『THE ONE PIECE』は果たしてどうなる？　ドキュメンタリー動画から分かる「期待すべきポイント」

　2023年の末に制作が発表された新たな『ONE PIECE』のアニメーションシリーズ『THE ONE PICE』。未だ具体的な公開時期などは発表されていないのですが、8月11日に制作を担当するアニメーション制作会社のWIT STUDIOが制作ドキュメンタリーを公開しました。

　今回のドキュメンタリーで多くの新情報が明らかになり、新たに気づかされることもあります。

◆『THE ONE PIECE』はどんなテイストの作品になるのか？

『THE ONE PIECE』は物語の最初期でもある「東の海（イースト・ブルー）編」をまた一から描く企画であることはこれまでも発表されていました。今回の映像では具体的にどういう工程を踏んで、どんな方向性で制作をしていくのかが公開された資料で分かるようになっています。

　まずはキャラクターデザイン。キャラクターデザインは、総作画監督も兼任する浅野恭司さんが担当しています。原作漫画の『ONE PIECE』は長期で連載されている作品のため、初期と最近では原作者である尾田栄一郎先生の絵柄が違うのですが、各世代のタッチを描きながら、今回のアニメーションで描くべきデザインの落とし所を探している様子が語られています。

　またその他の準備をしている部分として、世界観や設定の制作に力を入れている様子もいくつかの資料と合わせて公開されています。

　中でも驚きなのが斧手のモーガンが君臨するシェルズタウンの町を3DCGモデルに起こすことで、今まで想定していなかったカメラアングルや配置といった部分も想起しやすいような準備を行なっているのが分かります。

　総じて言えるのは、かなりの労力や工程そして時間を割いて、アニメーション制作に取り組んでいることです。しかもそれは原作漫画の要素を逸脱しないものでありつつも新しい表現ができないか模索していると分かりました。シリーズファンとしてはとても嬉しいニュースといえるでしょう。

◆結局『THE ONE PIECE』に期待できることはなんなのか？

　既にTVアニメシリーズが存在しているのに、一から『ONE PIECE』を作る理由はなんなのか？　これまでのTVアニメシリーズとの違いはなんなのか？

　制作ドキュメンタリーからも分かるように、原作とかけ離れたようなものを作ろうとはしていないのは、はっきりしてきたように思えます。

　今回の『THE ONE PIECE』はNetfixが出資していると既に発表されていますが、そのNetfixで制作された実写版の『ONE PIECE』は大筋こそ原作に沿っていながらも、大胆なストーリーの変更や作中にあった出来事の省略がありました。今回のアニメシリーズはそこまでの改変は心配する必要がなさそうです。

　そして期待できることとして、そもそも現在の東映アニメーションが制作する『ONE PIECE』が長期シリーズとなっているような、稀に見る大長編作品であるという前提から、新たな作品を一から始められることが大きそうです。

　幼い頃にかつての『ONE PIECE』のアニメシリーズを観ていたというスタッフも今回制作に参加していることで制作陣の思い入れは、東映アニメーション版の初期とも雰囲気は違うでしょう。

　加えて人気シリーズであることを前提とした予算のかけ方もできるという違いもあります。今回のように3DCGモデルを活用していたりと、技術分野での当時できなかったことができるようになったという違いもあるでしょう。

　正直、現時点では実際の映像などは公開されていなければ、イメージボードのイラストを観る限り“驚き”と言えるようなビジュアルはなかったかもしれません。

　しかし今回明らかになったのは触りの部分でもあれば、まったく“動いていない”状態です。この作品で監督を務めると明らかになった肥塚正史さんといえば、初期のTVアニメ『進撃の巨人』シリーズで活躍された方。『進撃の巨人』の立体起動装置の派手なアクションシーンのように、動き出すことで見違えて見えるような派手なアニメシリーズが登場する余地は十二分にあるでしょう。

　『進撃の巨人』を大ヒットシリーズに導いたWIT STUDIOの『THE ONE PIECE』。今回の制作準備の時点での力の入れように加えて、そもそも制作過程を制作スタッフ自身の口から語らせるという点でも異例です。

　相当なリッチな作品であることに加えて、制作陣の熱量も感じられる新たな『ONE PIECE』という点では大いに期待できる作品といえそうです。

〈文/ネジムラ89〉