップとしての「キュートさ」をプラスすることで、高飛車なのに憎めない、唯一無二の「海賊女帝」を完成させたのです。
「見下しすぎて逆に見上げている」という有名なポーズも、初期の「悪そうな印象」と、修正後の「気高さ・可愛げ」が見事に融合した結果生まれたものかもしれません。
ハンコックの美しさは、最初から天才的なひらめきで生まれたものではなく、何度も試行錯誤を重ね、年齢や印象を緻密に調整し続けた結果、ようやくたどり着いた「計算された美」だったといえます。
──ボア・ハンコックは、最初から“世界一の美女”だったわけではありません。年齢や印象を何度も調整し、初期の「怖さ」を削ぎ落として「気高さ」と「可愛げ」を両立させた結果、生まれた奇跡のキャラクターだったといえます。その試行錯誤の跡を知ると、彼女がルフィに見せるあの笑顔が、より一層輝いて見える気がします。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「ONE PIECE Log Collection “HANCOCK”」(販売元:エイベックス・ピクチャーズ)』


