100種類以上存在する「悪魔の実」は、『ONE PIECE』の作中を盛り上げる上で必要不可欠な存在です。
「こんな能力が実際にあったら便利だろうな」「自分もこんな力を身につけたいな」と思わせる魅力的な悪魔の実がある一方で、中にはせっかく食べた悪魔の実を十分に活用できなかった残念なキャラクターもいるのでした……。
◆ヌマヌマの実──ロギア系なのにおっちょこちょいすぎた?
コミックス第61巻第598話で初登場したカリブーは、ロギア系の「ヌマヌマの実」の能力者でした。
「ヌマヌマの実」の能力は身体を底なし沼に変化させることができ、液体となるのでほとんどの攻撃が通用しません。
さらに、沼になることで自分の体内に相手を取り込み、窒息させることもできる恐ろしい能力なのです。
カリブーは非常に残酷で、命乞いをする相手に平気で発砲できるほか、別の海賊団の傘下に入るフリをして、隙を見て手にかけようとするなど、まさに悪人そのもの。
その悪逆非道ぶりで数々の戦いを超えてきたのかと思いきや、実は彼は非常におっちょこちょいな性格で、麦わらの一味に出会ってからはとくに目立った活躍ができませんでした。
あるときなどは悪巧みを考えている最中、フランキーにジッと見つめられていることに気づかず樽の中に閉じ込められるというドジッぷりを見せています。能力の性質上、一度閉じ込められると自力での脱出は不可能になるにもかかわらず。
カリブーは自信過剰で自分の能力を最強だと勘違いし、ロクに能力を磨くこともしなかったので、樽から脱出する鍛錬を怠っていたのです。ロギア系の能力者でありながら、読者からも「あまり強くない能力」と誤解されてしまうほどでした。
もし、「アラバスタ編」などで冷静沈着な人物が食べていたら、スナスナの実の能力者であるクロコダイルと互角に渡り合えたかもしれません。
◆ドルドルの実──ロギアの毒にも勝る能力だった?
コミックス第13巻第117話で初登場したMr.3ことギャルディーノは、パラミシア系の「ドルドルの実」の能力者でした。
ギャルディーノはロウを自在に操ることができ、相手を蝋人形にして命を奪うことも可能な能力を身につけていました。
彼は「姑息な大犯罪」をモットーに頭脳派として戦っていたものの、アラバスタで麦わらの一味を牢屋に閉じ込めた際、そのカギを捨てて優位に立とうとしましたが、駆け付けたサンジにボコボコにされ、あっさりとロウで合鍵を作るなど、小心者な一面を見せています。
インペルダウンではバギーをはじめとするギャグキャラのツッコミ役に回るなどコミカルなキャラクターとして描かれていますが、ドクドクの実の能力者であるマゼランが出す毒に誰も太刀打ちできなかったとき、分厚いロウでマゼランを一時的に足止めするという活躍ぶりを見せました。
これには彼を見下していたクロコダイルも「能力の相性は分からないものだ」と言いながら感心するような表情を見せていました。しかし、それ以外に目立った活躍がないため、もし頭のキレるキャラクターがドルドルの実を食べていたら、意外な能力者との対戦で活躍できた可能性があります。
◆ノロノロの実──メンタルが弱すぎて使いこなせず?
コミックス第32巻第305話で初登場したフォクシーは、フォクシー海賊団の船長として「オヤビン」と呼ばれ、多くの船員から慕われるカリスマ性を持つ存在です。
フォクシーの特徴は、なんといっても「ずる賢さ」であり、「デービーバックファイト」という乗組員を賭けたゲームでは、手段を選ばずにズルを繰り返して勝利し、多くの海賊団から船長や航海士など重要な戦力を奪い続けてきました。
そんなフォクシーはパラミシア系の「ノロノロの実」の能力者であり、指先から「ノロマ光子」を放出することで、対象となるものの動作をおよそ30秒間封じられます。
このノロマ光子を浴びると、自分の意志とは裏腹に身体が金縛り状態となり、相手に攻撃されることが分かっていても、反撃はおろか避けることすらできなくなってしまいます。
ノロノロの実は攻撃力が高くありませんが、たとえば、頂上戦争のときにこの能力を使えていれば、赤犬などの海軍の動きを一時的に封じ、その隙にエースを救出することができたかもしれません。
しかし、フォクシーは狡猾な性格でありながら非常に打たれ弱く、口の悪いルフィに少しでも言い返されると、ズーンと落ち込んでしまい、部下に励まされるという子供っぽい一面もあります。
海賊団の船長という立場であるにもかかわらず、精神的に未熟です。もし精神的に強ければ、いかなる状況でも能力を活かすことができるかもしれません。
◆マトマトの実──男として器が小さすぎた?
コミックス第62巻第606話で初登場したバンダー・デッケン九世は、魚人でありながら「マトマトの実」を食べたことで泳げなくなった珍しいケースです。
パラミシア系の「マトマトの実」は、自分の掌で触れた相手の数だけマトを飛ばせる能力です。
バンダー・デッケン九世は人魚のしらほしに恋をしたとき、どさくさに紛れて彼女に触れ、能力を使って一方的にラブレターを送り続けるなどの付きまとい行為を繰り返しました。
しかし、しらほしから「タイプじゃない」と言われて求婚を断られると逆上し、巨大な方舟を投げつけようとするなど、器の小さい男でした。
もし、この能力を海兵やインペルダウンの職員が使えれば、凶悪な海賊を逮捕した際に触れておくことで、脱獄されたときなどにマトを投げて捕まえることができるでしょう。
相手が厳重な空間にいればマトの直撃は防げますが、その空間から出ることができなくなるため、精神的なプレッシャーを与えられるでしょう。
──泳げなくなることと引き換えに超人的な能力を手に入れられる悪魔の実ですが、能力にあぐらをかいて鍛錬を怠ったり、能力に見合うだけの器量がなかったりすると、宝の持ち腐れになってしまうのかもしれません。
〈文/花束ひよこ〉
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