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 『ONE PIECE』には、読者の心を揺さぶる数多くの感動的なシーンが登場します。しかし、その物語を生み出している作者・尾田栄一郎先生自身にとって、もっとも描くのが辛く、苦しくてペンが進まなくなってしまったシーンはどのシーンなのか。読者からの質問で、その気になる答えが明らかになりました。

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◆アラバスタ編のあの叫び! 作者も涙した「戦いをやめて下さい!!!」

 その真実が語られたのは、コミックス第74巻の質問コーナー「SBS」でした。ある読者から「尾田先生が描いていて一番泣いたシーンはどこですか?」という質問が寄せられたのです。

 これに対し、尾田先生は「僕自身、涙ぐみながら描いたシーンはいっぱいありますねー」と前置きしつつ、描くのが辛くて何度も席を立つことすらあると告白しています。そんな中でも、特に強く記憶に残っている「一番辛かったシーン」として挙げたのが、アラバスタ編の終盤でビビが叫び続ける、あの名場面でした。

 広場に集まった反乱軍と国王軍が、クロコダイルの策略によって互いに命を奪い合う悲劇的な状況。その惨状を止めるため、王女ビビが高い時計塔の上から必死に叫ぶシーンです。

 「戦いを!!!やめて下さい!!! 戦いを……!!!やめて下さい!!!」。しかし、その声は爆音と怒号にかき消され、誰にも届かない。それでも彼女は声を枯らし、喉から血が出るような思いで叫び続ける。この場面を描いているとき、尾田先生は「苦しくて描けなくなった事を覚えている」と語っています。

 作者自身が、キャラクターの抱える無力感や絶望、そして祈るような切実さを完全に共有してしまったのでしょう。何度もペンを止め、涙を流しながら描かれたからこそ、あの叫びはたんなるセリフを超えて、読者の心臓を直接掴むような痛切さを持って響いたといえます。

 『ONE PIECE』には数々の感動的なシーンがありますが、作者がこれほどまでに感情移入し、身を削りながら生み出した場面となると、その重みは格別です。ビビの叫びが今も色褪せず、多くの読者の記憶に焼き付いているのは、そこに尾田先生自身の魂が込められていたからなのではないでしょうか。

 

 ──尾田先生がもっとも描くのに苦しんだのは、アラバスタ編でビビが叫び続けるあの場面でした。読者の涙を誘った名シーンは、作者自身も感情を削りながら描いた場面だったという事実が、その重みをより確かなものにしています。

 作り手の心が震えた瞬間こそが、読み手の心をもっとも強く震わせる。そんな創作の真理を、このエピソードは教えてくれているのかもしれません。

〈文/凪富駿〉

《凪富駿》

アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『DVD「ワンピース エピソード オブ アラバスタ 砂漠の王女と海賊たち」(販売元:東映)』

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